1.原子力研究委員会

1.1 第163回原子力研究委員会(6月16日:ハイブリット開催)
1.2 第164回原子力研究委員会(12月9日:ハイブリッド開催)
特別講演「原子炉構造レジリエンス向上に向けた構造強度アプローチ」
笠原 直人氏 (国立大学法人東京大学 教授)
1.3 特別シンポジウム「2050年のエネルギーと社会を支えるために-材料力学のビジョンと役割について-(第56回国内シンポジウム)の開催(6月16日開催:無料/ハイブリッド開催)
1.4 原子力プラント機器の健全性評価に関する講習会の開催(12月20日・21日開催:ハイブリッド開催)

2.小委員会

2.1 国際連絡小委員会

 2023年4月12~14日に金沢で開催予定の第14回原子力機器健全性に関する国際ワークショップ(14th International Workshop on the Integrity of Nuclear Components: ASINCO-14)の準備作業を進めた。原子力研究委員会傘下の各小委員会の協力を得て日本より9件の学術講演を準備いただき、海外からの投稿を含めてプログラムを確定した。
2021年4月にオンライン開催された前回ワークショップにおける講演論文のうち学術的価値の高いものを選定し、International Journal of Pressure Vessels and Pipingの特集号として公刊した。

2.2 SPN-Ⅱ小委員会
「原子力構造機器の経年化とその関連技術に関する調査研究」

 2012年度までは、原子力プラント機器の構造健全性、経年劣化に関連する分野の動向を幅広く把握するために、文献抄訳、講演を通した動向調査を進めてきた。さらに、東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故後は、大地震などに代表される過大荷重下での機器やプラントの健全性を評価するための手法の整備や適用の動向をメインの対象とした調査活動を行っている。また、2016年度からは「弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドライン」の作成を目的として、応力-ひずみ関係式や限界ひずみ評価式に関する検討を進めている。
2022年度は4回の委員会(時間は原則13:30~17:00)を開催し、昨年度までと同様に、文献抄訳と講演を通じて上記分野の技術動向を調査するとともに、弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドラインの作成に向けた検討を進めた。体制を以下に示す。
・主 査 :高橋由紀夫((一財)電力中央研究所)
・委 員 :13機関、15名
活動の概要を以下に示す。
(1)講演及び文献による調査
・2回の講演が行われた。「化学プロセスに適用されている「リスク基準メンテナンス方法」の概要」と題した講演(講師:阪大・石丸教授)により、API581やEN-16991の規格を基にリスクベース検査(RBI)の適用に関する状況を把握した。また、「Constraint Effect on Fracture in Ductile-Brittle Transition Temperature Region(Report 2)」と題した講演(講師:三菱重工・北条委員)により、延性-脆性遷移温度領域における破壊挙動に及ぼす拘束の影響についての研究動向を把握した。
・文献調査では6件の論文を調査した。内訳はGursonモデルやGTNモデルなどの損傷モデルを用いた延性破壊予測に関する論文が4件、確率論的破壊力学(PFM)を用いた検査要求の緩和に関する論文が2件であった。
(2)弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドラインの検討
構造健全性評価ガイドラインへの導入を念頭において、真応力-真ひずみ関係式の見直し、一様伸び及び加工硬化係数に対する新しい評価法の採用、各種材料(SUS316、SQV2A、NCF600、SN400)の応力-ひずみ関係や切欠き材の荷重―変位関係についてのFEM解析による検討(s損傷力学モデルの適用も含む)などを行った。

2.3 PFM小委員会
「原子力構造機器信頼性評価への確率論的破壊力学の適用法に関する調査研究」

 我が国における確率論的破壊力学に関する研究は、日本溶接協会および日本機械学会の研究委員会等で20年以上にわたり行われている。維持基準導入など、破壊力学の適用は進んではいるが、まだ、確率論的取り扱いが広く議論されるまでにはいたってはいない。一方、コロナ禍により一般大衆の確率的事象に対する理解度の向上が期待され、ウクライナ危機に伴う世界的エネルギー状況への不安から、原子力発電への期待が大きくなっていくものと思われる。
このような状況の中、今年度は、確率論的評価法の信頼性を高めること、および適用分野の拡大、さらには解析手法のガイドライン化などを目的として、原子炉圧力容器の破壊確率評価の標準化、BWR原子炉圧力容器のPFM評価コード整備、配管を対象としたベンチマーク解析、PFM解析プラットフォーム整備、社会インフラ診断への適用、および文献調査などの活動を行なった。また、コロナ禍で海外との交流が制限される中、PEAI(Phoenix Engineering Associates, Inc.)のDr. Kirk氏(電力中央研究所客員研究員)を招き、ハイブリッド形式の講演会を開催した。小委員会メンバー以外からも多くの方に参加いただき、有意義な意見交換を行うことができ

