1.概要

 2023年度は4回の委員会(第305回~第308回)を開催した。新型コロナウイルス禍による行動制限が解除されたため、第306回は2019年度以来となる委員会の地方開催としての鹿児島開催とENEOS喜入基地(株)見学会(写真1)を併設した。第307回は機械部会パイプライン小委員会との合同委員会を開催した。2023年度は新規入会3社があり、会員数は46企業・団体となっている。

2.委員会

 化学機械分野に関わる材料、溶接、検査、劣化・損傷評価、設備保全関連技術などについての調査・研究を委員会事業の柱として運営している。以下の通り、2023年度の委員会での技術発表の概要を示す。

2.1 第305回(2023年6月20日):溶接会館(WEB会議併用)

講演テーマ所  属氏  名
カーボンニュートラルに向けたエンジニアリング会社の取組とプラント設備動向の紹介千代田化工建設(株)坂田 健太郎 氏
大容量アンモニアタンク開発(株)IHIプラント田附 英幸 氏
国際水素サプライチェーン構築に向けた取組み-液化水素タンクのMIG溶接技術開発-川崎重工業(株)青木 篤人 氏
ケーススタディ【検査立会の今後のありかた(第1回)】運営WG

2.2 第306回(2023年9月13日):TKPガーデンシティ鹿児島中央(WEB会議併用)

講演テーマ所  属氏  名
AM(Additive Manufacturing)のMHI内での適用事例紹介三菱重工業(株)石出 孝 氏
ホットワイヤ・レーザ溶接法による9%Ni鋼の効能率・低入熱溶接技術広島大学山本 元道 氏
ガイド波探傷試験によるプラント配管の腐食検査Eddify Technologies松園 真一 氏
委員による自己紹介運営WG

2.3 第307回(2023年12月19日):溶接会館(WEB会議併用)―機械部会との合同委員会

講演テーマ所  属氏  名
腐食、割れの貫通におよぼす材料・環境・応力因子(株)IHI中山 元 氏
連携による教育・研究の加速大阪大学倉敷 哲生 氏
減肉FFS評価における構造不連続部距離規定の考え方出光興産(株)飴矢 拓泰 氏、石崎 陽一 氏
ケーススタディ:【検査立会の今後のありかた(第2回)】運営WG

2.4 第308回(2024年3月12日):溶接会館(WEB会議併用)

講演テーマ所  属氏  名
圧力設備の保全・検査規格複線化と圧力設備サステナブル保安部会の発足出光興産(株)石崎 陽一 氏
API RP 582(Welding Guidelines for the Chemical, Oil, and Gas Industries)
改正のポイントと現場への適用について
日揮グローバル(株)坂田 幹宏 氏
ボイラ特集講演①   発電用ボイラの肉盛溶接に関する法令規格の紹介三菱重工業(株)原田 英政 氏
ボイラ特集講演②   発電用ボイラへの肉盛溶接施工事例(株)ウェルディングアロイズ・ジャパン白石 陽一 氏
ボイラ特集講演③   産業用ボイラの保全(検査と補修)(株)コスモ石油西村 昌記 氏
ボイラ特集講演④   「溶接による肉盛補修に関する調査研究」報告要旨レイズネクスト(株)津野 和裕 氏

3.幹事会

 定例幹事会を委員会(第305回~第308回)の開催日の午前中(第306回のみ1週間前に開催)及び2024年1月16日に開催し、委員会の事業企画、小委員会・WG活動、国際活動計画などの運営について諸検討を行った。また、2024年1月9日に第4回常任幹事会を開催して委員会の中長期的な運営方針の検討を行った。

4.小委員会及びWG

4.1 N2バックシールド適用評価合同小委員会(長島委員長)

 2023年度はArガス及びN2ガスをバックシールドに用いて作製した溶接継手の性能評価、並びに実験及び流体シミュレーションによるガス置換挙動の検討を実施した。その結果、N2バックシールドは継手性能、置換特性ともArバックシールドと差異はないことを確認した。小委員会は4回開催し、試験進捗状況の共有、方針協議、各種情報交換などを行った。N2バックシールド適用拡大に向けた周知活動の一環として、これまでに得られた成果を溶接構造シンポジウム2023で発表した。

4.2 運営WG(高橋主査)

 2023年度はWGを4回開催し、委員会の将来ビジョンの検討及び活動テーマの探索を主な活動としている。委員会における通常の講演発表のスタイルに加え、技術的に深堀すべきテーマを検討し、討議の場としてケーススタディを企画するとともに、委員会活性化のために所属委員の業務および自己紹介を企画した。

