1. 本部会
車両部会は、鉄道会社、車両メーカ、溶接材料/溶接機器メーカ及び材料メーカを会員として「鉄道車両製作における溶接技術の研鑽、溶接品質の向上」を目的に、「アルミ車体溶接研究委員会」、「鉄・SUS車体溶接研究委員会」及び「台車溶接研究委員会」の三研究委員会体制で活動している。
本年度は、2023年6月9日に車両部会総会を開催し、各委員会の活動報告と活動予定について審議・承認した。活動内容は、次項「2.委員会」の通りである。
また、同部会総会終了後は、岩谷産業株式会社 辻上博司様及び吉田佳史様より「水素社会実現に向けた岩谷産業の取り組み」をテーマとしてご講演いただいた。エネルギーとしての水素の用途、水素事業、水素関連の研究開発状況、接合や切断などの金属加工分野における水素の活用法や事例について詳しく説明頂き、参加者一同大いに知見を深めることができた。
2. 委員会
(1)アルミ車体溶接研究委員会
2023年度は委員会を3回開催した。2022年度からの継続審議で、「SCC対策」に取り組み、各社の施工比較や収集した情報の取り纏めを進めた。
新規議題として、「人材育成(直接員/間接員)」をテーマとして取り組み、経験年数に対する資格取得及び教育受講の実態調査を実施し、一覧表としてまとめた。指針としての活用をめざし、ロードマップとしての集約を進めることとした。
本年度は異業種交流会(見学会)を再開し、12月に新明和工業(株) 佐野工場(栃木県)を訪問した。工場見学と質疑・意見交換を行い、相互の知見を深めた。
また、特許委員会へ委員を派遣し、「溶接注目発明賞(JWES)」、「特許庁長官賞」審査委員会に参画した。
(2) 鉄・SUS車体溶接研究委員会
2023年度は委員会を4回開催した。3回の溶接会館会議室での開催と委員会社の工場見学会を実施した。
活動内容は各社から起案されたアンケート調査であり「構体製作におけるSUS車の製造工程について(鋼製車含む)」「構体リーク確認方法」に関するアンケートについて審議した。
「構体製作におけるSUS車の製造工程について(鋼製車含む)」のアンケートでは、使用溶接機材については各社各構体に応じて使い分けしているものの、主にMIG、MAG、スポット、レーザ溶接を用いた結合がメインで、設備に合わせて各社効率の良い工順を組んでいる事や工程について概ね大差が無い事を確認した。
「構体リーク確認方法」のアンケートでは、各社の雨漏れに対する確認体制、方法および確認を行う製品の種類等について審議し次年度にまとめを行うことを決定した。
委員会社の工場見学会は、SUS車の製造工程を見学し、製造における方法および考え方等について意見交換する事で今後の各社での取り組みの参考になった。
4回の活動とは別に、規格委員会 薄板接合技術小委員会(ISO/TC 44/SC 6対応)に幹事会社から委員を派遣し、車両製造の視点における情報収集を行った。
(3) 台車溶接研究委員会
2023年度は委員会を4回開催し、第3回については溶接ワイヤ製造工程の工場見学会を実施した。
活動は、台車枠溶接作業に関わるアンケート調査、2022年度に溶接機器メーカに依頼した「難溶接継手における最適な溶接機機能調査」の結果報告及び全体取りまとめ、並びに2023年度以降の取組テーマ設定を行った。
アンケート調査では、テーマ「溶接施工管理方法に関するアンケート」の各社報告と取りまとめ、「溶接スラグに関するアンケート」及び「ロボットオペレータの技能教育管理についてのアンケート」の各社報告と審議を実施した。溶接施工管理では、各社チェックシートによる施工管理を実施し、第三者による確認及び車両寿命を考慮しpdf化による永年保管などの対応をされている会社が大半であった。今後の取組みとして各社共に3Dデータの活用及びDXによる電子化を検討されていることが確認できた。
難溶接継手における最適な溶接機機能調査では、溶接機器メーカ3社が報告し、溶接速度、溶接電圧、パルス条件、ノズル形状などの工夫により、100%溶込みを得られる条件が紹介された。
2023年度以降の取組テーマ設定においては、2000年以降に取り組んだテーマを台車枠製造工程順に取りまとめて当委員会での取組状況を見やすくし、これを基に各社からテーマを募った。各社の希望が多かったテーマ順に2024年度及び2025年度のテーマをそれぞれ4件ずつ選定し、随時取り組む準備に入った。
第3回で実施した工場見学会では、㈱神戸製鋼所 福知山工場の溶接ワイヤ製造工程を見学した。普段台車枠製造で使用している溶接ワイヤがどのように製造され、また見た目には変わらない数多くの種類の溶接ワイヤをどのように識別管理されているかなどの説明があり、大いに見識を広めるた。
その他、安全衛生・環境委員会への委員派遣は継続としている。
3. 三研究委員会合同委員会
今年度は2023年10月19日、20日の2日間で開催し、ジャパンマリンユナイテッド株式会社 呉事業所及びマツダ株式会社 本社工場の工場見学、並びに三研究委員会合同委員会を実施した。
ジャパンマリンユナイテッド株式会社では、会社及び呉事業所の概要をビデオ、並びに資料で説明された。その後、呉事業所で製造されているコンテナ船の部品加工、ブロック、塗装などの製造工程を見学した。造船工程のスケールの大きさに圧倒されると共に、多軸の溶接ロボットや自動歪み取り技術の研究、溶接工の育成などについて見学、及び意見交換することができ、委員一同大いに参考となった。
マツダ株式会社では、会社概要についてビデオで説明された。その後、マツダミュージアムの見学を通して創業からの歴史やモノ造りについて説明があった。ミュージアム内では実際の組立ラインを見学し、特徴的な「多品種混流生産」で、人及び自動化されたロボット作業が共存して自動車が組み立てられる様子を見ることができた。見学後の質疑応答、意見交換会では、スポット溶接、MIG-レーザのハイブリッド溶接、FSSW(摩擦撹拌点接合)などの技術開発及び品質管理について活発な意見交換をすることができた。
また、三研究委員会合同委員会では、各研究委員会の活動状況報告などがあった。