1.原子力研究委員会
1.1 第169回原子力研究委員会(6月18日:溶接協会)
特別講演「地震に対する性能確保のための耐震設計の考え方」
高田毅士氏 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(国立大学法人東京大学)
1.2 第170回原子力研究委員会および見学会(10月31日:東北電力(株)女川原子力発電所)

1.3 原子炉圧力容器の加圧熱衝撃に対する新しい破壊評価技術
ー塑性拘束を考慮した破壊評価基準の社会実装-(第58回国内シンポジウム)の開催
(9月30日開催:ハイブリッド開催)

1.4 原子力プラント機器の健全性評価に関する講習会の開催
(12月10日・11日開催:ハイブリッド開催)

2.小委員会
2.1 国際連絡小委員会
2025年4月16~18日にわたり台湾、台南市で開催された第15回ASINCO国際ワークショップ「International Workshop on the Integrity of Nuclear Components」の実施・運営に協力した。原子力研究委員会傘下の小委員会の協力を仰ぎ、基調講演1件および論文7件の講演発表をサポートした。また、講演論文の中から学術的価値の高い論文を選定し、International Journal of Pressure Vessels and Pipingの特集号の発刊作業を進めた(https://www.sciencedirect.com/special-issue/10MTK218M3R)。 2027年4月に韓国、慶州市で開催予定の第16回ASINCO国際ワークショップの企画立案に協力してその準備を進めた。
2.2 SPN-Ⅱ小委員会
「原子力構造機器の経年化とその関連技術に関する調査研究」
2012年度までは、原子力プラント機器の構造健全性、経年劣化に関連する分野の動向を幅広く把握するために、文献抄訳、講演を通した動向調査を進めてきた。さらに、東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故後は、大地震などに代表される過大荷重下での機器やプラントの健全性を評価するための手法の整備や適用の動向をメインの対象とした調査活動を行ってきた。また、2016年度からは延性破壊評価のための弾塑性解析に関するガイドラインの作成を目的として、応力-ひずみ関係式や限界ひずみ評価式に関する検討を進めてきた。
2025年度は5回の委員会を開催し、昨年度までと同様に、講演及び文献抄訳を通じて上記分野の技術動向を調査するとともに、上記ガイドラインの作成に向けた検討を進めた。体制を以下に示す。
・主 査 :高橋由紀夫((一財)電力中央研究所)
・委 員 :10機関、13名
活動の概要を以下に示す。なお、本小委員会は2025年度をもって終了となった。
(1)講演及び文献による調査
・5回の講演が行われた。テーマは、延性破壊挙動評価、機械学習、固体力学シミュレーション技術、 原子炉圧力容器の照射脆化メカニズム、クリープ疲労試験技術であり、各分野の動向が紹介された。
・文献調査では設計疲労線図や機械学習に関する5つの論文を調査した。
・今後の調査対象の検討に資するために、雑誌「International Journal of Pressure Vessels and Piping」を対象とした調査を行い、材料、評価対象、国などの項目別に動向を整理するとともに、特に機械学習・ニューラルネットワーク・AI関係の論文リストを作成した。
(2)弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドラインの検討
延性破壊評価のための弾塑性解析に関するガイドラインへの導入を念頭において、降伏応力、引張強さ、破断伸び、絞りなどの機械的特性を用いた真応力-真ひずみ関係式の整備に加え、応力三軸度とロード角を用いて塑性変形抵抗に対する損傷の影響や局部破壊の発生を考慮する延性破壊評価法の検討を実施した。それらの検討結果を基に、応力-ひずみ関係式、損傷評価式ならびにこれらに含まれる材料定数の決定法について、ガイドライン案を作成した。
2.3 PFM小委員会
「原子力構造機器信頼性評価への確率論的破壊力学の適用法に関する調査研究」
