ガス溶断機器認定制度とは
1.認定制度の目的
認定制度の一番の目的は、安心して使ってもらえる製品を供給することです。
そのために認定に当たっては、JISの試験項目とISO規格以上の認定独自の試験を実施し、製品の性能・品質の他、安全性及び機能などの基本特性の向上を目指しています。さらに、認定及び検定試験の実施により合格した製品に対し、製造物責任(PL)保険に加入し、合格製品に起因する事故が万一起きた時の被害に対して補償を行うことになっております。このように(一社)日本溶接協会が責任を持って製品の提供を行います。また、認定工場で認定製品の製造及び検査が、認定規則及び内規通りに正しく運用されているかの調査を行い、製品品質の維持向上を図っています。
また、最近、機器の誤った取り扱いに起因する事故が増えており、認定製品出荷時に添付する取り扱い説明書に安全や性能に関わる必要事項が適正に記載されているかについても厳しくチェックし、さらにユーザーへの啓蒙活動も行っています。
2.認定制度のあらまし
各メーカーが製造するガス溶断器の認定品は、後述する試験及び検査により、構造、材料、概観及び性能が承認された製品です。認定制度のスタート当初は、銘柄、即ちそれぞれの製品ごとに認定試験を実施していましたが、1985年(昭和63年)より、認定品の分類を見直し、種類ごとの認定試験を行うよう改正しました。それにより、同一種類に属するそれぞれの銘柄は、登録申請することにより認定の承認が得られます。従って、認定試験の実施に当たっては、申請された銘柄の中から、1銘柄を抽出して試験を行っています。
認定申請された製品が認定試験に合格すると、製品が属する種類が認定され、『ガス溶断器認定証』が交付されます。また、認定された製品は、認定工場で生産することが原則ですので、製造に必要な試験装置及び機器等が備わっているかなどが認定工場の基準に合致するか否かの調査を行い、合致していれば『ガス溶断器認定工場』の『看板』が交付されます。
認定工場の運用状況は、認定委員会の調査員が各認定工場に赴き、①認定規則及び内規が正しく運用されているか、②認定品の出荷時に義務付けられている検定試験が適正に実施されているか、③検定試験に合格した製品にのみJWAの合格マークが付けられているか、などを定期的に厳しくチェックしています。
3.認定試験の詳細
認定を行っている手動ガス切断器、手動ガス溶接器及び溶断器用圧力調整器の認定試験の方法について説明します。
A:手動ガス切断器の認定試験
1)認定試験の種類
手動ガス切断器は、吹管及び火口の構造の違いから、1形切断器(図1)と3形切断器(図2)に分類されます。1形切断器は、燃料ガスと酸素の混合部(ミキサ)が吹管にあるもので、トーチミキシング式と呼ばれています。3形切断器は、燃料ガスと酸素の混合部(ミキサ)が火口にあるもので、ノズルミキシング式と呼ばれています。現在、認定を行っている手動ガス切断器は表1に示す4種類です。
器 種 | 種 類 | |
手動ガス 切断器 | 1 形 | 1号 |
2号 | ||
3 形 | 1号 | |
2号 | ||
手動ガス 溶接器 | A 形 | 1号 |
2号 | ||
B 形 | 0号 | |
01号 | ||
2号 |
2)認定試験・検査項目
認定試験項目は、安全性、互換性、性能品質等について設定されています。試験は材料、寸法、外観の各検査及び、炎の調整、ガス流量、持続性、風に対する安定性及び切断の各試験を実施しています。
B:手動ガス溶接器の認定試験
1)認定機器の種類
手動ガス溶接器は、吹管と火口の構造の違いからA形溶接器(図3)とB形溶接器(図4)に分類されています。A形溶接器はアセチレンと酸素の混合部(ミキサ)が火口にあるもので、ノズルミキシング式とも呼ばれています。B形溶接器はアセチレンと酸素の混合部(ミキサ)が吹管にあるもので、トーチミキシング式と呼ばれています。現在認定を行っている手動ガス溶接器は表1に示す5種類です。
2)認定試験・検査項目
ガス切断器と同じ試験及び検査を実施しております。ただし、溶接器ですので、切断試験はありません。
