1.概要
2024年度は4回の委員会(第309回~第312回)を開催した。そのうち、第310回は委員会の地方開催としての青森開催と六ヶ所フュージョンエネルギー研究所の見学会(写真1参照)を併設した。第312回は特殊材料溶接研究委員会との合同委員会を開催した。2024年度は新規入会2社及び退会1社があり、会員数は45企業・団体となっている。
2.委員会
化学機械分野の製作に関わる材料、溶接、試験・検査、供用中の劣化・損傷評価及び設備保全関連技術などについての調査・研究を委員会事業の柱として運営している。2024年度の委員会での技術発表の概要を、以下の通り示す。
2.1 第309回(2024年6月18日):溶接会館(WEB会議併用)
講演テーマ:化学機械溶接研究委員会の最近の活動
講演タイトル | 所 属 | 氏 名 |
---|---|---|
圧力設備の維持管理基準および特定認定高度保安実施者による保安検査基準の制定について | 出光興産(株) | 鈴木 哲平 氏 |
ENEOS(株) | 増子 敏昭 氏 | |
溶接技術仕様作成WGの発足について | 住友化学(株) | 星加 貴久 氏 |
N2バックシールド適用評価合同小委員会活動紹介 | 東洋エンジニアリング(株) | 長島 英紀 氏 |
ケーススタディ【DSSガイドライン出版WGより話題提供】 | 運営WG |
2.2 第310回(2024年9月19日):青森県観光物産館アスパム(WEB会議併用)
講演テーマ:溶接支援のDX・自動化技術
講演タイトル | 所 属 | 氏 名 |
---|---|---|
溶接における可視化計測技術 | (株)ノビテック | 長谷川 大祐 氏 |
人協働ロボットで実現する自動化技術 | ファナック(株) | 中田 和成 氏 |
シェル&チューブ式熱交換器の管端溶接自動化開発 | 住友重機械工業(株) | 花田 基洋 氏 |
委員による自己紹介 | 運営WG |
2.3 第311回(2024年12月10日):溶接会館(WEB会議併用)
講演テーマ | 所 属 | 氏 名 |
---|---|---|
育成就労制度の概要について | 法務省 出入国在留管理庁 | 青栁 晶子 氏 |
成長のカギとなる溶接人材の育成 | (一社)日本溶接協会 | 水沼 渉 氏 |
AR・VR溶接技能訓練シミュレータの活用のすすめ | 旭エレクトロニクス(株) | 長倉 隆徳 氏 |
海外プロジェクトにおける溶接人材の育成 | 笹口技術士事務所 | 笹口 裕昭 氏 |
委員による自己紹介 | 運営WG |
2.4 第312回(2025年3月18日):溶接会館(WEB会議併用)
特殊材料溶接研究委員会との合同開催
講演テーマ | 所 属 | 氏 名 |
---|---|---|
書籍『二相ステンレス鋼の溶接』について | 千代田化工建設(株) | 岩本 博之 氏 |
特殊材料溶接研究委員会発表:ステンレス溶接金属の極低温破壊靭性と液化水素貯槽への適用性 | 東京大学 | 川畑 友哉 氏 |
特殊材料溶接研究委員会発表:極低温におけるFe-36wt%Ni合金の引張特性におよぼす水素の影響および疲労特性 | 日本冶金工業(株) | 前田 大樹 氏 |
ケーススタディ【非鉄金属の溶接課題】 | 運営WG |
3.幹事会
定例幹事会を委員会(第309回~第312回)の開催日の午前中(第310回のみ1週間前に開催)及び2025年1月22日に開催し、委員会の事業企画、小委員会・WG活動、国際活動計画などの運営について諸検討を行った。また、2024年6月18日に第5回、及び2025年1月7日に第6回常任幹事会を開催して委員会の中長期的な運営方針の検討を行った。
4.小委員会及びWG
4.1 N2バックシールド適用評価合同小委員会(長島委員長)
2024年度は小委員会活動を通じて得られた成果について、次の学協会で公開することでN2バックシールド適用拡大に向けた周知活動を実施した。
- 化学機械溶接研究委員会での発表(6月)
- 配管技術への投稿(9月)
- 日本芳香族工業会での発表(10月)
- 溶接材料部会内での活動報告書発行(12月)
並行してガイドライン執筆に着手、作成方針決定後に3つの班に分かれて執筆を開始、ドラフトを作成した。小委員会は3回開催し、ガイドラインの作成方針協議、同進捗状況の確認、各種情報交換などを行った。
