Atomic Energy Research Committee

活動状況

2020年度(令和2年度)活動状況

1.原子力研究委員会
1.1 第159回原子力研究委員会(コロナウイルス感染症のため書面審議)
1.2 第160回原子力研究委員会(10月23日:ハイブリッド開催)
特別講演「原子力イノベーションの追求」
     舟木健太郎氏 (経済産業省 資源エネルギー庁 国際原子力技術特別研究員)
1.3 原子力プラント機器の健全性評価に関する講習会の開催(12月2日・3日開催:ハイブリッド開催

2.小委員会
2.1 国際研究連絡小委員会

   日本、韓国、台湾で隔年持ち回りで開催している原子力機器健全性に関する国際ワークショップ(International Workshop on the Integrity of Nuclear Components)の第13回目は2020年4月に韓国ソウルで開催の予定であったが、コロナウイルス感染防止対策に伴う各国の措置を踏まえ、ワークショップの開催時期を一年延期することとした。その後、コロナ禍の収束が見通せないことに加え、人的な交流が物理的に制限されていることを勘案して、本ワークショップを2021年4月にオンラインで開催することを2021年1月に決定した。これを受け、日本からの講演論文が予定通り講演されることを確認するとともに、必要に応じて論文内容をアップデートした。2021年3月にオンライン開催された運営委員会(International Steering Committee)に参加し、ワークショップの開催に向けた諸準備を進めた。
2.2 SPN-Ⅱ小委員会「原子力構造機器の経年化とその関連技術に関する調査研究」
  2012年度までは、原子力プラント機器の構造健全性、経年劣化に関連する分野の動向を幅広く把握するために、文献抄訳、講演を通した動向調査を進めてきた。さらに、東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故後は、原子力研究委員会内に発足した臨時委員会(東日本大震災後の原子力を考える会)からの提言や周辺状況を踏まえ、2013年度からテーマを転換して、大地震などに代表される過大荷重下での機器やプラントの健全性を評価するための手法の整備や適用の動向をメインの対象とした調査活動を行っている。また、2016年度からは「弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドライン」の作成を目的として、応力-ひずみ関係式や限界ひずみ評価式に関する検討を進めている。
  2020年度は5回の委員会(時間は原則13:30~17:00)を開催し、昨年度までと同様に、文献抄訳と講演を通じて上記分野の技術動向を調査するとともに、弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドラインの作成に向けた検討を進めた。体制を以下に示す。
・主 査 :高橋由紀夫((一財)電力中央研究所)
・委 員 :13機関、16名
活動の概要を以下に示す。
(1)講演及び文献による調査
・「水素・酸素混合ガスの爆轟に対する配管健全性評価手法」(講師:日立製作所根布氏)、「衝撃現象に係る解析の現状技術と課題」(講師:日本原子力開発機構西田氏)、「衝撃荷重の計測:スプリット・ホプキンソン棒法による衝撃変形試験の基礎」(講師:防衛大山田教授)の3回の講演により、衝撃荷重に対する構造健全性評価に関する理解を深めた。
・「Investigation of Temperature Dependence of Weibull Parameters of the Beremin Model in Ductile-brittle Transition Temperature Region」と題した講演(講師:三菱重工北条委員)により、損傷力学解析手法に関する理解を深めた。
・Gursonモデル、GTNモデルなどの損傷力学モデルによる延性破壊シミュレーション、せん断応力場におけるボイド挙動、延性破壊挙動に及ぼす応力三軸度及びLode角パラメータの影響、RPVノズルコーナー亀裂に対するワイブル応力解析などをテーマとした9つの文献を調査し、損傷力学モデルによる延性破壊評価法及び延性破壊挙動に及ぼす応力多軸性の影響についての理解を深めた。
