2025年度事業報告

1.本部会並びに幹事会

 鉄鋼部会はわが国の鉄鋼の溶接に関する技術の向上並びに普及を図ることを目的に、破壊・疲労などに関する研究動向の把握及び海外も含めた調査を行うとともに、最新の技術・情報を反映した規格化及び標準化活動を推進している。

1.1 本部会並びに技術委員会活動内容

 本年度は対面形式により部会総会を行い、2024年度の事業報告、決算報告並びに監査報告を行った。また、2025年度の事業計画案を審議して、これを了承した。

1.2 本部会・幹事会活動内容

(1) 委員会の活動状況の確認、調整

 幹事会では、2022年度から活動を継続している2つの委員会の活動に関し、意見交換、研究対象及び研究内容の具体化のための活動推進を行った。

(2) 規格改正

 規格委員会からのJIS、ISO、WES規格等に関する審議依頼に対応して、鉄鋼部会としての意見を取りまとめ、回答した。
 WES定期見直しに関し以下の対応を実施した。
  WES 1108:2025(亀裂先端開口変位(CTOD)試験方法)は改正
  WES 3009:2025(溶接割れ感受性の低い高張力鋼板の特性)は改正
  WES 1104:2025(インプラント形溶接割れ試験方法(追補1))は追補改正
  WES 3003:2025(低温用圧延鋼板判定基準(追補1))は追補改正
  WES 3008:1999(鋼板及び平鋼の厚さ方向特性)は廃止
 上記に関連して、
  英訳版WES 3003:2025(Evaluation Criterion of Rolled Steels for low Temperature Application (Amendment 1))を追補改正
  英訳版WES 1108:2016(Standard test method for crack-tip opening displacement (CTOD) fracture toughness measurement)は廃止
  英訳版WES 3009:1998(Supplementary Requirements for High Strength Steel Plates with Low Susceptibility to Cold Cracking)は廃止

(3) 他専門部会・特別研究会及び他学会との連携

 規格委員会幹事会・本委員会

 規格委員会幹事として幹事会及び本委員会に参加し、種々の規格の制定及び改正原案並びに定期見直しに関する議論を行った。

 JPVRC(日本圧力容器研究会議)

 JPVRCは、日本鉄鋼協会が材料部会を、日本高圧力技術協会が設計部会を、日本溶接協会が施工部会を担うことによって3協会3部会で構成されている。鉄鋼部会として参加し、3部会および溶接協会内での情報交換を行った。

2.研究委員会

2.1 WES2805改正委員会

 WES 2805(溶接継手のぜい性破壊発生及び疲労亀裂進展に対する欠陥の評価方法)は、溶接継手の割れや欠陥からのぜい性破壊、及び疲労亀裂進展による損傷とぜい性破壊への移行に対する評価方法を規定した規格である。本委員会はWES 2805の構成の全面改正も視野に入れて活動を開始し、2022年度は、鉄鋼部会CRB委員会(CTOD Requirement for Butt joint、2018年から2021年にかけて活動)の知見など関連する最新の研究成果の整理や、ユーザーアンケートによるニーズ把握を行った。2023年度は、CTOD駆動力曲線の整備ならびに極厚継手溶接部へのシャルピー靭性と破壊靭性の相関式の適用性検討を重点課題に据え、ワーキンググループ(WG)をそれぞれ設置して改正に向けた具体的検討を開始した。2024年度は、CTOD駆動力曲線の整備(WG-A)において、ひずみ集中を有する部材のCTOD駆動力曲線を算定する新しい手法(2カーブ法:平板モデルと局所高拘束モデルを用いたCTOD駆動力曲線算定法)を提案するに至った。また、シャルピー靭性と破壊靭性の相関式拡張(WG-B)において、CRB委員会とRTW委員会のデータを基に極厚継手溶接部に対するWES 2805の相関式の適用の妥当性を検証し、改正時に反映させることとした。
 2025年度は、提案した2カーブ法の実継手への適用性の検討に注力し、表面亀裂を有する突合せ溶接継手およびすみ肉溶接継手の弾塑性FEM解析を実施して精度検証と課題抽出を行った。また、実験による検証のための継手の設計と製作を進め、次年度以降の実験準備を整えた。

2.2 建築高強度鋼(780N/mm2級鋼)アンダマッチング継手研究委員会

【BUH委員会(Building application of Undermatching joint for High strength steel)】
 建築構造物の柱構造への高強度鋼(780N/mm2級鋼)普及のネックを解消することを目標として、母材より強度が低く溶接施工性の良い溶接材料を用いたアンダマッチング継手(軟質溶接継手)採用を促進するため、大学、ゼネコン、設計事務所、ファブリケータ、溶材メーカー、鋼材メーカーなど多方面から委員を募り、2022年度に活動を開始した。
 2022年度は、検討内容を四面BOX柱の角溶接部の構造性能評価と溶接割れ評価に絞り込み、構造性能WGと溶接施工WGの2つのワーキンググループを設置した。
 2023年度は、構造性能WGにおいて、アンダマッチング溶接で組み立てられた溶接組立箱形断面接合部パネルのせん断挙動を検討するために、建築研究所の実験設備を用いた平面十字形骨組の載荷実験計画を策定した。溶接施工WGにおいて、アンダマッチング多層SAW角溶接の横割れ発生メカニズムを解明するため、板厚85mm、予熱なしの条件で窓形拘束溶接割れ試験を実施した。
 2024年度は、構造性能WGにおいて、角溶接金属強度と母材強度の比を3種類(強度比:0.98、0.87、0.62)とした平面十字形骨組の載荷実験を実施し、3体ともに破断を生ずること無く、十分な耐力・変形能力を発揮することを明らかにした。溶接施工WGにおいて、前年度の窓形拘束溶接割れ試験の結果を分析し、HAZ側の板厚中央付近に横割れを検出した。
 2025年度は、前年度の構造実験で極端なアンダマッチング溶接の試験体が超大変形時に角部に沿った延性き裂を発生したことから、構造性能WGにおいて、アンダマッチング継手のせん断要素試験とその再現FEM解析を実施し、せん断卓越下での延性き裂発生の限界歪を導出した。また、構造実験の結果を取りまとめて日本建築学会構造系論文集に投稿した。
 溶接施工WGにおいて、横割れが検出された溶接部の硬さ試験を実施し、中央偏析と多重熱サイクルによる局所的脆化域の特徴が得られた。窓枠拘束溶接割れ試験の再現FEM解析も実施し、溶接線方向の残留応力が卓越していることが確認され、これらの重畳により横割れが発生した可能性が示唆された。