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溶接材料規格(JIS)の国際整合化について

1.はじめに

 ISO 17633(Welding consumables―Tubular cored electrodes for gas shielded and non-gas shielded metal arc welding of stainless and heat-resisting steels―Classification)に対応するJIS Z 3323(ステンレス鋼アーク溶接フラックス入りワイヤ及び溶加棒)の改正原案審議が終了しておりますが、今回のJIS Z 3211の改正についても、JISとISO規格の国際整合化の一環として行うものです。同改正原案は、ISO 2560(Welding consumables―Covered electrodes for manual metal arc welding of non-alloy and fine grain steels―Classification)及びISO 18275(Welding consumables―Covered electrodes for manual metal arc welding of high strength steels―Classification)の整合化JISとして,JIS Z 3211(軟鋼用被覆アーク溶接棒)、JIS Z 3212(高張力鋼用被覆アーク溶接棒)、JIS Z 3241(低温用鋼用被覆アーク溶接棒)の3本に分かれている現行規格をJIS Z 3211(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)に包括・1本化し、JIS Z 3212及びJIS Z 3241を廃止するものです。

  改正に対するお問合せ又はご意見等がございましたらご連絡いただきますようお願いいたします。

2.国際規格改正の経緯(ISO規格とEN規格)

 グローバルレベルでの市場活性化,貿易・投資の自由化の進展及びこれらの事象を踏まえた基準認証に関する国際的な枠組みの成立(WTO/TBT協定)を受け,国内規格や技術基準のみならず,基準認証制度全般について,国際整合性の確保が求められています。

 溶接材料のISO規格の作成・改訂作業は1986年のISO理事会決議に基づき,国際規格作成組織として承認されたIIW(国際溶接学会、International Institute of Welding)が1989年以降担当し、作成された原案はISOで審議されることになりました。 ところが欧州諸国は市場統合に向け、CEN/TC 121/SC 3において溶接材料EN規格の作成を推進しており、ISOとCENの間の技術協力に関する協定(ウィーン協定)にもとづき,EN規格の原案をそのままISO規格原案としてISO/TC 44/SC 3(溶接材料)に持込みました。このため規格体系の異なるIIW案とCEN案が対立し、ISO/TC 44/SC 3の審議では解決の糸口が掴めないまま数年間の膠着状況に陥ってしまいました。この状態を打開するため,ISO/TC 44ではIIW案とCEN案を合体させた規格案の検討を開始し、1998年9月に「共存型規格の手法の導入」をISO事務局に提案いたしました。これに対して、「ISO規格には共存型規格の概念はない。しかし溶接材料の分類のような場合には共存型の手法が非常に受け入れられやすい。したがって共存型規格をケース・バイ・ケースで導入するというISO/TC 44/SC 3の決定にISOの事務局は賛成する。」との回答がありました。

 これを受けて、ENに基づく「System-A」と環太平洋(日米)の要求に基づく「System-B」で構成される“共存型”が認められるところとなり,溶接材料ISO規格作成が促進されました。

3.ISO規格の制定・改正にともなうJIS改正

 この様な流れの中で制定・改正された新しいISO規格は、JISの規格体系とは異なっています。 最大の相違点は,高張力鋼の区分で,ISO「System-B」では、引張強さ590MPa級以上が高張力鋼の区分であるのに対し,JISでは490MPa級以上が高張力鋼の区分になっており、またJISの中にはわが国特有の「低温用鋼」、「耐候性鋼」の区分があります。

 この様な背景のもとで進めたJIS Z 3211の改正原案作成ですが、該当ISOを翻訳してJISとした場合,国際区分に基づき570MPa級未満が軟鋼区分となり、高張力鋼区分としてきたJIS Z 3212と齟齬を生ずることになりました。そこで、JIS Z 3212JIS Z 3241を廃止し、軟鋼,高張力鋼,低温用鋼を包括した規格に改正することで原案を作成いたしました。
 具体的には、共存型ISO「System-B」のMOD規格(ISOを修正し作成した規格)とし、軟鋼、高張力鋼、低温用鋼のJISに規定していた溶接棒のほか,AWS規格で規定されている溶接棒の種類を含めることにいたしました。
 現行のJISと比較して一見、複雑なようにみえますが、基本的には被覆アーク溶接棒の記号が「D」から「E」に代わる以外は大きな変更はなく、2桁の引張強さ記号と、2桁の被覆剤の種類の記号によって、これまで通り分類する形となります。

2007年5月