(2)弾塑性解析に基づく構造健全性評価ガイドラインの検討
構造健全性評価ガイドラインへの導入を念頭において、真応力-真ひずみ関係式の見直し、各種材料(SUS316、SQV2A、NCF600、SN400)の応力-ひずみ関係についてのFEM解析による検討、ビデオ撮影によるくびれ発生以降の変形状態の確認、応力多軸状態での限界ひずみに関する検討などを行った。
2.3 PFM小委員会「原子力構造機器信頼性評価への確率論的破壊力学の適用法に関する調査研究」
  我が国における確率論的破壊力学に関する研究は、日本溶接協会および日本機械学会の研究委員会等で20年以上にわたり行われている。維持基準導入など、破壊力学の適用は進んではいるが、まだ、確率論的取り扱いが広く議論されるまでにはいたってはいない。一方、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故の発生以来、原子力の安全性への関心が高まっており、発生頻度の極めて低い事象の扱いが必要となることから、確率論的評価法への期待は大きくなって行くと思われる。
   このような状況の中、今年度は、確率論的評価法の信頼性を高めること、および適用分野の拡大、さらには解析手法のガイドライン化などを目的として、原子炉圧力容器の破壊確率評価の標準化、BWR原子炉圧力容器のPFM評価コード整備、PFM解析プラットフォーム整備、社会インフラ診断への適用などの活動を行なった。また、2019年末から広がった新型コロナウィルス感染拡大に伴い、不確定な危険性に対する対応の必要性が全世界的に広まっている。このような状況下での意思決定に確率論、あるいは確率的な考え方が必要とされていると考え、本小委員会からのメッセージを如何に伝えていくべきか、について議論を行なった。
2.4 FDF-II小委員会
「繰返し荷重下での低サイクル疲労および延性破壊に対する評価法の整備に関する調査研究(その2)」

設計加速度を超えるような巨大地震により、機器に弾塑性挙動が発生した場合の健全性評価や破壊の評価方法は確立されていない。また、エルボやティ継手等を有する配管は、引張、曲げ、ねじりが重畳する複合荷重状態となる。このため、複合荷重下の試験データの整備、及び弾塑性挙動を想定した数値解析評価技術の整備が重要である。
本小委員会では、FDF小委員会に引続き、2019年度から3年間にわたり繰返し荷重下の低サイクル疲労及び延性破壊に対する評価法の整備を進め、文献調査および数値解析を実施して、小規模降伏条件を逸脱したときの破壊力学的手法、及びその簡易的手法の調査、検証を実施する。これらの知見をまとめてガイドライン化及びJSME規格等への反映を目指す。今年度の成果は以下のとおりである。
(1)J積分評価に関する既往研究調査
昨年度に続きJ積分簡易評価法に関する6件の文献を追加調査した。
(2)参照応力評価式の調査および整備
J積分簡易評価法として参照応力法に注目し、J積分の予測精度を評価するため、手法整備検討WGと数値解析手法検討WGとが連携して、代表的な構造である表面亀裂付平板、周方向表面亀裂付円筒および軸方向表面亀裂付円筒について、べき乗塑性体、ステンレス鋼および炭素鋼に対するSwift式等様々な構成式の下でのJ積分のFEM解析に着手した。また、参照応力解や全面塑性解の相互比較を行い、さらにFEM解析結果が得られたものについてはそれとの比較を行った。周方向表面亀裂付円筒についてはこれらの解が比較的よく一致することを確認した。
(3)MDF小委員会における亀裂進展試験に対するJ積分評価
炭素鋼小型円筒試験片の軸力下における繰返しJ積分および亀裂進展挙動について、ファクタ法および参照応力法による再評価を実施し、ステンレス鋼との挙動の違い、また、荷重制御と変位制御とでの挙動の差異について明らかにした。
(4)小規模降伏条件を逸脱したときの破壊力学的手法の調査と数値解析による検証
複数の機関でステンレス鋼の1TCT試験片のモードI繰返し負荷試験及び周方向貫通亀裂付配管の繰返し負荷試験に対する解析を実施した。
1TCT試験片のトレース解析に関しては、下負荷面モデル(橋口モデル)の適用により弾性から弾塑性へ滑らかに遷移することなどがわかり、解析手法の改良を図った。
