1.原子力研究委員会

1.1 各小委員会の設置及び報告
1.2 特別講演の実施
1.3 原子力施設等見学会の実施
1.4 シンポジウムの開催
1.5 講習会の開催

2.企画検討会

2.1 シンポジウム・講習会の立案
2.2 最新情報の交換・現状の把握
2.3 本委員会審議事項の予備検討
2.4 各小委員会との情報交換・連携促進
原子力研究委員会の目的は、構造・材料分野における研究開発と人材育成への貢献である。また、溶接協会は、原子力以外の分野も含む比較的中立的な立場であり、各ステークホルダーに対して、ある程度自由な発言が出来ることに特徴がある。
こうした特徴を活かして、効果的に研究開発と人材育成を進められるように、各小委員会活動と企画検討会活動とを連携させ、以下の活動の促進を図る。
・小委員会活動成果のガイドライン化
・成果の還元と社会ニーズとのマッチング
・人材育成とネットワーク構築 

3. 小委員会

3.1国際研究連絡小委員会

2023年に開催された第14回ASINCO国際ワークショップ「International Workshop on the Integrity of Nuclear Components」より学術的価値の高いの講演論文を選定し、国際ジャーナル「International Journal of Pressure Vessels and Piping」の特集号として公刊する。2025年に開催が見込まれる第15回ASINCO国際ワークショップの開催に向け、主催国である台湾と連携して準備を進める。

3.2 SPN-Ⅱ小委員会

「原子力構造機器の経年化とその関連技術に関する調査研究」

 2024年度も引き続き、大地震や炉心溶融事故などに代表される過酷な荷重下での機器やプラント全体の健全性を適切に評価するための手法の整備状況や適用動向を主なテーマとして、文献調査(抄訳)及び、対象とする技術分野に精通した方の講演により、調査・検討を行なうこととする。具体的な調査対象項目を以下に示す。

(1)BDBA(設計基準事故を越える事故)も含めた構造物の終局強度評価法

(2)過酷事故やその前駆段階における構造強度評価法

(3)低確率事象に対する工学的対処法

(4)規制や再稼動に関わる動向

また、2016年度から検討を開始した「弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドライン」の策定に向けて、応力―ひずみ関係式や損傷が変形に対して与える影響なども含めて多軸応力下での延性破壊を高精度に評価する手法の推奨案の作成を進める。さらに、機械学習を中心としたAI技術の強度評価への適用の状況についても調査対象に含め、最新動向を把握する。

3.3 PFM小委員会

「原子力構造機器信頼性評価への確率論的破壊力学の適用法に関する調査研究」

 2024年度も引き続き、リスクベース評価に基づく原子力構造機器及び原子力プラント全体の安全性、 信頼性、経済性、社会的受容性の向上に向けて、より現実的な問題に対する手法の調査・検討・開発を行う。特に、PRA と連携した PFM の利用について検討を行う。確率的手法の考え方や使い方を効果的に伝える広報活動方法について検討し、さらに、和文・英文の PFM 解説文書のメンテナンスについても引き続き活動を継続する。国内外の研究機関によるベンチマーク解析等の V&V に関する検討を引き続き行う。また、10月に開催される原子力規制庁とJAEA共催の国際シンポジウムISPMNA5への協力を積極的に行う。具体的なテーマとして以下のものが挙げられる。

(1)リスクベース評価のより現実的な問題への適用

(2)国内外のリスクベース評価研究・開発動向調査

(3)PFMコードによる具体的な評価研究

(4)PFM解説文書(和文・英文)の改訂作業・広報活動

(5)PFMベンチマーク解析に関する検討

(6)PFM解析ガイドラインの高度化・展開

3.4 BDBE小委員会

「設計基準外事象の評価と対策に関する調査研究小委員会」

BDBE小委員会は、設計想定を超える事象(Beyond Design Basis Event)に対する新しい構造強度アプローチを提案し、コンセンサスを醸成することと、それを実現するための新しい技術を調査検討することを目的としている。最終的には、「設計想定を超える事象(BDBE)に対する原子炉構造レジリエンス向上ガイドライン」としてまとめることを目指している。

2024年度は、2023年度に終了した文部科学省原子力システム研究開発事業「原子炉構造レジリエンスを向上させる破損の拡大抑制技術の開発」の研究成果を活用して、ガイドライン策定に向けて以下の研究を行う。