我が国における確率論的破壊力学に関する研究は、日本溶接協会および日本機械学会の研究委員会等で30年以上にわたり行われている。我が国においては、維持基準導入など、破壊力学の適用は進んではいるが、確率論的取り扱いについては検討が始まろうとしているに過ぎない。一方、コロナ禍により一般大衆の確率的事象に対する理解度の向上が期待され、地球温暖化およびウクライナ危機・中東危機に伴う世界的エネルギー状況への不安から、原子力発電への期待が大きくなっていくものと思われる。
このような状況の中、今年度は、確率論的評価法の信頼性を高めること、および適用分野の拡大、さらには解析手法のガイドライン化などを目的として、原子炉重要機器の破壊確率解析、PFM解析結果の表し方、PFM解析プラットフォーム整備、および文献調査などの活動を行なった。さらに、PFM技術の理解促進を目的として作成した、基礎と最新動向に関する講演動画についてもPFM小委員会のHPより一般公開しており、有効活用が望まれる。
2.4 BDBE2小委員会
「設計基準外事象の評価と対策に関する調査研究小委員会(BDBE2小委員会)」
今年度新たに、文科省原子力システム事業「構造対策とシステム安全対策の連携による不確定性の大きい事象の合理的リスク低減法の研究(2025年度~2029年度予定)」が採択されたことから、本事業を推進しつつ事業の一環として、システム安全の専門家も加えた「構造対策とシステム安全対策の連携に関する調査研究小委員会(BDBE2小委員会)」を発足させた。
(1)目的
原子力分野では、構造対策は専ら設計想定事象に対する破損防止に適用され、深層防護に基づく設計想定を超える事象による破損発生後の影響緩和はシステム安全対策の領域とされ、両者の思想や手法は別々のものであった。自然現象に代表される不確定性の大きい事象に対して、破損防止に頼ったリスク低減策は、過大なマージンをとった際限のない強化につながり、技術的限界に近づきつつある。このため、不確定性の大きい事象に対して、影響緩和を重視した合理的なリスク低減法が必要とされている。
このため、構造の破損発生後にも期待できる影響緩和性能の評価法を開発し、構造対策による影響緩和の効果をリスク評価とシステム安全対策に組み込む(連携)ことで、影響緩和を重視した合理的リスク低減の方法論・技術を提案することである。本小委員会では、文科省事業を推進しつつ、その一環として「構造対策とシステム安全対策の性能ベース連携に関するガイドライン」の策定を目的とした調査研究を行う。
(2)体制
主査:笠原直人(東京都市大学) 副主査:望月正人(大阪大学)
幹事:堂崎浩二(東北大学)、釜谷昌幸(原子力安全システム研究所)
委員:中立委員18名・委員8名 事務局:3名
(3)実績
本委員会 2回開催(対面1回、オンライン1回)
講演「現象の連続性や時間効果をリスク評価で考慮するための研究」東大 高田孝教授
文科省原子力システム事業「構造対策とシステム安全対策の連携による不確定性の大きい事象の合理的リスク低減法の研究」の進捗報告と推進のための議論
WG 3つのWGを各1回開催
WG1 連携方法論:構造対策とシステム安全対策連携の方法論の検討
WG2 過大地震:過大地震時の連携に必要な影響緩和性能評価法の検討
WG3 超高温:超高温の連携に必要な影響緩和性能評価法の検討
2.5 CAF-Ⅱ小委員会 幹事会
「塑性拘束効果を考慮した破壊評価基準の確立検討小委員会 PhaseⅡ」
2018年度~2022年度に実施したCAF小委員会では、延性亀裂を伴うへき開破壊が生ずるDBTT(延性-脆性遷移温度)領域において、塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法の適用性を検討した。実構造物と同程度の拘束度を持つ浅い表面亀裂付き平板試験片を例に取り上げ、従来の破壊力学が持つ過度の保守性を排除して耐破壊安全性を合理的に評価できることを検証した。また、解析ツールの汎用化を目的に、ベンチマーク問題を設定して解析機関間の評価結果の有意差を極力抑えるような解析条件設定法を検討した。これらの成果をもとに、中性子照射を受ける原子炉圧力容器を対象として、塑性拘束補正係数χを導入した破壊評価ガイドラインを策定した。
後継のCAF-II小委員会(2023年度〜2024年度)では、ガイドラインを社会実装するため、原子炉圧力容器のPTS(加圧熱衝撃)事象での脆性破壊に焦点を絞って規定内容の標準化と利便性向上を図り、ガイドラインの規格化に向けた検討を行った。