周方向貫通亀裂付配管の繰返し負荷解析に関しては、亀裂進展のトレース解析を実施し、得られたda/dN-J関係が試験と概ね一致した。その一方で、ローラーの支持条件の設定や応力三軸度の影響の考慮にが検討課題であることがわかった。
Gursonモデルを用いるアプローチでは、Complete Gursonモデルの応用により、同定が必要なパラメータを減らすことができ、またGTNモデルを修正した降伏関数(LPDモデル)を用いることで移動硬化則の適用が可能となった。
(5)過大繰返し荷重下の亀裂進展評価法ガイドライン(案)
JSME規格を参考としてガイドラインの構成(案)を作成した。J積分範囲の評価は参照応力法に基づく簡易評価と、数値解析に基づく詳細評価の二段構成とした。
次年度も引き続き検討を進め、J積分及び亀裂進展評価法を高精度化して実構造物を対象としたガイドライン案を検討する予定である。
2.5 BDBE小委員会「設計基準外事象の評価と対策に関する調査研究小委員会(BDBE小委員会)」
「設計基準外事象(BDBE)」に対する安全性向上に向けた構造・材料分野の考え方を整理し、コンセンサスを醸成することと、それを実現するための新しい技術を調査検討することを目的として活動している。最終的には、「設計基準外事象(BDBE)」対する評価と対策に関するガイドラインを提案することを目指して、以下の課題に取り組んでいる。
(1)BDBEに対する考え方と要求性能
(2)BDBE条件下における破損モードの解明と評価法の提案
(3)破局的破壊の防止と破損後の影響緩和
(4)国際展開
委員会の開催頻度は3回/年程度とし、文部科学省原子力システム研究開発事業の進捗報告と評価、及び各課題に精通した方の講演により調査を行っている。
主査:笠原直人(東京大学) 副主査:望月正人(大阪大学)
幹事:堂崎浩二(原子力安全推進協会)、宮崎克雅(日立製作所)
委員:中立委員11名・委員8名 事務局:3名
2020年度は、文部科学省原子力システム研究開発事業「原子炉構造レジリエンスを向上させる破損の拡大抑制技術の開発」が新たに採択されたことから、本事業の外部評価と、その成果の一般化と社会実装を目的とした以下の活動を行った。
(1)BDBEに対する考え方と要求性能
外部専門家意見、最新の知見、現場ニーズに基づき、ガイドラインの目次検討と、設計基準内事象に対する通常の設計との関係整理を行った。これに基づき、「設計基準を超える事象に対する設備集合強度ガイドライン」の骨子を検討した。
(2)BDBE条件下における破損モードの解明と評価法の提案
原子力システム事業「原子炉構造レジリエンスを向上させる破損の拡大抑制技術の開発」の令和2年度成果について評価し、次年度の進め方についての助言を行った。
(3) 国際展開
BDBEに関しては、IAEAやCNSCの関心が高く原子力構造力学会議(SMiRT)を介して意見交換を行っている。SMiRT26準備の一環として、JASMiRT国内WSが開催され、BDBE小委員会の成果の一部を発表した
2.6 CAF小委員会「塑性拘束効果を考慮した破壊評価基準の確立検討小委員会」
本小委員会では、実構造物の健全性評価で重要となるDBTT(延性-脆性遷移温度)領域において、延性亀裂成長を伴う劈開破壊が生ずる破壊モードに対し、塑性拘束度を考慮した破壊評価手法の整備を検討する。
本小委員会の活動計画を以下のように策定し、2020年度は主に(1)、(2)について活動を行った。
(1)塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法の調査
(2)塑性拘束度の異なる破壊試験と破壊評価の適用性の検討
(3)破壊評価手法の整備と規格化提案の検討
(4)国内外機関との情報交換・情報収集
2020年度は、計3回の小委員会と5回の合同WG(手法検討WG + 解析WG)を開催した。活動内容と主な成果は以下の通りである。
(1)塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法の調査
塑性拘束効果を考慮した脆性、延性、及び遷移温度領域での破壊評価法に関し、2019 年度に引き続き文献調査を継続的に推進し、当初計画した文献調査を完了した。脆性破壊、延性破壊、延性亀裂発生・成長を伴う脆性破壊のそれぞれの破壊モードに分類して、キーワードごとに得られた知見を整理した。来年度は調査結果を分析し、有用な情報を小委員会の活動に取り入れる。
