1. 本部会
車両部会は、鉄道会社、車両メーカ、溶接材料/溶接機器メーカ及び材料メーカを会員として「鉄道車両製作における溶接技術の研鑽、溶接品質の向上」を目的に、アルミ車体溶接研究委員会、鉄・SUS車体溶接研究委員会及び台車溶接研究委員会の三研究委員会体制で活動している。
本年度は、2024年6月7日に部会総会を開催し、各委員会の活動報告と活動予定について審議・承認した。活動内容は、次項「2.委員会」の通りである。
また、同総会終了後は、(株)ダイヘン 門田圭二氏より「溶接から成る積層造形装置の開発」をテーマとしてご講演いただいた。金属積層造形の中でアーク溶接を用いた手法に関して、積層造形に適したアーク溶接およびその制御方法、積層造形のシステム・ソフトについて説明頂き、参加者一同大いに知見を深めることができた。
2. 委員会
(1)アルミ車体溶接研究委員会
2024年度は委員会を4回開催した。主な活動内容として、2022年度からの継続審議である「SCC対策」の取り組み、並びに今年度各社から起案されたアンケート調査「溶接施工に関するデータ収集とその活用方法」及び「アルミ溶接環境に関わる調査」を審議した。
「SCC対策」については8月の委員会開催に合わせ(株)UACJ及び(一社)軽金属溶接協会の協力で、SCCについて材料とメカニズムに関する講義を実施し、解説、質疑などを通じてSCCに関する知見を大いに深めた。
「溶接施工に関するデータ収集とその活用方法」アンケートでは、各社自動設備の施工ログ、稼働ログデータなどを収集しているところが多いものの、その活用方法については不具合発生時の原因究明などに限定されており、今後は設備保全及び工程管理に活かしていきたいとの意見が大半であった。
「アルミ溶接環境に関わる調査」アンケートでは、特にシールドガスに関する管理方法について各社特徴が出ていた。また、近年では溶接職場の環境改善として夏場の酷暑対策について各社が積極的に取り組んでいることが分かった。
本年度の異業種交流会(見学会)は、12月に(株)UACJ 名古屋製造所(愛知県)を訪問した。板材の圧延から熱処理にかけての工場及び押出し形材の押出工場を見学し、製造方法、設備などの説明を受けた。工場見学後には全般の質疑応答が行われ、一同大いに知見を深めた。また、R&Dセンター内U-AI Lab.にてアルミ材料及び製品における近年の技術や展示を視察した。
また、特許委員会へ委員を派遣し、「溶接注目発明賞(JWES)」及び「特許庁長官賞」審査委員会に参画した。

(株)UACJ 名古屋製造所(愛知県)(2024.12.13)
(2) 鉄・SUS車体溶接研究委員会
2024年度は委員会を4回開催した。3回の溶接会館及び委員会社の工場見学会を実施した。
活動内容は各社から起案されたアンケート調査であり、「構体製作工程におけるリーク確認アンケート」、「溶接焼け取りに関するアンケート」及び「車種切替時の段取り替えについてのアンケート」について審議した。
「構体製作工程におけるリーク確認アンケート」では、水密を確保する必要がある溶接箇所におけるリーク確認方法について調査した。確認部位としては屋根上の溶接部及び妻構体が主な確認箇所で、確認方法は、エアブロー/バキューム/散水と各社が工夫していることがわかった。
「溶接焼け取りに関するアンケート」では、各社の構体製作時の溶接個所における溶接焼け取り方法について調査した。各社、基本的に電解研磨による焼け取りを実施しているが、研磨性能・作業性の向上を目的に独自の工夫がなされていた。再研磨時は電解研磨だけでなく固形の研磨剤を使用するなどの見栄えに配慮していることがわかった。
「車種切替時の段取り替えについてのアンケート」では、各社の車種切替時に発生する段取り替えについて調査した。各社、同様のステージに対して同じ設備を持っている傾向が見られ、これら設備の内段取り及び外段取りの内容に大差は無かった。ポータブルスポット溶接機及びNCスポット溶接機については各社、様々の工程(台枠、側構体、屋根、妻構体及び構体結合)で使用されていた。
委員会社の工場見学会は、(株)総合車両製作所 新津事業所(新潟県)のSUS車製造工程を見学し、製造における方法、考え方などについて意見交換する事で今後の各社での取り組みの参考になった。
4回の活動とは別に、規格委員会 薄板接合技術小委員会(ISO/TC 44/SC 6対応)に幹事会社から委員を派遣し、車両製造の視点における情報収集した。

(株)総合車両製作所 新津事業所(新潟県)(2024.12.13)
(3) 台車溶接研究委員会
2024年度は委員会を4回開催した。昨年度からの継続テーマであった「ロボットオペレータの技能教育管理」及び「溶接スラグの剥離について」のアンケート結果について、継続審議を行い、結果をまとめた。
本年度は3件のテーマ「VR、ARの活用」、「加熱温度と強度への影響」及び「溶接外観の管理レベル」について各社の実態や管理状況のアンケートを取りながら審議した。
「VR、ARの活用」については各社取組み状況の審議を行うと同時に委員会と並行してデモ機を用いた実演を合計3回開催(Seabery社、(株)IHI、コベルコ溶接テクノ(株)及びLincoln Electric社の4社)し、今後の溶接工育成の参考とすべく情報収集した。
「加熱温度と強度への影響」については、各社加熱矯正に関する作業実態の調査(作業手順、温度管理など)のアンケートを実施するとともに、試験片を用いて各温度における加熱・水冷後の母材強度及び焼割れ発生有無調査、並びにSRによる加熱矯正部の組織・強度変化の調査を行い、加熱矯正標準の指標とした。
「溶接外観の管理レベル」については、各社の溶接外観基準、基準の引用元などについてのアンケートを行い、意見交換を行うとともに管理レベルの実態を確認した。
その他、安全衛生・環境委員会への委員派遣は継続している。
3. 三研究委員会合同委員会
今年度は2025年2月13日、14日の2日間で開催し、日本製鉄(株) 九州製鉄所 戸畑地区及び日産車体九州(株)(両方とも福岡県)の工場見学、並びに三研究委員会合同委員会を実施した。
日本製鉄(株)では、会社及び九州製鉄所の概要をビデオ、並びに資料で説明された。続いて、高炉での銑鉄の製造工程、生産は停止していたが熱延工程を見学した。工場への入退場は門に設置された監視カメラで全員の顔を確認して厳重な管理がなされていること、原材料から銑鉄、各種鉄鋼製品を製造する過程、設備の維持管理などについて見学、意見交換することができ、委員一同大いに参考となった。
日産車体九州(株)では、会社概要についてビデオ及び資料で説明された。続いて、2班に分かれてフレーム車のフレーム組立工場、車体館及び組立館を見学した。フレーム車とモノコック車との異なる構造を持つ車体の組み立てを同一ラインにて流すことができるように、分岐・合流を効率よく繰り返すライン構成であり、また、面積を最小限にしたコンパクトなラインとなっており、非常に効率化された工場であった。見学後の質疑応答では、ラインへの配膳、溶接歪の考え方、ロボット溶接のティーチングなどについて活発な意見交換を行った。
また、三研究委員会合同委員会では、各研究委員会の活動状況報告などが行われた。

日本製鉄(株) 九州製鉄所 戸畑地区(福岡県)(2025.2.13)

日産車体九州(株)(福岡県)(2025.2.14)