2025年度は、CAF-II小委員会幹事会がCA、F/CAF-II委員会成果の社会実装を具体的に促進するため、次の活動を実施した。
(1)CAF/CAF-II小委員会成果を各種産業界規格で引用できるように、一般公開資料を作成し,溶接協会HPで公開した。
(2)CAF/CAF-II小委員会成果を広く産業界に知らしめるため、原子力研究委員会の第59回シンポジウムとして「原子炉圧力容器の加圧熱事象に対する新しい破壊評価技術-塑性拘束を考慮した破壊評価基準の社会実装-」を企画し、2025年9月30日に開催した。オンライン聴講者を含め57名が参加し、活発な質疑応答がなされた。
2.6 DHI-Ⅲ小委員会
「デジタル打音検査技術の高度情報化に関する調査研究小委員会(PhaseⅢ)」
原子力発電所の高経年化が進み、設備保全の観点から配管・アンカー等の溶接部・接合部の構造健全性を簡便に診断する技術が望まれている。2019年度に活動を開始したDHI小委員会第一期では、デジタル打音検査技術に関する調査研究WGと高度情報化検討WGによる調査研究を行い、基礎ボルト検査方法、金属/コンクリート間の界面状態検査方法に関するガイドライン案を作成した。2022年度に開始した第二期では対象範囲を広げ、各種センサ技術による高度情報化(オンラインモニタリング等)の調査研究を行ってきた。2024年度から開始した第三期ではこれまでの活動を引き継ぎデジタル打音検査技術のガイドライン案を整備・拡張すると共に、それらの技術に人工知能を活用した場合の高度情報化技術のガイドライン案の検討、社会実装に向けてインフラ維持管理分野での地方自治体との連携、デジタル打音検査に係る技術文書の公開などを行うこととしている。具体的な活動成果は以下となる。
(1)調査研究WG
デジタル打音検査に係る事例収集、各種センサ技術の高度情報化に関する調査、沖縄県土木事務所との連携によりコンクリート橋梁経年劣化のデジタル打音検査などを継続的に実施した。公開する技術文書として「デジタル打音検査技術の基礎と応用」に基礎理論、ガイドラインを含む利用法、利用事例などを取り纏めて、ガイドラインに関連する論文の英文ジャーナルへの投稿を進めた。
(2)高度情報化WG
異常検知AIの文献調査、AIの工学応用に関する研究動向の報告、デジタル打音検査の機械学習による状態予測手順のガイドライン化を継続して実施している。
2.7 FQA3小委員会 幹事会
「Q&A方式による疲労知識の体系化に関する調査研究」
FQA3小委員会は既に委員会活動を終了し、FQA3の成果として取り纏めた「過去の疲労小委員会の成果」「疲労に関するQ&A集」「疲労に関する重要知識」を、溶接協会のHPで「疲労ナレッジプラットフォーム」(以下、「疲労ナレッジ」という)として公開している。
2024年度から、原子力研究委員会より活動費の支援を受け、「疲労ナレッジ」の維持、管理と最新情報の反映というこれまでのFQA3小委員会幹事会の活動に加え、電力殿からの委託研究の獲得を目指した提案活動を実施した。また、これらの活動推進、議論のため、幹事会をおよそ2ヶ月に1回の頻度で開催した。
2025年度の活動状況は以下の通りである。
(1)過去の疲労小委員会の成果 について
2025年度は、「設計疲労線図の策定に係る調査(Phase Ⅳ)」(DFC4小委員会)の成果に関し、各メーカの若手メンバが中心となって過去の「疲労研究小委員会の成果」としてPPT形式に纏めた。本資料は協会内での準備が整い次第「疲労ナレッジ」にて公開する。なお、この活動は、資料を纏める作業を通じて若手への技術伝承の一助にもなっていると考える。
(2)疲労に関するQ&A集 について
「疲労ナレッジ」に公開しているQAシートの出版化については2024からの活動を継続、推進し、2025年度に出版を完了することができた。収録されているQ&Aは全107問であり、原子力分野のみならず、他の産業分野にも活用してもらえる内容に纏めており、十分な成果を挙げたものと考える。
(3)疲労に関する重要知識
2025年度はQ&Aシートの出版化や電力若手疲労研修会、疲労研究の電力共研委託に向けた活動に注力したため、本活動は行っていない。
(4)電力若手疲労研修会の開催
昨年度に引き続き、FQA小委員会成果の社会活動への活用推進と疲労研究の重要性を理解頂くことを目的として、「疲労ナレッジ」に纏めた内容を中心に、若手技術者を対象とした無料の疲労研修会を開催した。今年度は電力会社に加え、石連・石化分野にも開催案内を配信したことで、去年度を6名上回る41名の参加があった。活発な議論を通して、疲労に係る知識向上に寄与できたものと考える。
