2024年度事業計画

 鉄鋼部会はわが国の鉄鋼の溶接に関する技術の向上並びに普及を図ることを目的に、破壊・疲労などに関する研究動向の把握及び海外も含めた調査を行うとともに、最新の技術・情報を反映した規格化及び標準化活動を推進している。2023年度は、WES 2805の改正を検討するWES2805改正委員会、並びに建築高強度780N/mm2級鋼のアンダマッチング継手の実用化を図るBUH委員会が活動している。2024年度はこれらの委員会を継続し、以下の活動を計画している。

1.本部会及び幹事会

(1) 部会運営と企画
(2) 委員会活動状況の確認、調整
(3) 他専門部会・特別研究委員会との連携(規格委員会など)
(4) 他学協会との連携(日本規格協会、日本海事協会、JPVRECなど)
(5) 研究発表会、シンポジウムの企画・検討

2.研究委員会

2.1 WES2805改正委員会

 2024年度も委員会を継続し、WES2805改正に向けて整理した優先課題に取り組む。そのため、以下の2つのWG(WG-A、WG-B)を発足させ、具体的な改正に向けた検討を加速させる。
 WG-A:CTOD駆動力曲線の整備
   現行の応力集中が存在する継手を対象としたCTODデザインカーブに、材料の加工硬化
   特性(YR)の影響を考慮した拡張CTOD駆動力曲線を提案する。また、応力集中が存在
   しない継手に対して大規模降伏域まで拡張したCTOD駆動力曲線との整合性についても
   検討する。
 WG-B:シャルピー靭性と破壊靭性の相関
   極厚鋼板溶接部への既存相関式の適用性を、CRB委員会で取得した実験データを解析し
   て検討する。また、必要に応じて既存相関式の精度向上のための検討を進める。

2.2 建築高強度鋼(780N/mm2級鋼)アンダマッチング継手研究委員会

【建築高強度鋼(780N/mm2級鋼)アンダマッチング継手研究委員会】
  2024年度も委員会を継続し、構造性能WGおよび溶接施工WGの実験を完了させ、成果のまとめと残課題を確認する。
 a) 構造性能WG
   2023年度に計画したパネル降伏先行型平面十字架構試験体の構造実験を実施し、溶接
   金属強度が接合部パネルの弾塑性挙動およびSAW継手の破壊性状に及ぼす影響を把握
   する。
 b) 溶接施工WG
   2023年度に実施した窓形拘束溶接割れ試験と熱伝導・熱応力解析の結果を整理し、
   四面ボックス柱の角溶接における横割れの発生について考察する。

2023年度事業計画

 鉄鋼部会は、鋼構造物の溶接部の安全性などに関連して鉄鋼技術や評価技術の向上を図るために、必要と認められる諸種の事業活動を行う。
 2022年度に、最新の技術・研究を反映したWES2805:2011(溶接継手のぜい性破壊発生及び疲労亀裂進展に対する欠陥の評価方法)の改正検討、並びに建築高強度鋼(780N/mm2級鋼)のアンダマッチング継手における適切な特性評価法の検討を目的とした2つの研究委員会を立ち上げた。
 本年度はこれらの委員会を継続し、具体的には以下の活動を計画している。

1.本部会及び幹事会

(1) 部会運営と企画
(2) 各研究委員会の調整、運営検討
(3) 他専門部会・特別研究委員会との連携(規格委員会、溶接情報センター、JPVRCなど)
(4) 他学協会との連携(日本規格協会など)

2.研究委員会

2.1 WES2805改正委員会

 WES2805(溶接継手のぜい性破壊発生及び疲労亀裂進展に対する欠陥の評価方法)は、溶接継手の割れや欠陥からのぜい性破壊、及び疲労亀裂進展による損傷とぜい性破壊への移行に対する評価方法を規定した規格である。2022年度に立ち上げた改正委員会では、2018年から2021年にかけて実施された鉄鋼部会CRB(CTOD Requirement for Butt joint)委員会で得られた知見など最新の研究成果やユーザーニーズも踏まえ、活動予定期間を3年間として検討を開始した。
 本年度は、計画どおり委員会を継続し、2022年度中に実施したユーザーアンケートに基づいて、規格構成(本文、附属書(規定)、附属書(参考)、解説)の全面改定も視野に入れた検討を行い、規格本体(本文)の骨子を定めて具体的な改正作業に入る。

2.2 建築高強度鋼(780N/mm2級鋼)アンダマッチング継手研究委員会

【BUH委員会(Building application of Undermatching joint for High strength steel)】
 建築物の柱構造への高強度鋼(780N/mm2級鋼)の普及のネックとして、高強度溶接材料を用いた溶接では予熱や入熱制限などによる溶接施工負荷が大きい点が挙げられる。このため、母材より強度が低く溶接性の良い溶接材料を用いたアンダマッチング継手(軟質溶接継手)採用の検討が進められており、溶接施工負荷を低減した上で柱構造として必要な性能を確保できる事例が示されているものの,評価法も含め一般化に至っていない。
 そこで、大学、ゼネコン、設計事務所、ファブリケータ、溶材メーカー、鋼材メーカーなど多方面から委員を募り、2022年度に活動期間を3年間としたBUH委員会を立ち上げた。2022年度には、取り組むべき検討課題とその優先順について議論を行い、検討対象はほぼBOX柱の角溶接部に絞り込まれた。
 本年度は、計画どおりに委員会を継続し、実構造物におけるアンダマッチング溶接継手の健全性を示すための実大サイズでの構造実験実施も視野に入れた検討を行う。