Atomic Energy Research Committee

活動状況

2019年度(令和元年度)活動状況

原子力研究委員会
1.本委員会
1.1 第157回原子力研究委員会(2019年5月28日開催)
       特別講演「高速炉開発に関する技術戦略」
       笠原直人氏(国立大学法人東京大学 教授)
1.2新しい設計疲労曲線と疲労解析に関するシンポジウムー産業を超えた合理的な共通基盤の構
       築に向けてー(2019年6月27日開催)
1.3 原子力プラント機器の健全性評価に関する講習会の開催(2019年12月10日・11日開催)
1.4 第158回原子力研究委員会(2019年11月15日~16日開催)
         見学会の実施:(株)日本原燃 再処理工場他 (2019年11月15日開催)

 

    写真:(株)日本原燃 六ケ燃PRセンター

2.小委員会
2.1 国際研究連絡小委員会
2018年4月に台湾花蓮で開催された第12回原子力機器健全性に関する国際ワークショップ(International Workshop on the Integrity of Nuclear Components)における講演論文のうち、学術的価値が高いと思われるSelected Paper 8編(日本からの3編を含む)を国際ジャーナルInternational Journal of Pressure Vessels and Pipingの特集号(Vol.179、2019年8月)として公刊した。
2020年4月に韓国ソウルで開催予定であった第13回原子力機器健全性に関する国際ワークショップに向け、主催国と共同してその準備を進めるとともに、国内での講演論文の募集、選定を行った。招待講演一件を含む計九件の講演発表がなされる予定であったが、コロナウイルス感染防止対策に伴う各国の措置を踏まえ、ワークショップの開催が一年延期されることとなった。
現在進行中の国際研究に関する情報提供の一貫として、OECD/NEAのうち、原子力安全研究を統括するCSNI(Committee on the Safety of Nuclear Installations)委員会傘下で、構造機器の健全性と劣化を扱うWGIAGE(Working Group on Integrity and Aging of Components and Structures)における活動状況を企画検討会および拡大企画検討会で報告し、関連小委員会の主要メンバと海外の最新の研究動向について情報の共有を図った。 

2.2 SPN-Ⅱ小委員会
        「原子力構造機器の経年化とその関連技術に関する調査研究」
2012年度までは、原子力プラント機器の構造健全性、経年劣化に関連する分野の動向を幅広く把握するために、文献抄訳、講演を通した調査、検討を進めてきた。東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故後、原子力研究委員会内に発足した臨時委員会(東日本大震災後の原子力を考える会、主査:吉村東大教授)からの提言や規制委員会発足等の周辺状況を踏まえ、2013年度からテーマを転換して、大地震、津波などに代表される過大荷重下での機器やプラント全体の健全性を評価するための手法の整備や適用の動向をメインの対象とした調査活動を行っている。
2019年度は4回の委員会(時間は原則13:30~17:00)を開催し、昨年度までと同様に、文献抄訳、講演を通じて上記分野の技術動向を継続調査した。また、弾塑性解析と局所ひずみ評価に基づく健全性評価ガイドライン作成に向けた検討を行った。体制を以下に示す。
・主 査 :高橋由紀夫((一財)電力中央研究所)
・委 員 :13機関、17名
活動の概要を以下に示す。
(1)講演及び文献による調査
・「Strain Based Model for analyzing Ductile Crack Initiation and Tearing」と題した
講演(講師:Korea大Kim教授)にて、ひずみベースモデルを用いた解析による延性亀裂発生及び破壊挙動に関する研究成果についての紹介があり、延性破壊挙動解析の動向に関する理解を深めた。
・「原子力規制庁における破壊評価法開発の動向」と題した講演(講師:三菱重工北条委員)にて、原子力規制庁の安全研究報告(中間)「重大事故時の原子炉格納容器の終局的耐力評価に関する研究」で引用されているJournal of Pressure Vessel Technologyの論文の損傷力学解析に関する論点について紹介があり、損傷力学解析手法の動向に関する理解を深めた。
・Gursonモデルによる試験片の延性破壊挙動解析、英国規格R6のローカルアプローチ法、せん断破壊へのGursonモデル拡張、応力三軸度とロード角への依存性を含む新しい降伏モデル、加重平均法を用いて真応力-真ひずみ関係を算出する方法、炉心溶融シビアアクシデント時のRPV下鏡壁損傷に関する熱構造計算ツール開発についての文献の調査により、構造物の破壊挙動とその評価法についての理解を深めた。
(2)弾塑性解析に基づく健全性評価ガイドラインの検討
各種材料の応力-ひずみ関係式のモデル化について、原子力プラントに使用されている4
種の材料で製作された環状切欠き付き丸棒試験片に対するベンチマーク解析結果の追加分析を行った。また、応力-ひずみ関係式タイプIの修正版を用いた平滑丸棒試験片のFEM再解析結果から、「初期不整」を考慮したタイプⅠ修正モデルの適用性が示され、ガイドラインに採用する方針とした。さらに、ガイドライン策定を目指して、限界ひずみの設定についても検討を進めた。