4.2 溶接技術仕様作成小委員会(星加委員長)
2024年度に新たに立ち上げた小委員会である。本委員会の活動目的は、国内で統一されていない溶接技術仕様書の作成であり、作成した仕様書はWESとする予定とした。
仕様書はAPI RP 582の内容をスリム化する一方で、非破壊検査の項目を追加し、さらに国内法規と溶接に関する要求事項についてもまとめることとした。仕様のカテゴリーが多岐に渡っているため、作業を効率に行うべく6つの分科会に分けて活動を行った。
2024年度は小委員会を1回開催し、幹事会を3回開催した。
4.3 運営WG(高橋主査)
委員会の将来ビジョンの検討及び活動テーマの探索を主な活動とし、2024年度はWGを4回開催した。委員会における通常の講演発表のスタイルに加え、技術的に深堀すべきテーマを検討した。具体的には、討議の場としてケーススタディを企画・運営するとともに、委員会活性化のために所属委員の自己紹介を企画、若手技術者の委員会活動への積極的な参加を促す施策についても議論を開始した。
4.4 WES 2820改正WG(戒田主査)
2024年度はWGを9回開催し、昨年度に引き続きWES 2820改正を検討して原案をまとめた。主な活動は次のとおりである。
- WES 2820改正素案について、本体及び附属書(例題)の読み合わせを実施し改正作業を実施した。
- 改正発議書を規格委員会に提出し、受理された。2025年3月12日に第1回改正原案作成委員会を開催した。
- 圧力設備サステナブル保安部会から、第1回 圧力設備自主保安分科会講習会への協力依頼を受け、WGメンバーから講師を派遣した。講習会は、2025年2月20日に開催された。
4.5 溶接補修WG(津野主査)
2024年度に引き続き、「プラント圧力設備溶接補修指針」(CP-0902)の改訂に取り組んだ。委員会内の査読後に、誤字、脱字、体裁等の詳細をWG内でチェックして印刷原稿を準備した。
中野副主査が、2024年11月よりASME PCC-2 SGWR(委員会)のResource Development Groupメンバーとなり、2025年1月より当て板溶接補修に関する212-3.4(Allowable Load on Perimeter Fillet Weld、すみ肉溶接部の許容荷重)の改訂メンバーとして活動を開始した。
4.6 DSS溶接ガイドライン出版WG(岩本主査)
2017年に発行した「二相ステンレス鋼の溶接施工ガイドライン」(CP-1701)から、溶接施工上の主要留意事項を抜き出し、技術的な補足説明を加えた「二相ステンレス鋼の溶接-溶接施工のかんどころ-」A5版ハードカバー書籍を2024年4月25日付で発行した。2024国際ウエルディングショーで公開した。
4.7 海外活動WG(戒田主査)
2024年度はWGを2回開催し、圧力設備技術に関わるASME、APIなどの情報を共有し、本委員会の海外活動への展開について議論した。
- ASME Sec. VIII, Div. 1改正状況をWG内で共有し内容を確認した。シャルピー衝撃試験の再試験条件の変更などについて議論した。
- 関連国際会議の最新動向がWGで紹介された。旧NACE及びSSPC(The Society for Protective Coatings)が合併して設立されたAMPP(The Association for Materials Protection and Performance)の会議内容をWGで共有するとともに、AMPPにおける腐食防食関連の規格制定活動などの報告があった。
4.8 圧力設備の溶接設計施工テキスト講習会検討WG(大原主査)
第2回 圧力設備の溶接設計施工テキスト講習会を2025年3月6日~7日にかけて、対面及びWEBのハイブリッド形式で開催し、64名の参加者があった。質疑応答が活発に行われた。
4.9 情報化WG(松下主査)
本委員会のこれまでの発表資料を整理・分析し、溶接情報センターへ提供可能なアーカイブ化コンテンツの検討を行った。この成果は、本委員会の将来活動展開に役立てることを決定した。
5.他部会との活動
圧力設備サステナブル保安部会の傘下で設置されたWES 9801・WES 9802原案作成委員会へ委員長及び委員を派遣し、2024年7月1日に両規格が制定・発行された。