2.4 BDBE小委員会
「設計基準外事象の評価と対策に関する調査研究小委員会(BDBE小委員会)」


「設計基準外事象(BDBE)」に対する安全性向上に向けた構造・材料分野の考え方を整理し、コンセンサスを醸成することと、それを実現するための新しい技術を調査検討することを目的として活動している。最終的には、「設計基準外事象(BDBE)」対する評価と対策に関するガイドラインを提案することを目指して、以下の課題に取り組んでいる。
(1) BDBEに対する考え方と要求性能
(2) BDBE条件下における破損拡大抑制技術の開発
(3) 次世代高速炉を対象としたレジリエンス向上策の検討
(4)  国際展開
主査:笠原直人(東京大学) 副主査:望月正人(大阪大学)
幹事:堂崎浩二(東北大学)、釜谷昌幸(原子力安全システム研究所)
委員:中立委員18名・委員8名 事務局:3名
令和4年度は3回開催し、文部科学省原子力システム研究開発事業の進捗報告と評価、及び各課題に精通した方の講演により調査を行った。
(1) BDBEに対する考え方と要求性能
「設計想定を超える事象に対する原子炉構造レジリエンス向上ガイドライン」策定に向けて、類似分野の例を学ぶため、以下の講演をいただいた。
「福島第一原子力発電所に対する要求性能と強度評価」東大 鈴木俊一 特任教授
「オイル&ガス分野におけるプロセス安全設計と実現のための遂行手法概要」日揮グローバル 田邊雅幸氏
今後上記を参考として、ガイドラインの位置づけ、上位規格について検討を行う
(2)BDBE条件下における破損拡大抑制技術の開発
原子力システム事業「原子炉構造レジリエンスを向上させる破損の拡大抑制技術の開発」の令和4年度進捗状況について評価し、進め方についての助言をいただいた。
具体的には、超高温時と過大地震時の破損モードを明らかにし、破局的な破損モードへの拡大を抑制する技術について、議論いただいた。
(3)次世代高速炉を対象としたレジリエンス向上策の検討
「設計想定を超える事象に対する原子炉構造レジリエンス向上ガイドライン」の適用例として次世代高速炉を対象として、破損拡大抑制技術を用いたレジリエンス向上策を検討した。
(4) 国際展開
BDBEに関しては、IAEAやCNSCの関心が高く原子力構造力学会議(SMiRT)を介して意見交換を行った。2022年7月にドイツで開催されたSMiRT26にて、BDBEに関する特別セッションを開催し、3件の成果発表を行った。

2.5 CAF小委員会
「塑性拘束効果を考慮した破壊評価基準の確立検討小委員会」


2022年度は、計3回の小委員会と6回の合同WG(手法検討WG + 解析WG)を開催した。活動内容と主な成果は以下の通りである。
(1)塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法の調査
塑性拘束効果を考慮した脆性、延性、及び遷移温度領域での破壊評価法に関し、2021年度に引き続き文献調査を継続的に推進した。昨年度同様、脆性破壊、延性破壊、延性亀裂発生・成長を伴う脆性破壊のそれぞれの破壊モードに分類して、キーワードごとに得られた知見を最終報告書に整理した。
(2)塑性拘束度の異なる破壊試験と破壊評価手法の適用性の検証
2021年度に実施した-120℃の半楕円表面亀裂付平板引張破壊試験におけるCODゲージ出力に大きな温度ドリフトがあり、COD値の信頼性が低いため、2022年度に2体の追加試験を実施した。これらの試験では、試験時の温度ドリフトを抑えた上で試験体の温度分布、ひずみ分布を詳細に把握するため追加の熱電対及びひずみゲージを取り付けた他、試験装置と試験体間の相対変位(チャック移動量)を把握するため、追加の変位計も取り付けた。追加試験により、精度の高いCOD値が得られたほか、温度変動の影響を受けにくい試験体のストローク変位からチャック移動量を差し引いた補正ストローク変位を求めた。荷重-補正ストローク変位関係が、試験のシミュレーション解析による同関係とほぼ一致し、チャック移動量の再現性が高いことも確認されたことから、2021年度に実施した-120℃試験体の破壊試験結果もこの関係を用いて、破壊時の変形量を特定することにした。この方法により、-120℃の平板引張破壊試験による破壊時KJ(KJc)をBereminモデルによる予測KJcと比較した結果、試験によるKJcは5%及び95%の予測KJcの範囲にあり、Bereminモデルによる破壊予測手法の追加検証ができた。
(3) 破壊評価手法の整備とガイドライン案の検討
4種類のPTS過渡事象における原子炉圧力容器(RV)の塑性拘束評価を簡便に実施できるよう、クラッドなし表面亀裂付平板モデルを用いて保守側に塑性拘束補正係数χを導出した。補正係数χは、ワイブルパラメータm、降伏比Ry(=σy/σu)をパラメータとし、負荷レベルKJに依存する。2つのパラメータに対し、σw-KJ関係をFE解析で算出し、χをKJ/σyに対する一次式で定式化した。一次式の2つの定数は、m及びRyの関数として決定した。また、χは、工学的判断からKJ/σyがある値以上で一定値になるように設定した。
この検討結果をまとめたガイドラインを策定した。ガイドラインには、塑性拘束効果を考慮する具体的評価手順の他、ワイブル応力解析、GTNモデル解析を実施する上での留意点、使用する解析プログラムの精度検証に使用するベンチマーク問題とその結果も提示した。
(4) 国内外機関との情報交換・情報収
2021年度成果を2022年7月Las Vegasで開催されたPVP2022会議で発表した。2022年成果は2023年7月AtlantaでのPVP2023会議で発表予定である。また、本小委員会で実施したベンチマーク解析結果を2024年3月横浜でのSMiRT27で発表予定である。