(5)AM材の疲労研究と電力共研委託に向けた活動
今後原子力設備への適用が期待されるAM材に関し、昨年度に引き続きATENAにAM材の疲労研究提案を継続し、正式に採択が決定した。これにより2026年度から電力共研委託としてNuCAM小委員会が発足した。
上述したように、FQA3小委員会幹事会では、FQA3小委員会の活動で纏めた「疲労ナレッジ」での「疲労研究小委員会の成果」、「疲労に関するQ&A集」、「疲労に関する重要知識」の維持管理および最新情報の反映の活動を行い、当初の目的を達成した。また、Q&A集の出版も完了した。さらに、原子力発電設備の安全性向上に資する活動として、今後適用が期待されるAM材の疲労研究が必要と考えられることから、電力共研委託を提案し採択が決定した。こうした成果を踏まえ、FQA3小委員会幹事会の活動は2025年度をもって終了した。
2.8 FDF-Ⅲ小委員会
「繰返し荷重下での低サイクル疲労および延性破壊に対する評価法の整備に関する調査研究
(その3)」
これまでFDF/FDF-Ⅱ小委員会では、規格への反映を目的として、J積分範囲ΔJを用いた亀裂進展評価法に関するガイドラインの整備を進めてきた。このガイドラインは、CT試験片及び貫通亀裂付き配管の試験データを用いて整備されたものである。しかしながら、実機では表面亀裂に対する需要が高く、ガイドライン(案)の規格化には表面亀裂に対する評価精度の確認など、いくつかの課題があると考えられた。
そこで2022年度はFDF-Ⅲ小委員会準備会を設立し1年間の準備期間を設けた。そのうえで、J積分範囲ΔJを用いた亀裂進展評価法の規格化に向けて、課題整理、方針策定及び評価法検証に資する表面亀裂付き配管に対して低サイクル疲労亀裂進展試験を実施した。これらの準備結果を基に、2023年度よりFDF-Ⅲ小委員会を設立した。同小委員会では、文献調査、参照応力評価式の高精度化及び数値解析を実施し、小規模降伏条件を逸脱したときの亀裂進展評価ガイドラインを精緻化することで、10年続いたFDF小委員会の活動を締めくくった。主な成果を以下に示す。
(1)J積分評価に関する既往研究調査
FDF-Ⅱ小委員会で策定した「J 積分範囲ΔJ を用いた亀裂進展評価法のガイドライン(案)」は、主として直管に発生した亀裂に地震荷重が作用することを想定した評価法である。適用荷重を熱応力、適用部位をエルボなどに広げるために文献を調査した。一次応力と二次応力が重畳した場合のJ積分値の評価法やエルボのJ積分値に関して有益な知見を得た。
(2)参照応力評価式の高精度化と適用範囲の明確化
FDF-Ⅱ小委員会では、J積分やJ積分範囲評価の観点から、代表的な亀裂を有する構造部材に対する参照応力式の評価を行い、その有効性に対する見通しを得ていた。これらの式は、有限要素解析の結果を基にして、下界定理により得られた極限荷重式に対して補正を加えたものであった。しかし、補正のための式の根拠については明らかにされていないため、より精度よい評価式の提案を行い、その適用範囲も明らかにした。これらの検討結果を反映して、J積分範囲を用いた疲労亀裂進展の評価ガイドライン(参照応力法を用いた簡易評価)を作成した。
(3)繰返し複合荷重下での低サイクル疲労及び延性破壊に対する解析手法の検討
低サイクル疲労及び延性破壊に対する評価法の整備を目的として、準備会で実施した周方向表面亀裂付き配管の亀裂進展試験の有限要素法トレース解析を複数機関で実施した。各機関からの報告を比較検討した結果、有効なモデル化やGeneration Phase解析手法とそれらの問題点が明らかになり、各参加機関における要素寸法や構成則のパラメータ決定法をまとめた。これらの検討結果を反映して、J積分及びΔJによる繰返し荷重下での低サイクル疲労亀裂進展解析のガイドラインを作成した。
今後は策定したガイドラインの規格化を確実に遂行するため、2026年度は幹事会として活動を継続する。10年続いたFDF小委員会では、徐々に世代交代も進み、技術の伝承が図られた。小委員会の重要な目的の一つは、若手の育成である。一度活動を終了してしまうと、再開時の人選が困難となることから、電力殿へのご意見も伺いつつ、新規テーマの模索も試みる。




