Iron and Steel Division

2021年度 活動報告

1.本部会及び幹事会

鉄鋼部会はわが国の鉄鋼の溶接に関する技術の向上並びに普及を図ることを目的に、破壊・疲労などに関する最近の研究動向の把握及び海外も含めた調査を行うとともに、最新の技術・情報を反映した規格化及び標準化活動を推進している。

1.1 本部会並びに技術委員会活動内容
本年度は新型コロナウイルス影響により部会総会をWEB 形式で行い、2020 年度の事業報告、決算報告並びに監査報告を行った。また、2021 年度の事業計画(案)を審議し、これを了承した。

1.2 本部会・幹事会活動内容
1.2.1 委員会の活動状況の確認、調整
幹事会では、委員会の活動に関し、意見交換、進捗フォロー並びに活動推進を行った。また、来年度からの新たな研究委員会の立ち上げに向け、技術委員や外部機関との意見交換や情報収集などを通して研究対象及び研究内容の具体化を推進した。

1.2.2 規格改正
規格委員会からのJIS、ISO、WES 規格等に関する審議依頼に対応して、鉄鋼部会としての意見を取りまとめ、回答した。
2021 年度WES 5 年見直しに関し、今回対象となる鉄鋼部会担当のWES 2808(動的繰返し大変形を受ける溶接構造物のぜい性破壊性能評価方法)及びWES 3001(溶接用高張力鋼板)の2 件について「確認」とした。また、WES 3003(低温用圧延鋼板判定基準)について、前回改正において誤記があった箇所について正誤票を発行した。WES 1108(亀裂先端開口変位(CTOD)試験方法)について、誤記訂正などへの対応を協 議し、2023 年度に小委員会を設置して改正を進めることとした。

1.2.3 他専門部会・特別研究会及び他学会との連携
(1)日本海事協会との連携
2018 年に立ち上げた日本海事協会との2 つの共同研究「国際標準化に向けた極厚鋼板アレスト安全性に関する研究(ATE5 委員会)」と「極厚鋼板突合せ溶接継手のCTOD 要求値に関する研究(CRB 委員会)」を、日本海事協会と実験結果に関する意見交換を行いながら、2021 年度も継続した。
(2)溶接情報センター
日本溶接協会溶接情報センターHPの整備、コンテンツの活用、広報活動、各種申請のWeb申請受付システム等について議論を行った。
(3)JPVRC(日本圧力容器研究会議)
JPVRC は、日本鉄鋼協会(材料部会)、日本高圧力技術協会(設計部会)、日本溶接協会(施工部会) の3 協会3 部会で構成されており、この3 部会および溶接協会内での情報交換を行った。

1.3 CTE委員会
本委員会では、溶接継手のCTOD 試験に関し、試験片への疲労亀裂導入方法やポップインの評価方法などに関する検討を行い、現在指針であるWES 1109:1995(溶接熱影響部CTOD 試験方法に関する指針)を規格として改正し、ISO 15653 と並ぶ試験規格として整備することを狙いに研究活動を行ってきた。
昨年度までに、逆曲げ推奨条件の考案のため、1)母板限界CTOD 評価に及ぼす逆曲げ・疲労亀裂長さ条件の影響、2)疲労亀裂前縁形状に及ぼす逆曲げ荷重の影響、3)種々条件の逆曲げ後と標準的プラテン時の限界値評価、4)ポップイン判定基準の見直しに関し、実験並びに数値解析モデルによる検討などを行った。
その結果にもとづき規格改正原案作成委員会を立ち上げWES1109 改正案の検討を進め、本年度において、規格委員会での審議を経て10 月に改正版を発行した。

1.4 ATS委員会(ATE5委員会)
極厚鋼板アレスト安全性に関し、日本海事協会と検討のフェーズに応じてATE1~ATE4 委員会と称して共同研究を行ってきた。
ATE3 委員会「極厚鋼板の必要アレスト靭性に関する研究」及びATE4 委員会「温度平坦型試験(CAT 試験)によるアレスト靭性評価に関する研究」は2018 年に終了したが、新たに日本海事協会との共同研究をATE5 委員会「国際標準化に向けた極厚鋼板アレスト安全性に関する研究」として2018 年7 月に立ち上げた。
ATE5 委員会では、大型コンテナ船のハッチサイドコーミングに使用される極厚鋼板(板厚80~90mm)おける必要Kca 値の明確化、船体構造設計の許容応力上昇に伴う必要Kca 値への影響調査並びに停止ぜい性亀裂からの亀裂再発生の検討を行ってきた。
昨年度までに、極厚鋼板(板厚80~90mm)おける必要Kca 値の明確化、並びに停止ぜい性亀裂からの亀裂再発生の検討までを完了している。
本年度は、残る課題である船体構造設計の許容応力上昇に伴う必要Kca 値への影響を明確化し、これまでに得られた成果を最終報告書として纏めた。

1.5 CRB委員会
日本海事協会より、大型コンテナ船のハッチサイドコーミングや強力甲板等の縦強度部材に使用される板厚50mm を超える極厚鋼板の突合せ溶接継手のCTOD 要求値の明確化に関し、日本溶接協会をプラットフォームとした共同研究の提案があり、CRB 委員会「極厚鋼板の突合せ溶接継手のCTOD 要求値に関する研究」として2018 年7 月に立ち上げた。
本委員会では、大型コンテナ船を対象とした板厚50mm 超え100mm 以下の極厚鋼板突合せ溶接継手部に対するCTOD クライテリオン設定要領の検討を行ってきた。
昨年度までに、各種の溶接継手におけるぜい性破壊特性の調査、並びに、数値解析を通してCTOD 要求値(CTOD 駆動力曲線)及びぜい性破壊試験による切欠き材でのCTOD 限界値の評価法の検討を進めた。
本年度は、溶接継手試験結果に基づくディープノッチ試験と3 点曲げ試験による限界CTOD 値の対応関係を明確化するとともに、CTOD 要求値及びCTOD 限界値への溶接残留応力など影響因子の取扱いに関する検討を加えて評価法を構築し、それら成果を最終報告書として纏めた。

                                                                                                                      以上