2023年度事業報告(2024.4.1)

1.本部会

 建設部会はゼネコン、鉄骨・橋梁のファブリケーター、溶接材料メーカ等を会員とし、中立機関を含めて13会員で構成している。2023年度の部会は、対面+Web会議にて計3回開催された。内容を以下に報告する。

1.1 討議及び研究

(1) 過大ギャップの処理方法の研究[2023年5月16日、2023年10月31日、2024年3月29日]
 鉄骨の現場溶接における過大ルートギャップ処理方法について、一般的な処理方法のバタリング以外に品質確保ができ工程短縮となる工法の研究を行っている。今年度は、標準ルートギャップ7mmと過大ルートギャップ15mmでの試験溶接とし、過大ルートギャップ15mmについてはウィービング幅大とウィービング幅小、パス間温度は350℃以下と150℃以下の条件とした。試験の結果、溶接収縮量はルートギャップ7mmに対してウィービング幅大の過大ルートギャップは1.31~1.47倍であったが、ウィービング幅小の過大ルートギャップは1.15倍であった。引き続き、過大ルートギャップ処理方法について検討していく。

(2) 組立溶接のヒールクラックの研究[2023年5月16日]
 建築鉄骨や鋼道路橋における組立溶接脚長及び長さの規定緩和に向け、一般社団法人日本橋梁建設協会との共同研究として「組立溶接のヒールクラックの研究」を行っている。今年度は、ヒールクラックが発生する原因を明確にすることを目的に、拡散性水素量を制御するために炭酸ガスに水素を微量混入させたシールドガス(水素混入量1.0%、0.7%、0.5%、0.2%の4種類)でヒールクラック試験を行った。組立溶接は脚長4mm、長さ80mmとした。その結果、シールドガスの水素混入量が多いとヒールクラックが生じることが確認できた。今後、この試験の拡散性水素量が実施工のどのような環境条件で生じるのかを確認していく。

1.2 技術講演[2023年10月31日]

 当部会では、溶接に関連するDXやカーボンニュートラルについて検討していくこととしており、今年度は、川田工業の「3Dデジタル溶接マスクを用いた溶接技能伝承DX」の技術講演を行った。

 従来の溶接教育での「見えづらい、見せづらい、伝わらない」の課題に対し、3Dデジタル溶接マスクシステムによるDXで解決するものであり、特徴として溶接部の可視化技術の開発、大型ディスプレイ等の活用、定量的な溶接士の状態評価であり、今後の教育機関で教育・訓練や企業で技能伝承に多く適用されると予想される。溶接ロボットのセンサーへの適用も期待できる。

1.3 溶接協会内委員会への委員派遣

本年度は、下記3委員会へ委員派遣を行った。
・規格委員会
・安全衛生・環境委員会
・WES-TR2032原案作成委員会

2.若手技術者向けの講習会の検討[2023年5月16日、2023年10月31日、2024年3月29日]

 昨年度まで実施していた建築鉄骨の技術者向けの「生産性向上支援訓練事業」について、当部会で建築鉄骨の若手技術者向けの講習会として開催を検討している。今年度からテキスト作成WGを設置し、2024年度に講習会開催に向け、講習会テキストの作成を行っている。

2022年度事業報告(2023.4.1)

1.本部会

 建設部会はゼネコン、鉄骨・橋梁のファブリケーター、溶接材料メーカ等を会員とし、中立機関を含めて13会員で構成している。2022年度の部会は、対面+Web会議にて計3回開催された。また、2022国際ウェルディングショーにおけるIIW2022年次大会・国際会議とのコラボ展示コーナーへの出展対応としてウェルディングショー展示WGを設置し、出展内容を検討した。本部会、ウェルディングショー展示WG及び2022国際ウェルディングショーについて以下に報告する。

1.1 討議及び研究

(1) 組立溶接のヒールクラックの研究[2022年5月24日、2022年10月21日、2023年3月14日]

