日本溶接協会のミッション
        日本溶接協会のミッション

平成27年6月

1. 背 景

わが国の景気は、金融緩和や円安・原油安を背景に緩やかな回復傾向にあり、製造業においても地域差こそあれ2020年の東京オリンピック開催等により高い操業水準を維持している。反面熟練技能者不足が表面化しており溶接界においても日本の経済基盤を支える溶接技能者の不足が深刻化しつつある。また技術面においては新素材の登場などでより高度な溶接技術の開発が必要となる一方、日本の溶接研究・教育機関は地方を中心に減少しつつあり世界をリードする日本の溶接技術も憂慮すべき状況にある。当協会では溶接界での昨今の著しい環境変化に対応すべく中長期的な視点で以下の活動指針を策定した。

 

2. 日本溶接協会の活動指針

溶接界共通の認識:

1) 溶接・接合は、ものづくりにとって必要不可欠な基盤技術である

溶接界が抱える問題:

1) ものづくり分野のグローバル化

発展途上国の急速な追い上げ、生産拠点の海外へのシフト、外国人労働者の増加

2) 我が国の溶接分野の現状

国内の溶接関連の研究・教育施設の縮小、研究者人口の減少、企業における溶接技術者・技能者の減少、少子化による溶接関連業務従事者の年齢構成の上昇など

活動指針:

1) 産学官の弛みない努力のもと、世界に冠たる溶接・接合技術の維持と発展を支え、製造立国である我が国の発展に貢献する

2) 業種別の集まりである専門部会と、研究分野毎の集まりである研究委員会の活動を通して、当該分野の技術開発とその普及・発展、並びに人材育成に寄与するとともに、標準化・規格化を行い、広く社会に普及させる

3) 溶接が関わる製品・構造物に対する信頼性を確保するためには、施工管理・非破壊検査などによる品質管理を支える仕組みが必要であり、客観性をもって評価する資格認証・認定制度を継続的に開発・運用する

4) 海外との対応、特にアジア諸国との連携強化を積極的に進め、国際交流に貢献するとともに会員各社にとって有用な中立機関として活動する

5) 「溶接情報センター」から情報発信を行い、会員への重点支援に加え、社会に溶接接合技術の重要性をアピールするとともに教育・普及活動をインターネットを通して支援する

 

3. 重点施策

1) 溶接技能者不足改善への取り組み(製造立国の堅持、国策の支援)

① 溶接界のイメージアップを図る

② 若年者および女性の支援・啓発・教育を通じ溶接界の人材確保に努める

 

2) 研究機関減少改善への取り組み(溶接・接合技術の維持発展)

① 若手研究者助成金制度等を通じた溶接研究機関(特に地方)への支援

 

3) 産学のより強い連携確立への取り組み(業界メリット創出と若手育成)

① 専門部会・研究委員会活動と中立機関の連携強化活動の推進

② 溶接学会・軽金属溶接協会等の関連学協会との連携強化

 

4) 認証による社会貢献活動の拡大(製品・構造物の信頼性確保)

① JIS溶接技能者認証に加えISO9606国際溶接技能者認証を開始しサービスを向上する

② 既存認証制度の有効性を広く説明し利用拡大を図ることで溶接品質を向上させる

③ 社会資本整備・長寿命化(社会資本メンテナンス)事業への貢献

 

5) アジアを中心とした海外認証活動を軸に国際貢献を推進する

① 日系企業や外国人労働者への認証サービスを推進する

② 溶接管理技術者認証制度の海外展開を推進する

 

6) 溶接情報センターをより活用し社会向け教育・普及を推進する(溶接界の底上げ)

① 溶接界イメージアップ、若年者・女性向け情報発信を推進する

② 教育コンテンツの拡大・推進を図る

 

 


 

 

        日本溶接協会の活動方針

平成30年2月

1. 背 景

当協会では総合企画会議にて溶接界の状況を分析し、取り組むべき課題を抽出、活動指針と重点施策にまとめ「日本溶接協会のミッション」として理事会で平成27年6月に承認した。当協会は概ね本ミッションに則って活動しており、種々の具体的な活動方針を関連委員会毎に策定し実行中である。

