2025年 年頭所感

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は当協会の活動に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 2024年を振り返りますと、製造業を取り巻く環境が大きく変化する中、当協会はウェブサイトの大幅リニューアルを実施し、溶接界全体のイメージアップと情報発信力の強化に努めてまいりました。特に、若年層や女性技術者の育成、外国人材の支援に注力し、着実な成果を上げることができました。

 その代表的な成果として、インテックス大阪で開催した2024国際ウエルディングショーでは、大阪会場として初めて来場者数が10万人を突破いたしました。関西圏15校から工業高校生1,100名がバス見学会ツアーに参加し、高校生VR・AR溶接王(全国高校生シミュレーション溶接大会)には270名を超える参加がありました。さらに、500名以上の高校生がVR・AR溶接体験に参加するなど、次世代を担う若者たちの溶接技術への関心の高さが示される結果となりました。

 また、昨年は高校生ものづくりコンテスト全国大会において溶接が正式種目として採用された記念すべき年となり、全国選抜高校生溶接技術競技会in新居浜では、被覆アーク溶接部門で女子高校生が優勝という快挙を成し遂げました。これらの活動は複数のメディアに取り上げられ、溶接技術の魅力を広く社会に発信する機会となりました。

 このような成果を踏まえ、2025年は以下の重点施策を着実に推進してまいります。
 第一に、人材育成の抜本的強化です。現在、溶接技能者教育は全都道府県の約半数で実施していますが、これを全都道府県での実施に拡大することを目指します。その推進力として、指定機関における教育事業を強化し、認証と教育を両輪とした人材育成体制を確立いたします。

 特に注力すべき取り組みとして、北海道溶接センター(仮称)の設立があります。北海道地区検定試験場の移転に併せ、認証・教育・研究の三位一体となった新しい拠点として整備し、地域に根ざした溶接技術の発展を支援してまいります。この取り組みは、全国の溶接センター構想の先駆けとして位置付けています。

 第二に、次世代技術への対応です。若者(学生等)を対象としたVR・AR技術を活用した溶接シミュレータによる体験イベントを開催したいと考えています。また、新たに設立したAM技術者教育委員会、評価委員会、認証委員会を中心に、AM(Additive Manufacturing)技術者の育成・認証を本格的に開始いたします。具体的には、本年3月にAM技術者(2級受験者)向けの研修会を東京で開催し、7月に評価試験を実施する予定です。

 第三に、国際競争力の強化です。アジア諸国におけるJIS評価試験の普及を推進し、国際的な溶接技術の標準化と人材育成に貢献してまいります。外国人材の育成については、技能移転から人材育成・確保へと制度が移行する中、より実践的な支援体制を構築してまいります。

 さらに、来年9月に開催予定の国際ウエルディングショー(東京)においても、「人材」を主要テーマとして掲げ、昨年の大阪での成功を踏まえ、より充実したプログラムを展開いたします。また、溶接接合工学振興会の協力のもと、工業高校への溶接機寄付事業等を通じた教育支援を積極的に展開し、全国工業高等学校長協会主催の夏期講習会(溶接講習)を継続して実施し、工業系高等学校の教職員の方々の技術向上を支援してまいります。

 これらの施策の実現には、関係諸団体や会員企業の皆様との一層の連携が不可欠です。当協会は、本年も各種課題の解決とサステイナブルな協会活動の確立に努め、溶接界の更なる発展に貢献してまいる所存です。引き続き格別のご支援とご協力を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。 末筆ながら、本年が溶接界にとって飛躍の年となりますよう、また、皆様方にとってより良い年となりますよう心より祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

一般社団法人日本溶接協会
会長 青山 和浩