本委員会は、化学機械・プラント圧力設備分野の溶接・加工技術に関する調査と研究を行い、その活動成果を活用して同分野の溶接接合品質の維持・向上を図り、併せて次世代の技術者・研究者の人材育成を図ることを目的に活動している。

 2025年度の事業計画を以下に示す。主な事業として、WES 2820(圧力設備の供用適性評価方法―減肉評価)の改正、昨年度に発刊した技術図書「二相ステンレス鋼の溶接―溶接施工のかんどころ―」を用いたシンポジウム、「プラント圧力設備の溶接補修指針」改訂版の発行などを計画している。

1.本委員会活動

 化学機械・圧力設備の溶接・加工、維持・管理などに関した以下の7テーマを中心に、本委員会を年4回開催する。開催予定は、第313回委員会:6月、第314回委員会:9月、第315回委員会:12月、第316回委員会:3月(2026年)である。

  1. 溶接・加工・非破壊検査技術に関する調査と研究
  2. 損傷・劣化事例の調査とその防止に関する研究
  3. 供用適性評価(減肉評価)WESの適用普及、及び寿命診断・保全技術に関する調査と研究
  4. 溶接補修指針の整備と拡充、及び溶接補修WESの適用普及
  5. IoT、AIなどの活用による化学機械分野のDX及びスマート保安技術の調査と研究
  6. 関係法規・規格の調査・検討
  7. 圧力設備の製作・保全技術の海外規格化の情報収集と当委員会の技術研究成果、規格の海外展開

 3〜5のテーマについては、圧力設備サステナブル保安部会との連携活動も含む。

2.合同委員会

 上記4回の委員会の内、第315回の委員会は機械部会 パイプライン小委員会との合同委員会として開催する。

3.見学会

 第314回又は第315回の委員会は、見学会を併設して行うことを予定している。

4.小委員会及びWG活動

4.1 N2バックシールド適用評価合同小委員会

 溶接材料部会との合同で、ステンレス鋼のティグ片面溶接で一般的に用いられているArガスに代わり、N2ガスの適用性を評価することを目的とした小委員会を2022年度に発足させた。これまでにArガス及びN2ガスをバックシールドに用いて作製した溶接継手の性能評価と、実験及び流体シミュレーションによるガス置換挙動の検討、及び周知活動の一環として関連学協会での発表や投稿を実施した。2025年度は、これらの結果及び関連文献レビューによるデータ補完により、N2バックシールド適用ガイドラインを作成する。

4.2 溶接技術仕様作成小委員会

 この小委員会は、化学プラント・圧力設備の溶接施工について、我が国で利用可能な溶接技術仕様書を構築することを目的に2024年度に発足した。米国規格のAPI RP 582をベースに技術仕様を4分野に分類して検討を行うとともに、米国規格にはない非破壊検査の仕様や、関連国内法規での溶接施工に関する規定に関する仕様も織り込み、WESとして構築することを目指す。

4.3 WG活動

 本委員会では、次の7つのWG活動を行う。

1) 委員会運営WG

 本委員会の将来ビジョンの構築、活動テーマの探索、講演話題の調査・分析、国際活動などを目的とした委員会運営・将来展開に関する検討を行う。

2) WES 2820改正WG

 2015年に発行したWES 2820(圧力設備の供用適性評価方法−減肉評価)が定期見直しを迎えたことに伴い、改正に向けた諸検討を行うWGを2020年度に発足させた。5年に渡るWG活動により、改正ドラフトには構造不連続部近傍の減肉の取扱い、耐震設備への適用手順などの有用な最新知見を取込むとともに、附属書として適用例題を充実させ、本規格の利便性向上を図った。2025年度は改正原案作成委員会を発足させ、2025年度内の改正版発行を目指す。

3) 溶接補修WG

 2009年発行の「プラント圧力設備の溶接補修指針」の改訂において、2020年度にこのWGを発足させ、WES 7700規格群に基づく整備と信頼性を高めるための追加調査などによる拡充を行っている。5年に渡るWG活動の成果として、2025年度は本指針改訂版を発行し、シンポジウムを企画するとともに、現行のWES 7700規格群の改正と続編規格について画策する。また、ASME PCC-2委員会に参加登録(委員派遣)を行い、圧力設備の溶接補修についてASMEの技術動向を察知するとともに、本WGの活動成果をPRする。

4) DSSガイドライン出版WG

 2024年度に発刊した技術図書「二相ステンレス鋼の溶接―溶接施工のかんどころ―」を用いたシンポジウムを開催するとともに、本技術図書の英文化について検討する。

5) 圧力設備の溶接設計施工講習会WG

 圧力設備の設計・製作分野における技術者育成と技術伝承を図るため、圧力設備の構造・製作方法を決定するための基本設計、溶接施工要領、品質管理のポイントなどを取り纏めたテキストを2023年3月に作成した。このテキストを用いた第2回目の「圧力設備の溶接設計施工テキスト講習会」を2025年3月に開催したため、参加者へのアンケート分析を行い、次回以降の講習会の企画へと繋げる。

6) 海外活動WG

 圧力設備関連技術の海外展開を組織的に進めるため、2020年度にこのWGを発足した。圧力設備の製作技術、維持・保全技術に関する海外規格の動向・最新情報を収集し、フィードバックすることにより、委員会の技術研究や規格・ガイドライン化などの各活動をサポートする。また、委員会活動の海外展開を画策し、我が国の化学機械分野に有益な情報提供を図るとともに、国際規格化を促進する。

7) 情報化WG

 本委員会のこれまでの発表資料を整理・分析し、溶接情報センターへ提供可能なアーカイブ化コンテンツ検討を行う。この成果は、本委員会の将来活動展開に役立てる。