建築鉄骨や鋼道路橋における組立溶接脚長及び長さの規定緩和に向け、一般社団法人日本橋梁建設協会との共同研究として「組立溶接のヒールクラックの研究」を行っている。今年度は、ヒールクラックが発生する原因を明確にすることを目的に、拡散性水素量を制御するために炭酸ガスに水素を微量混入させたシールドガスでヒールクラック試験を行った。組立溶接は脚長3mm、長さ40mmとした。その結果、拡散性水素量が多くなるとヒールクラックではなくルート割れが発生した。ヒールクラックの発生原因が明確になっていないため、来年度も継続して研究を行う。

(2) 過大ギャップの処理方法の研究[2022年5月24日、2022年10月21日、2023年3月14日]

 鉄骨の現場溶接における過大ルートギャップ処理方法について、一般的な処理方法のバタリング以外に品質確保ができ工程短縮となる工法の研究を行っている。過大ルートギャップは15mmと20mmまたは25mmとし、検討した工法の施工性や内部品質、標準ルートギャップ(7mm)との機械的性質を比較する。研究は2022年度~2023年度の2年間とする。今年度は、標準ルートギャップ、及び過大ルートギャップ15mmで入熱量が40kJ/cm以下で1層1パス以上の積層と1層2パス以上の積層条件で溶接収縮量計測と機械試験を実施した。溶接収縮量は1層2パス以上に分割した方が10%以上小さかった。機械試験結果は入熱量40KJ以内で350℃以下のパス間温度を守っていればシャルピー試験に問題がない結果となった。引き続き、入熱量・パス間温度の管理で収縮量の低減が図れるかの試験を来年度も実施する。

1.2 技術講演

 当部会では、溶接に関連するDXやカーボンニュートラルについて検討していくこととしており、今年度は、神戸製鋼所の「低CO2高炉鋼材”Kobenable Steel”」の技術講演を行った[2023年3月14日]。

 “Kobenable Steel”は、鉄鉱石の一部を既に還元済みの鉄鋼原料である「HBI」に置き換えることで使用コークスを減らし、高炉でのCO2排出を約20%低減している。また、マスバランス方式を採用し、CO2排出量低減効果を特定の鋼材に集約させており、CO2排出量低減効果の算定式やマスバランス方式の考え方については第三者認証を取得している。

1.3 溶接協会内委員会への委員派遣

本年度は、下記2委員会へ委員派遣を行った。
・規格委員会
・安全衛生・環境委員会

2.ウェルディングショー展示WG及び2022国際ウェルディングショー

 2022国際ウェルディングショーにおいて、IIW2022年次大会・国際会議とのコラボ展示コーナーに「DXによる生産革命」と題して、建築現場の未来ビジョン及び日本の鉄骨構造を展示することとし、その内容についてウェルディングショー展示WGにて検討した。展示の内容は以下のとおりである。

・パネルで地震大国である日本の建築鉄骨の特徴の紹介
・パネルで工場製作や現場建方に適用されるDXの紹介
・日本独自の建築鉄骨の構造の説明として鉄骨柱の模型、裏当て金ありの完全溶込み溶接継手
 及びエレクトロスラグ溶接を適用する継手の模型の展示
・現場接合DXを代表として小型可搬型溶接ロボットの展示
・建築現場の未来ビジョンの映像を放映
・実際の工場製作時のエレクトロスラグ溶接及びタンデムサブマージアーク溶接の映像を放映

 会期中における展示コーナーの解説は建設部会員が交代で行い、来場者に丁寧に対応した。また、IIWコラボ展示コーナー講演会では、建設DXから「建築のものづくりにおけるDX」として日本の鉄骨造の特徴とDX、現場溶接ロボットの展開、鉄骨造におけるAR技術の講演を行った。

2021年度事業報告(2022.4.1)