C:溶断器用圧力調整器の認定試験
1)認定試験の種類
圧力調整器は使用ガス(酸素、アセチレン、LPG等)、取付け位置(容器、配管、集合装置)及び減圧方法等によって、表2の種類に分類されています。基本的な構造(構成部品)は図5に示すように大きな違いは無く、作動及び操作についても同様です。
圧力調整器の減圧部(弁と弁座)の違いによって、ステム形とノズル形に分類されています。ステム形は逆圧式とも呼ばれ、現在はこの構造のものが市場に出ています。ノズル形は直圧または正圧式とも呼ばれ、構成部品の形状が複雑なため、生産されている数はわずかなこともあって、現在、認定品はありません。現在、認定を行っている溶断器用圧力調整器は表2に示す7種類です。
2)認定試験・検査項目
認定試験項目は、安全性、互換性、性能品質等について設定されています。試験は材料、寸法、肉厚、外観の検査及び、気密、安全弁の作動、放出能力、閉そく時圧力上昇率、圧力変動率、安全、耐圧、発火、表示の耐久の各試験を実施しています。
使用ガス | 種類 | 最高入口圧力 P1m MPa | 定格入口圧力 P3 MPa | 放出能力 | 最高使用圧力 P6 MPa | 備考 | |
調整圧力 P2 MPa | 標準流量 Q1 m3/h | ||||||
酸素及び他の圧縮ガス | S1 | 20.0(1) | 2.1 | 0.8 | 25 | 0.99(3) | 容器用 |
S2 | 15.0(2) | ||||||
S3 | 0.99(3) | 0.99(3) | 0.4 | 10 | 0.7 | 配管用 | |
アセチレン | AC2 | 2.5(4) | 0.4 | 0.05 | 2 | 0.098 | 容器用 |
AC3 | 0.098 | 0.098 | 0.05 | 2 | 0.07 | 配管用 | |
LPG | LP2 | 1.8(5) | 0.4 | 0.05 | 2 | 0.15 | 容器用 |
LP | 0.15 | 0.15 | 0.05 | 2 | 0.07 | 配管用 |
※注
(1) 35℃で19.6MPaに充てんした容器において、外気温が40℃になったときの容器内圧力。
(2) 35℃で14.7MPaに充てんした容器において、外気温が40℃になったときの容器内圧力。
(3) 高圧ガス保安法の高圧ガスにならない圧力。
(4) 15℃で1.5MPaに充てんした容器において、外気温が40℃になったときの容器内圧力。
(5) 高圧ガス保安法による最高充てん圧力。
《参考》クラスAC2及びAC3の圧力0.098MPaは、経済産業省通達(42化局第293号)による値である。
4.検定制度について
各メーカーで生産される認定製品は認定試験に合格した標本と同等の品質・性能である必要があります。その為、材料、外観及び性能が認定品と同等である事を確認する検定試験が実施され、その結果の報告を義務付けています。試験品の抽出数は、表3の内容で実施されており、検定試験及び検査に合格した製品群には『検定合格証』が交付されます。検定に合格した製品には合格マークが表示され、製品の包装箱には合格マークと文章が表示され、検定合格品ということが分かるようになっています。この検定試験は、ガス溶断器認定委員会から推薦され、(一社)日本溶接協会 会長から委嘱された検定員によって行われています。
器 種 | 試験品抽出数 | |
手動ガス切断器 | 吹 管 | 500個又はその端数につき1個 |
火 口 | 2,500個又はその端数につき1個 | |
手動ガス溶接器 | 吹 管 | 500個又はその端数につき1個 |
火 口 | 2,500個又はその端数につき1個 | |
溶断器用圧力調整器 | 500個又はその端数につき1個 |
認定品メーカー
認定番号8601 (株)千代田精機
認定番号8602 ヤマト産業(株)
認定番号8603 (株)ハンシン
認定番号8604 (株)日酸TANAKA
認定番号8605 小池酸素工業(株)
認定番号8609 NIPPON CUTTING & WELDING EQUIPMENT CO.,LTD.
認定番号8610 (株)阪口製作所