2.3 PFM小委員会
       「原子力構造機器信頼性評価への確率論的破壊力学の適用法に関する調査研究」
我が国における確率論的破壊力学に関する研究は、日本溶接協会および日本機械学会の研究委員会等で20年以上にわたり行われている。維持基準導入など、破壊力学の適用は進んではいるが、まだ、確率論的取り扱いが広く議論されるまでにはいたってはいない。一方、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故の発生以来、原子力の安全性への関心が高まっており、発生頻度の極めて低い事象の扱いが必要となることから、確率論的評価法への期待は大きくなって行くと思われる。
このような状況の中、今年度は、確率論的評価法の信頼性を高めること、および適用分野の拡大、さらには解析手法のガイドライン化などを目的として、原子炉圧力容器の破壊確率評価の標準化、BWR原子炉圧力容器のPFM評価コード整備、PFM解析プラットフォーム整備、社会インフラ診断への適用などの活動を行なった。また、電子書籍として日本溶接協会のHPで公開しているPFM解説本の英語版・日本語版の改訂作業を開始した。

2.4 FDF-II小委員会
       「繰返し荷重下での低サイクル疲労および延性破壊に対する評価法の整備に関する調査研究(その2)」
設計加速度を超えるような巨大地震により、機器に弾塑性挙動が発生した場合の健全性評価や破壊の評価方法は確立されていない。また、エルボやティ継手等を有する配管は、引張、曲げ、ねじりが重畳する複合荷重状態となる。このため、複合荷重下の試験データの整備、及び弾塑性挙動を想定した数値解析評価技術の整備が重要である。
本小委員会では、FDF小委員会に引続き、2019年度から3年間にわたり、繰返し荷重下の低サイクル疲労及び延性破壊に対する評価法の整備を進め、文献調査、数値解析を実施して、小規模降伏条件を逸脱したときの破壊力学的手法、及びその簡易的手法の調査、検証を実施する。これらの知見をまとめてガイドライン化及びJSME規格等への反映を目指す。今年度の成果は以下のとおりである。
(1)J積分評価に関する既往研究調査
・引張と曲げが作用する円筒の周方向貫通亀裂に対しては、最適化された参照荷重を用いることにより、J積分や亀裂開口変位を評価することができ、GE/EPRI法よりも精度が高い。
・半径/菅厚比の異なる厚肉円筒に対しては、無亀裂での限界荷重を適切に設定することで、内圧、引張及び曲げが作用する周方向及び内圧が作用する軸方向亀裂に対する限界荷重を同一の式により精度良く推定することができる。
(2)参照応力評価式の調査
J積分簡易評価法として参照応力法に注目し、以下の検討を実施した。
・ガイドラインに優先的に取込む参照応力評価式の対象として、表面亀裂付平板、周方向表面亀裂付円筒、軸方向表面亀裂付円筒及び周方向貫通亀裂付円筒を選定した。
・それぞれの対象亀裂について、複数のJ積分評価式の比較及びFEM等の詳細解析結果との比較を実施し、精度及び適用範囲等について検討した。
(3)MDF小委員会における亀裂進展試験に対するJ積分評価
・ステンレス鋼についてηファクタ法及び参照応力法によるJ積分評価の結果、亀裂角度が60°の場合にはモードⅠ及びモードⅡともに両者はよく一致した。
(4)小規模降伏条件を逸脱したときの破壊力学的手法の調査と数値解析による検証
ステンレス鋼の1TCT試験片のモードI繰返し負荷試験及び周方向貫通亀裂付配管の繰返し負荷試験に対する解析を実施した。
1TCT試験片のトレース解析に関しては、
・複合硬化則を適用し、0.8Pmax条件の単調負荷条件で求めた引張特性データを基に構成式のパラメータ決定法を検討した結果、同条件の荷重―荷重線変位関係のヒステリシス曲線をほぼ再現した。
・0.8Pmaxと同じ構成式のパラメータを用いた0.9Pmaxの試験の再現解析では試験結果との一致度がやや低下したが、0.7Pmaxに対しては比較的よく一致した。
・解析結果から得られた亀裂進展速度は、JSME維持規格の疲労亀裂進展速度とほぼ同程度か、やや低かった。
周方向亀裂付配管の繰返し負荷解析に関しては、
・CT試験片と同様の応力-ひずみ関係及び数値解析手法により、解析の実施が可能である。
・全体サイズに比べて厚さが相対的に薄いため、相当塑性ひずみが破壊に対して優位に寄与し、応力三軸度は亀裂が進展しても変化しない点がCT試験片と大きく異なる。