1.本部会

 建設部会はゼネコン、鉄骨・橋梁のファブリケーター、溶接材料メーカ等を会員とし、中立機関を含めて13会員で構成している。2021年度の部会は、対面+Web会議にて計3回開催された。また、2022国際ウェルディングショーにおけるIIW2022年次大会・国際会議とのコラボ展示コーナーへの出展対応としてウェルディングショー展示WGを設置し、出展内容を検討した。本部会及びウェルディングショー展示WGの内容を以下に報告する。

1.1 討議及び研究

(1) 組立溶接のヒールクラックの研究[2021年11月26日、2022年3月25日]

 建築鉄骨や鋼道路橋における組立溶接の脚長及び長さの規定緩和に向け、一般社団法人日本橋梁建設協会との共同研究として「組立溶接のヒールクラックの研究」を行っている。今年度は、マグ溶接で拡散性水素量を制御してヒールクラック試験を行うために、炭酸ガスに水素を微量混入させたシールドガスで拡散性水素試験を行った。その結果、ソリッドワイヤでは水素を0.5%混入させることにより低水素溶接棒と同程度の拡散性水量となることがわかった。

(2) 過大ギャップの処理方法の研究[2021年5月27日、2021年11月26日、2022年3月25日]

 鉄骨の現場溶接における過大ルートギャップ処理方法について、一般的な処理方法のバタリング以外に品質確保ができ工程短縮となる工法の提案を目指し、その試験方案の検討を行った。

1.3 溶接協会内委員会への委員派遣

 本年度は、下記2委員会へ委員派遣を行った。
・規格委員会
・安全衛生・環境委員会

2.ウェルディングショー展示WG及び2022国際ウェルディングショー

 2022国際ウェルディングショーにおいて、IIW2022年次大会・国際会議とのコラボ展示コーナーに「DXによる生産革命」と題して建築関係の展示を本WGで検討した。展示の内容は動画、パネルや製作物の展示とし、建築現場の未来ビジョン及び日本の鉄骨構造を発信することにした。

以上

2020年度事業報告(2021.4.1)

1.本部会

 建設部会は鉄骨・橋梁等を製作、架設する企業、溶接材料メーカ等を会員とし、中立を含めて13会員で構成している。なお、2020年度にゼネコン4社が入会し、当部会の活動が幅広く展開されることが期待される。
 2020年度の部会は、新型コロナウイルス感染症の影響により活動中止期間があり、11月から対面+Web会議にて活動を再開し、書面審議(2回)と合わせて計5回開催された。内容を以下に報告する。

1.1 討議及び研究

(1) 組立溶接のヒールクラックの研究

 建築鉄骨や鋼道路橋における組立溶接の脚長及び長さの規定緩和に向け、一般社団法人日本橋梁建設協会との共同研究として「組立溶接のヒールクラックの研究」を行っている。昨年度の試験溶接の結果、組立溶接の脚長と長さの緩和は十分に可能であり、今年度にヒールクラック発生の要因を更に明確にするための試験を実施する予定であったが、コロナ禍のため実施できなかった。

(2) 次年度の研究テーマについて[2020年11月30日、2021年1月20日]

 次年度研究テーマとして、鉄骨の現場溶接における過大ルートギャップ処理方法について提案があった。一般的な処理方法としてバタリングがあるが、その他の方法で品質確保ができ工程短縮となる工法を見出せないかを検証することとした。

(3) 溶接部性能保証のためのシミュレーション技術について

 現在、内閣府/国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主導する国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的構造材料」において、「溶接部性能保証のためのシミュレーション技術の開発」拠点が設置され、溶接熱源のモデリングから継手性能評価まで一貫したシミュレーション技術の開発が推進されている。このシミュレーション技術は、①溶接熱源のモデル化とそれによる溶融池形成予測技術の開発、②凝固・組織変化を伴う溶接部の特性予測技術の開発、③溶接継手の性能予測技術の開発の3つのテーマにわかれ、そのうち、①溶接熱源のモデル化とそれによる溶融池形成予測技術の開発について、建設部会として何ができるかを検討していく。