2.6 DHI-Ⅱ小委員会
「デジタル打音検査技術の高度情報化に関する調査研究小委員会(PhaseⅡ)

 
原子力発電所の高経年化が進み、設備保全の観点から配管・アンカー等の溶接部・接合部の構造健全性を簡便に診断する技術が望まれている。2019年度に活動を開始したDHI小委員会第一期では、デジタル打音検査技術に関する調査研究WGと高度情報化検討WGにより調査研究を行い、基礎ボルト検査方法、金属/コンクリート間の界面状態検査方法に関するガイドライン案を作成した。第二期1年目となる2022年度はこれまでの活動を引き継ぐとともに対象範囲を広げて活動を行った。具体的には2つのワーキンググループにおいて以下の活動を行った。
(1)調査研究WG
・デジタル打音検査に係る事例収集
原子力分野、溶接分野の事例を追加。
・基礎ボルト検査方法 ガイドライン(案)作成
日本コンクリート工学会年次論文集 Vol.44に関連論文が受理。
・金属/コンクリート間の界面状態検査方法 ガイドライン(案)作成
日本原子力学会和文論文誌に関連論文を投稿。
・各種センサ技術の高度情報化に関する調査(オンラインモニタリング等)
発電プラントにおける異常診断、振動計測による回転機器の診断等を調査。
・デジタル打音検査の現場視察
沖縄県との連携により古宇利大橋のデジタル打音検査を視察
(2)高度情報化WG
・デジタル打音検査の機械学習による状態予測
PCコンクリート埋設状態の予測、埋め込み金物の状態予測の研究結果の報告とデータの共有を実施。
・異常検知AIの文献調査
文献調査リストを作成しWGメンバと共有し文献調査の実施。
・AIの工学応用に関する研究動向の報告
日本機械学会、日本計算工学会、IACM関連の学会における研究動向の紹介。