次年度も引き続き検討を進め、J積分及び亀裂進展評価法を高精度化して実構造物を対象としたガイドライン案を検討する予定である。

2.5 BDBE小委員会
     「設計基準外事象の評価と対策に関する調査研究小委員会」
「設計基準外事象の評価と対策に関する調査研究小委員会(BDBE小委員会)」は、「設計基準外事象(BDBE)」に対する安全性向上に向けた構造・材料分野の考え方を整理し、コンセンサスを醸成することと、それを実現するための新しい技術を調査検討することを目的として活動している。最終的には、「設計基準外事象(BDBE)」対する評価と対策に関するガイドラインを提案することを目指している。
2019年度は、文部科学省原子力システム研究開発事業「破壊制御技術導入による大規模バウンダリ破壊防止策に関する研究」研究成果ならびに内外の関連する研究の調査を通して、以下の活動を行った。
(1)BDBEに対する考え方と要求性能
昨年度までに調査した、外部専門家意見、最新の知見、現場ニーズに基づき、BDBEに対する考え方と要求性能を整理した。これに基づき、「設計基準外事象に対する構造強度ガイドライン(仮称)」の骨子を検討した。
(2)BDBE条件下における破損モードの解明と評価法の提案
シビアアクシデント時の高温高圧荷重と、過大地震荷重に対する、破損モードと評価法の研究を進めた。前者に関して課題を共有するSPN-2小委員会から、成果を紹介していただき意見交換を実施した。
(3)破局的破壊の防止と破損後の影響緩和
破壊制御の考え方に基づく破局的破壊防止の考え方を示し、具体例としてシビアアクシデント時の高速炉原子炉容器の破壊制御方策と、過大地震時の軽水炉配管の破壊制御方策を検討した。
(4)国際展開
8月にシャーロットで開催された原子力構造力学会議(SMiRT25)にて特別セッション「Actual system failure sequences and mechanisms under extreme loadings」を開催し、4年後の日本開催SMiRT会議に向けて、BDBEに関するコンセンサス醸成と規格化への道筋を作った。

2.6 IET小委員会
        「原子炉圧力容器の中性子照射脆化予測法の妥当性に関する調査研究」
本小委員会では、特に中性子照射脆化メカニズムに精通した専門家を集めて、照射脆化に関する国内外の最新知見を調査し、脆化予測法改定案の導出プロセスや検証プロセスについて、国内外の中性子照射脆化に係る研究動向等を踏まえて、最新知見に基づき予測法としての的確性について議論する。2019年度は計2回の小委員会を開催し、3つの実施項目のうち、「(2)脆化予測法改定案に対する技術的知見等に基づくレビュー」及び「(3) 脆化予測法改定案の係数最適化におけるプロセスの適切性の議論」の活動を主に実施すると共に、活動期間が終了することを踏まえてこれまでのIET小委員会の活動成果を最終報告書(案)として取りまとめた。
具体的には、2018年度までの議論結果を踏まえて、最終的な脆化予測法改定案に対する各委員の意見を集約すると共に脆化予測法改定案を適用した際の遷移温度移行量の計算結果の補正や考慮するマージンなどの運用面の取り扱いについても議論を進めると共に、係数最適化のプロセスについても第3者検証等の取り組みについて紹介を受けた。議論の結果、最終的な脆化予測法改定案に対する各委員の意見や今後さらに照射脆化メカニズムと整合した予測法へと見直していく上での研究課題を明確にすることができた。また、2017年度から2019年度の3ヶ年に渡る活動の成果を最終報告書(案)(今後、溶接協会HPにて公開予定)に取りまとめた。