4.3 WES 2820改正WG(戒田主査)

 2023年度はWGを7回開催し、昨年度に引き続きWES 2820改正案の検討等を実施した。主な活動は以下のとおりである。

  • WES 2820改正原案について、本体及び附属書(例題)の読み合わせを実施した。
  • 国際会議において、WES 2820の概要を紹介した(2023年7月、ASME PVP 2023)。
  • WES 2820講習会の実施について検討を開始した。圧力設備サステナブル保安部会と連携して開催することで関係者と調整を進めた。

4.4 溶接補修WG(津野主査)

 2023年度は、昨年度に引き続き、「プラント圧力設備溶接補修指針」(CP-0902)の改訂に取り組んだ。第2章3節(当て板溶接補修)及び第5章の法規・規格関連以外は最終校正を開始した。

4.5 DSS溶接ガイドライン出版WG(岩本主査)

 2017年に発行した「二相ステンレス鋼の溶接施工ガイドライン」(CP-1701)から、溶接施工上の主要留意事項を抜き出し、技術的な補足説明を加えた「新版」ガイドラインをA5版ハードカバー書籍として出版・公開することを目標に活動している。2023年度は4回の読み合わせを行い、読み合わせ会は終了した。

 その後、頂いたコメントを元に各執筆担当者による、最終原稿の作成を行った。最終校正として少人数による校正会を6回開催し、出版社に印刷用の原稿を手渡した。2024年4月24~27日に開催予定の、2024国際ウエルディングショーに合わせて発行することとした。

4.6 海外活動WG(戒田主査)

 2023年度はWGを2回開催し、圧力設備技術に関わるASME、API等の情報を共有し、本委員会の海外活動への展開について議論した。

  • 2023年5月に発行されたAPI RP 582 4th Edition について、WGで内容共有をした後、化学機械溶接研究委員会メンバーへのフィードバックを計画し、2024年3月の本委員会で紹介した。
  • 国際会議における当委員会の活動のアピールとして、ASME PVP 2023 Conferenceでの発表を促進した。Conferenceでは、WES 2820改正および適用検討事例の紹介が行われた。

4.7 情報化WG(松下主査)

 本委員会のこれまでの発表資料を整理・分析し、溶接情報センターへ提供可能なアーカイブ化コンテンツの検討を行った。この成果は、本委員会の将来活動展開に役立てることを決定した。

5.溶接構造シンポジウムでの化学機械特別セッション

  (一社)溶接学会 溶接構造研究委員会主催の溶接構造シンポジウム2023において、化学機械特別セッション(2023.11.29開催)を「圧力設備の供用適性評価(減肉評価技術の動向)」、「二相ステンレス鋼の溶接(溶接施工のかんどころ)」及び「化学機械分野の最近のトピックス」の 3 テーマで企画・実施した。各セッションでの講演題目は以下の通り。

  • 圧力設備の供用適性評価(減肉評価技術の動向)/座長・オーガナイザー: 住友化学(株) 戒田 拓洋 氏
講演テーマ所  属氏  名
減肉評価の最近の動向東洋エンジアリング(株)永田 聡 氏
WES2820の概要住友化学(株)高橋 準也 氏
供用中の圧力設備へのWES 2820の適用性検討三菱化学(株)齋藤 康己 氏
減肉評価における構造不連続部の距離の検討出光興産(株) 飴矢 拓泰 氏
  • 二相ステンレス鋼の溶接(溶接施工のかんどころ)/座長・オーガナイザー: 千代田化工建設(株) 岩本 博之 氏
講演テーマ所  属氏  名
二相ステンレス鋼の溶接 溶接施工の注意事項千代田化工建設(株)岩本 博之 氏
二相ステンレス鋼の溶接施工の実際:ティグ溶接の留意点(株)高田工業所中野 正大 氏
二相ステンレス鋼のトラブル事例と防止策東洋エンジアリング(株)長島 英紀 氏
二相ステンレス鋼におけるフェライト相比変化の予測モデル大阪大学小川 和博 氏
  • 化学機械の最近のトピックス/座長・オーガナイザー: 日揮グローバル (株) 高橋 淳 氏
講演テーマ所  属氏  名
圧力設備の肉盛溶接補修レイズネクスト(株)津野 和裕 氏
圧力設備の技術伝承の溶接設計・施工のテキスト大原技術士事務所大原 良友 氏
ステンレス鋼片面溶接における窒素バックシールドの適用東洋エンジアリング(株)長島 英紀 氏
圧力設備の溶接後熱処理(JIS Z 3700と法規規格の比較)出光興産(株)鈴木 哲平 氏
写真1―ENEOS喜入基地(株)見学会(2023.09.14)
(機械部会パイプライン小委員会との合同見学会)

写真2―溶接構造シンポジウム 化学機械特別セッションにおける講演
(2023.11.29)