2.7 DFC4小委員会
「設計疲労線図の策定に係る調査(PhaseⅣ)」

 
大気中設計疲労線図の精緻化の検討を行い、新しい合理的な設計疲労線図を構築するべく、原子力研究委員会にDFC(Design Fatigue Curve)小委員会を設置し(DFC小委員会が2011年8月~2013年3月、DFC2小委員会が2013年4月~2016年3月、DFC3小委員会が2019年4月~2021年3月)、新しい設計疲労線図を開発した。DFC2小委員会での成果として、表面粗さ試験結果に対する検討成果からは、表面仕上げ効果係数Ksfを設定することができたが、低~中強度域におけるばらつきが大きいことがわかり、データの拡充が必要であることがわかった。また、疲労強度減少係数と平均応力補正を考慮する順番により設計疲労線図は過度に安全側になる場合があり、これらの考慮の順番を実験により確認する必要があることもわかった。DFC3小委員会では、表面仕上げ効果及び疲労強度減少係数と平均応力補正の関係について、平滑材に着目して検討された。
引き続きDFC4小委員会(2021年4月~2023年3月)では、表面仕上げ効果及び疲労強度減少係数と平均応力補正の関係について、切欠き材に着目して検討した。
2022年度の成果を含むDFC4小委員会の成果は以下の通りである。なお、得られた成果は、2023年11月に開催されるFatigue 2022+1においてOSを提案しており、全般的な紹介を行う予定である。
(1)機械加工表面仕上げ影響試験の評価
炭素鋼及び低合金鋼における機械加工による表面仕上げが疲労強度に与える影響について、応力集中係数(切欠き係数)と表面粗さが重畳した場合の影響を調べるため、環状切欠きを有する試験片の試験部に、さらに機械加工を施した場合と研磨の場合に対して実施した疲労試験結果に基づき、評価手法の精緻化を検討した。
炭素鋼及び低合金鋼の環状切欠き試験片(研磨材、機械加工材)に対する表面性状調査により得られた測定結果から、両材料の表面状態、残留応力、機械加工層等を調査した。
環状切欠き試験片の疲労寿命の定義として、表面粗さの影響が比較できるように、亀裂深さ2mmでの繰返し数を今回の検討に用いる疲労寿命とし、伸び計を用いて計測したコンプライアンスの変化から試験を止め、その時の亀裂深さから亀裂深さ2mm位置での疲労寿命を計算する要領を策定した。
その要領に基づき設定した疲労寿命を用いて、研磨材と機械加工材の疲労寿命を比較した結果、炭素鋼及び低合金鋼とも、機械加工材の方が短寿命側の傾向を示した。得られた結果をJSME環境疲労評価手法の評価式と比較した結果、平滑機械加工材のKsfとほぼ同等又は保守的な評価となった。
(2)疲労強度減少係数及び平均応力補正の関係性評価
炭素鋼及び低合金鋼における疲労強度減少係数と平均応力補正の関係について、環状切欠き試験片に対して、平均応力を付与した疲労試験結果に基づき、得られた試験結果から、適切な疲労強度減少係数と平均応力補正(Smith Watson Topper 法)の適用の順番を検討した。
環状切欠き試験片の切欠き底のひずみが必要なため、試験に対する切欠き底のひずみの変動を弾塑性解析で求める検討を行い、平均応力が残る荷重条件を見出した。
環状切欠き試験片を用いて平均応力を付与した試験を実施した結果、これまでに得られた試験結果からは、平均応力がない場合と比べ、疲労強度は同等、あるいはわずかに低下する傾向がみられた。得られた試験結果に基づき、切欠き材に対する疲労強度減少係数と平均応力補正の関係を調べるため、4種類の計算方法でSWT法の適用性を検討した。設計時の平均応力補正法では、SWT法が保守側になることが確認され、また設計ベースの応力集中係数を考慮する補正法では、さらにSWT法が保守側となることが確認されたので、SWT法の設計への適用は妥当と判断される。

2.8 FQA3小委員会幹事会
「Q&A方式による疲労知識の体系化に関する調査研究(その3)」  

 
FQA3小委員会については、2018年度に委員会活動を終了し、FQA3の成果として取り纏めた「過去の疲労小委員会の成果」「疲労に関するQ&A集」「疲労に関する重要知識」を、溶接協会のHPで「疲労ナレッジプラットフォーム」として公開した。この「疲労ナレッジプラットフォーム」の維持、管理と最新情報の反映を目的としてFQA3幹事会の活動を継続している。
2022年度も幹事会をおよそ2ヶ月に1回の頻度で開催している。2022年度の活動状況は以下の通りである。
(1) 過去の疲労小委員会の成果 について
2021年度、これまでの成果を纏めて第55回原子力研究委員会シンポジウムとして講演会を実施した。今年度は、成果をより社会実装の基礎に落とし込むべく、昨年実施したシンポジウムのテキストをベースに「2022年度原子力機器の構造健全性に関する講習会」にて主査により講習を行った。
また、既に委員会が終了している、「設計疲労線図の策定に係る調査(Phase Ⅲ)」(DFC3小委員会) については学会等で発表を行い、疲労ナレッジプラットフォームで公開するための下準備が整った。2023年度末完成を目標に、「DFC3小委員会の成果」として纏めWEB掲載することで検討を進めている。現在、作業を担当する若手参加者を中心に疲労小委員会の成果として纏め、公開化を図る。
(2) 疲労に関するQ&A集 について
2022年度の成果として、17件のQAシートが完成状態となっている。今後、既に公開済みのQAシートとの相互参照関係を整理し、HPで公開していく。また、これまでの活動によって未完成のQAシートが残りわずかとなりつつあり、引続き全QAシートの完成を目指す。2022年度に完成しなかったQAシートは次年度に持ち越して作成、公開化を進める。
(3) 疲労に関する重要知識
2022年度の新たな成果はないが、2021年7月に実施したシンポジウムのテキストは疲労に関する重要知識の一つであり、公開可能な時期になれば、HPでの公開を進める。