1.2 マンガン及びその化合物並び に溶接ヒュームへの健康障害防止対策について[2020年11月30日、2021年1月20日]

 安全衛生・環境委員会主催の「溶接ヒュームへの健康障害防止対策に関する説明会(2020年12月7日)」への参加とその内容の報告、厚生労働省のホームページ掲載の資料の説明を行った。

1.3 討議及び研究

本年度は、下記2委員会へ委員派遣を行った。
・規格委員会
・安全衛生・環境委員会

以上

2019年度事業報告(2020.4.1)

1.本部会

 建設部会は鉄骨・橋梁等を製作、架設する企業、溶接材料メーカ等を会員とし、中立を含めて9会員で構成している。本部会の開催頻度は、年3回程度である。
 2019年度の部会は、3回開催された。内容は以下に報告するとおりであり、鋼構造物(鉄骨・橋梁)の溶接に対する問題解決へ向けた検討を継続した。

1.1 討議及び研究

(1) 「組立溶接のヒールクラックについて」[2019年5月10日、2019年12月4日 於:溶接会館会議室]

 建築鉄骨や鋼道路橋における組立溶接の脚長及び長さの規定緩和に向け、一般社団法人日本橋梁建設協会との共同研究として「組立溶接のヒールクラックの研究」を行っている。試験溶接の結果、組立溶接の脚長と長さの緩和は十分に可能である成果を得た。また、ヒールクラック発生の要因を更に明確にするための試験方法についても検討した

1.2 橋梁架設現場見学[2019年9月27日]

 他分野との交流により溶接技術の継続的改善を目的として、車両部会・台車溶接研究委員会との合同部会を開催し、国土交通省九州地方整備局発注のアーチ橋でMMB・宮地・川田JVで製作・架設している筑後川橋(福岡県)の現場見学を行った。

1.3 溶接協会内委員会への委員派遣

 本年度は、下記2委員会へ委員派遣を行った。
・規格委員会
・安全衛生・環境委員会

2018年度事業報告(2019.4.1)

1.本部会

 建設部会は鉄骨・橋梁等を製作、架設する企業、溶接材料メーカ等を会員とし、中立を含めて8会員で構成している。本部会の開催頻度は、年3回程度である。
 平成30年度の部会は、3回開催された。内容は以下に報告するとおりであり、鋼構造物(鉄骨・橋梁)の溶接に対する問題解決へ向けた検討を継続した。

1.1 討議及び研究

(1) 「組立溶接のヒールクラックについて」[平成30年5月11日、平成30年9月12日、平成30年3月22日]

 建築鉄骨や鋼道路橋における組立溶接サイズ及び組立溶接長の規定緩和に向け、平成27年度にヒールクラック発生状況確認試験を行い、その結果を受け、平成28年度にはヒールクラックの発生に影響すると思われる組立溶接の溶込み深さが、被覆アーク溶接棒、マグ溶接(ソリッドワイヤ及びフラックス入りワイヤ)で同等とできるかを確認した。
 平成27年度からの検討の結果、橋梁と建築鉄骨で組立溶接の要求事項や溶接部の要求性能は異なるが、組立溶接の脚長や長さの緩和はお互いにメリットがあり、当部会にて組立溶接のヒールクラックについて研究を行うことにした。試験体は既往の研究と同様とし、鋼材の炭素当量、溶接方法、溶接材料の種類、溶接長、脚長をパラメータとした。なお、本研究は一般社団法人日本橋梁建設協会との共同研究とした。
 平成29年度に試験計画と鋼材の入手、平成30年9月に試験溶接を行った。その結果、組立溶接の脚長と長さの緩和は十分に可能である成果を得たが、ヒールクラック発生の要因を更に明確にするために継続して研究を行っていく。

1.2 溶接協会内委員会への委員派遣

 本年度は、下記2委員会へ委員派遣を行った。
・規格委員会
・安全衛生・環境委員会

以上