2.7 CAF小委員会
        「塑性拘束効果を考慮した破壊評価基準の確立検討小委員会」
本小委員会では、実構造物の健全性評価で重要となるDBTT(延性-脆性遷移温度)領域において、延性亀裂成長を伴う劈開破壊が生ずる破壊モードに対し、塑性拘束度を考慮した破壊評価手法の整備を検討する。
本小委員会の活動計画を策定し、以下の活動を行うこととした。
(1)塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法の調査
(2)塑性拘束度の異なる破壊試験と破壊評価の適用性の検討
(3)破壊評価手法の整備と規格化提案の検討
(4)国内外機関との情報交換・情報収集
2019年度は、計3回の小委員会、6回の合同WGを開催し、以下の活動を行った。
(1)塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法の調査
塑性拘束効果を考慮した脆性、延性、及び遷移温度領域での破壊評価法に関し、2018 年度に引き続き、文献調査を継続的に推進すると共に、表形式で文献の記載内容を項目ごとに整理した。原子力規制庁(NRA)では、重大事故時の原子炉格納容器の終局的耐力評価に関するプロジェクトが進行中であり、応力多軸度を考慮した終局強度評価法の確立を目指している。このため、合同WG においてNRAの招待講演を開催し、NRA が検討中の評価手法の理解を深めた。最新の研究動向として大阪大学では、マクロボイドが形成し始めるひずみを応力多軸度とLodeパラメータの関数として評価する損傷モデルを提案し、検討が進められている。
(2)塑性拘束度の異なる破壊試験と破壊評価の適用性の検討
C(T)試験片を対象としたベンチマーク解析を実施した結果、亀裂先端近傍の応力-ひずみ状態、及びWeibullパラメータmをデフォルト値としたWeibull応力は解析参加者間でほぼ一致した。一方、最尤推定法による収束計算で得られたmには参加者間で差があり、多くが100前後となった。これは文献で通常報告されている10~50よりかなり大きな値であり、引き続き原因分析を進める。また、GTNモデルのパラメータを一定値とした場合のC(T)試験片の延性亀裂進展ベンチマーク解析を実施したところ、参加者間で解析結果がよく一致した。
本委員会で実施する破壊試験の材料(SQV2A)を決定し、材料組織確認試験、引張試験、シャルピー衝撃試験、及びC(T)試験片による破壊靭性試験の一部を実施した。これまでの結果では、材料に異方性はなく、破壊靭性のばらつきもマスターカーブ法による下限5%及び上限95%の信頼区間に収まった。
2020年度に実施予定の表面亀裂付平板破壊試験片のトレース解析に備え、既実施の半楕円表面亀裂付平板引張破壊試験片を対象としてベンチマーク問題を設定し、モデル作成に着手した。

2.8 DHI小委員会
        「デジタル打音検査技術の高度情報化に関する調査研究小委員会」)
原子力発電所の高経年化が進み、設備保全の観点から配管・アンカー等の溶接部・接合部の構造健全性を簡便に診断する技術が望まれている。一方で情報通信技術の発展に伴い各種センサー装置、シミュレーション、人工知能が発展を遂げており、従来から簡便な設備点検技術として幅広く利用されてきた打音検査をこれらの先進技術と統合することでデジタル化・情報化し、広く事例データベースを整備することにより、点検員の技量・経験に依存せず定量的・客観的な判断に資する技術として確立することは非常に有益であると考えられる。上記の背景のもとに本小委員会はデジタル化された打音検査を対象とし、その事例データベースの整備、シミュレーション技術、人工知能化に係る調査研究を行い、最終的には、デジタル打音検査に関するガイドライン案を提案するため、2019年度より活動を開始した。2019年度は、以下の活動を行った。
(1)デジタル打音検査技術の現状と課題の整理
これまでのデジタル打音検査技術の動向をまとめるとともに、デジタル打音検査技術のガイドライン化に向けた検討を基礎ボルト検査、金属/コンクリート界面状態検査のそれぞれについて行った。
(2)実地事例の収集と評価
原子力プラントを対象としてケミカルアンカー検査、埋込金物検査について事例をまとめ、現状を議論、評価した。溶接分野、道路、橋梁、トンネル等についても事例収集を行った。関連技術として光学振動計測技術を用いた点検技術の動向調査を行った。また、2019年8月5日に採択された国土交通省建設技術研究開発助成制度課題「デジタル打音検査とAI・シミュレーションの統合的活用によるコンクリート内部構造診断の実現」の産学官テーマ推進委員会として助言等を行うとともに、事例やモックアップ試験結果を共有することとした。
 (3)デジタル打音検査シミュレーションのデータベース化と人工知能による学習の検討
デジタル打音検査シミュレーションシステムの検討を行うとともに、人工知能によるシミュレーション結果の学習において十分な教師データが得られない場合のデータ拡張等について検討を行った。