現在、国内景気は緩やかに拡大中であり、特に建築鉄骨は2020年東京オリンピック関連に加え複数のビッグプロジェクトが始動しており、今後とも景気を下支えするものと期待される。反面、少子化の影響もあり有効求人倍率はバブル期を超え、人手不足は今後益々深刻化するものと懸念される。

このような状況に鑑み、当協会としては溶接界へ貢献するとともに、日本の製造業発展のため各種施策を早期に実行することが急務となっている。そこで、総合企画会議では一部中長期計画も含め、現在実施中または現在計画中の具体的活動計画を「日本溶接協会の活動方針」として一つに纏め、協会一丸となるとともに関連各団体と一致協力して活動の推進に当たることとした。

 

2. 日本溶接協会の現状分析

活動方針策定に当り溶接界を取り巻く環境の変化を把握した上で日本溶接協会のリスク及び機会をSWOT分析した。活動方針の策定に必要なKFS(成功要因)はクロスSWOT分析で抽出した。

 

2.1 日本溶接協会を取り巻く環境の変化

1)  製造業の一部国内回帰が顕著化している

2)  建築・鉄骨は東京オリンピック以外のビッグプロジェクトもスタートし、今後当分堅調を見込む

3)  少子化に加え高齢化による指導者減少により、今後、溶接技能者不足が常態化する懸念がある

4)  国土交通省の指導により、溶接品質への要求が厳しくなった

5)  認証関係では溶接技能者、溶接管理技術者等の受験者が2年連続で増加し今年度も順調

6)  地方中心に研究・教育機関が減少し、溶接教育が十分にはできていない

7)  溶接技能者は新規受験者の合格率が年々低下している

8)  専門部会・研究委員会活動に活気が見られ始めた

 

3. 日本溶接協会の活動方針

KFS(成功要因)実現のため策定した具体的打ち手を日本溶接協会の活動方針として以下に示す。活動方針の実施スケジュールは別紙資料(日本溶接協会の活動方針実施計画)の通りである。

 

1)  認証事業のサービス・品質向上と効率化で一層の資格普及を図る

・ 認証システムの高度化による受験者サービスの向上

・ 認証システムの高度化による品質向上と事務作業の効率化(コンプライアンスの強化)

・ アジアを中心とした溶接管理技術者認証制度の海外展開

 

2)  広報を拡大し溶接のイメージアップを図る

・ 溶接技術・技能のすばらしさと重要性の一般社会への訴求

・ 広報ツールの作成

・ メディアやイベントの活用

 

3)  溶接技術者・技能者不足に対し人材取り込みを図る

・ 溶接女子を増やし就労人口の減少に対応(外国人、若年者、高齢者活用とパッケージ)

・ 若年者への溶接の魅力の発信

・ 高校生溶接競技会への支援を通じた溶接の普及拡大

・ 外国人活用のためアジアの国を対象としたJIS溶接技能者認証の拡大

 

4)  溶接教育を拡大し技能伝承と溶接品質向上を図る

・ 地方の溶接研究・教育の活性化

・ 溶接技能者教育の開始と普及

・ 技能伝承の強化(マイスター制度、地方ファブへの技術対応)

・ 溶接基礎教育の開始(建築等の必要性が高い業界を対象に関連団体と協力を図り開始する)

 

5)  専門部会・研究委員会の活動が少ない分野(建築業界等)への取り組みを強化、そのニーズを
   把握し対応を図る

・ 上記基礎教育と技能者不足への対応支援

 

6)  学・協会の共同事業で活動の幅を広げ産業界のニーズに応える

・ 学・協会のプラットフォーム構築(JIW)

・ 学・協会の共同事業内容の決定(JIW共同企画委員会)

・ 活動内容の選定(アウトリーチ、イノベーション、AI等)

・ 部会・研究委員会からの体系的な新しい技術の発信

・ 溶接情報センターをより積極的に活用し情報発信活動の推進を図る