(1) 構造が持つ受動安全性を考慮したプラント事故耐性の評価

(2) 設計想定を超える事象に対する安全対策と構造対策の連携枠組

(3) オイル・ガス、土木分野等の先進事例の調査

また、2024年度申請中の文部科学省原子力システム研究開発事業が採択されれば、その外部評価を実施する。

3.5 CAF-Ⅱ小委員会

「塑性拘束効果を考慮した破壊評価基準の確立に関する調査研究(その2)」

 2018年度~2022年度に実施したCAF小委員会では,延性亀裂を伴うへき開破壊が生ずるDBTT(延性-脆性遷移温度)領域において,塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法の適用性を検討した。その結果、実構造物と同程度の拘束度を持つ表面亀裂付き平板試験片の破壊試験に対し、従来の破壊力学が持つ過度の保守性を排除して適切に評価できることを検証した。また,解析ツールの汎用化のためベンチマーク問題を設定し、解析機関間の評価結果の有意差を極力抑えるような解析条件設定法を検討した。これらの成果をもとに、DBTT領域での塑性拘束効果を考慮した破壊評価法ガイドラインを策定した。

後継のCAF-II小委員会では、当ガイドラインを社会実装するため、規定内容の標準化と利便性向上を図り、日本電気協会規格原案を策定する。本小委員会では、以下の活動を予定している。

(1)CAF小委員会の破壊試験結果及び関連他文献の破壊試験結果に対する追加解析実施を通した破壊予測の精度向上

(2)日本電気協会規格の仕様による規格原案の策定

3.6 DHI-Ⅲ小委員会

「デジタル打音検査技術の高度情報化に関する調査研究(PhaseⅢ)」

原子力発電所の高経年化が進み、設備保全の観点から配管・アンカー等の溶接部・接合部の構造健全性を簡便に診断する技術が望まれている。2019年度に活動を開始したDHI小委員会第一期では、デジタル打音検査技術に関する調査研究WGと高度情報化検討WGにより調査研究を行い、基礎ボルト検査方法、金属/コンクリート間の界面状態検査方法に関するガイドライン案を作成した。2022年度に開始した第二期では対象範囲を広げ、各種センサ技術による高度情報化(オンラインモニタリング等)の調査研究も行っている。
2023年度は引き続き以下の項目についての調査研究を行う。
(1)デジタル打音検査技術の現状と課題の整理、実地事例の収集と評価
(2)各種センサ技術の現状と課題の整理、実地事例の収集と評価
(3)デジタル打音検査シミュレーションのデータベース化と人工知能による学習の検討

3.7 FDF-Ⅲ小委員会

「繰返し荷重下での低サイクル疲労および延性破壊に対する評価法の整備に関する調

 査研究(その3)」

これまでFDF/FDF-Ⅱ小委員会において規格への反映を目的に、J積分範囲ΔJを用いた亀裂進展評価法に関するガイドライン整備を進めてきた。ここで整備したJ積分及び亀裂進展評価手法は、CT試験片及び貫通亀裂付配管の試験データを検証データとして整備されたものである。しかしながら、実機では表面亀裂に対する需要が高く、ガイドライン(案)の規格化には表面亀裂に対する評価精度の確認など幾つかの課題があると考えられる。

そこで2022年度はFDF-Ⅲ小委員会準備会を設立し1年間の準備期間を設け、J積分範囲ΔJを用いた亀裂進展評価法の規格化に向けて、課題整理、方針策定及び評価法検証に資する表面亀裂付き配管に対して低サイクル疲労亀裂進展試験の実施を行った。これらの準備結果をもとに、2023年4月にFDF-Ⅲ小委員会を立ち上げ、亀裂進展評価ガイドラインの2026年4月以降に規格化を目指している。

2023年度と同様に2024年度も、簡易評価法検討 WG と詳細評価法検討 WGに分かれて活動する。

簡易評価法検討 WGでは、準備会で実施した試験結果および数値解析手法検討WGの解析結果を踏まえて、亀裂進展解析手法の高度化を図り、FDF-Ⅱ小委員会で策定した亀裂進展ガイドライン案の規格のドラフトを作成する。

詳細評価法検討 WGでは、準備会で実施した亀裂進展解析をトレースし、構成式、破壊クライテリア、FE解析モデル化の精緻化を図り、適切な手法をガイドラインに反映する。

3.8 FQA3小委員会 幹事会

「Q&A方式による疲労知識の体系化に関する調査研究」

FQA3小委員会幹事会は、「疲労ナレッジプラットフォーム」の維持、管理と最新情報の反映を目的とした活動に加えて、Q&A集の出版、電力殿への疲労に関する無料講習会、積層造形材の調査研究を新たに検討している。

また、次年度以降、電力委託の獲得によるAM材の疲労を対象とした新たな小委員会の発足を目指している。