(2)塑性拘束度の異なる破壊試験と破壊評価の適用性の検討
塑性拘束の低い試験体として亀裂深さ/厚さ比が1/10の半だ円表面亀裂付き平板試験体を選定した。引張負荷及び曲げ負荷による予備破壊試験を実施し、本試験体の脆性破壊試験温度(T1)を-120℃、延性-脆性破壊温度(T2)を-80℃、延性破壊温度(T3)を室温に決定した。曲げ負荷試験はT1で4体、T2で6体、引張負荷試験はT1、T2、及びT3で各1体終了した。なお、温度T2の曲げ試験で2体が最終破断に至らず、その原因として初期亀裂寸法が他の試験体と比較して小さいことが推察された。
拘束効果を考慮した破壊評価法のガイドライン策定に向けて、C(T)、SE(B)、及び表面亀裂付き平板試験体に対し、参加機関間でのベンチマーク解析を行った。その結果、各機関で設定したFE解析モデル及び使用プログラムによる解析結果の違いは軽微であり、有意差のない結果が得られたことが確認された。また、温度T1で、亀裂長さの異なる2種類のSE(B)試験片を用いてToughness Scaling Modelを適用してWeibull パラメータを決定し、Bereminモデルにより平板試験体の曲げ負荷破壊挙動を予測することができた。延性亀裂進展を伴うへき開破壊が生じる温度T2、すなわち延性-脆性遷移温度領域においては、GTNモデルとBeremin モデルを組み合わせたカップリングモデルを適用し、平板試験体の破壊予測を試みた。それによると、カップリングモデルによる予測は有用なものの、95%信頼限界の予測精度に課題があることが分かった。
2021年度は、文献調査結果の分析と、ベンチマーク解析及び残りの平板試験を完了させ、それらの検討結果も踏まえたDBTT領域での破壊の簡易評価手法、及び規格化案の策定に着手する。
2.7 DHI小委員会 「デジタル打音検査技術の高度情報化に関する調査研究小委員会」
原子力発電所の高経年化が進み、設備保全の観点から配管・アンカー等の溶接部・接合部の構造健全性を簡便に診断する技術が望まれている。一方で情報通信技術の発展と普及に伴い、各種センサー装置、シミュレーション及び人工知能などの技術が基盤技術として利用されている。また、これら技術を使った実用化のための研究開発が積極的に行われている。
従来から簡便な設備点検技術として幅広く利用されてきた打音検査をこれらの先進技術と統合することでデジタル化・情報化し、広く事例データベースを整備することにより、点検員の技量・経験に依存せず定量的・客観的な判断に資する技術として確立することは非常に有益であると考えられる。上記の背景のもとに本小委員会はデジタル化された打音検査を対象とし、その事例データベースの整備、シミュレーション技術、人工知能化に係る調査研究を行い、最終的には、デジタル打音検査に関するガイドライン案を提案するため、2019年度より活動を開始した。活動2年目となる2020年度は、以下の活動を行った。
(1)デジタル打音検査技術の現状と課題の整理
デジタル打音検査技術のガイドライン化に向けた検討を継続した。
(2)実地事例の収集と評価
溶接分野、道路、橋梁、トンネル等について事例収集を継続した。また、国土交通省建設技術研究開発助成制度課題「デジタル打音検査とAI・シミュレーションの統合的活用によるコンクリート内部構造診断の実現」の産学官テーマ推進委員会として助言等を行った。
(3)デジタル打音検査シミュレーションのデータベース化と人工知能による学習の検討
十分な教師データが得られない場合のデータ拡張等について継続的に検討を行った。
2.9 DFC3小委員会「設計疲労線図の策定に係る調査(Phase III)」
大気中設計疲労線図の精緻化の検討を行い、新しい合理的な設計疲労線図を構築するべく、原子力研究委員会にDFC(Design Fatigue Curve)小委員会を設置し(DFC小委員会が2011年8月~2013年3月、DFC2小委員会が2013年4月~2016年3月)、新しい設計疲労線図を開発した。DFC2小委員会での成果として、表面粗さ試験結果に対する検討成果からは、表面仕上げ効果係数Ksfを設定することができたが、低~中強度域におけるばらつきが大きいことがわかり、データの拡充が必要であることがわかった。また、疲労強度減少係数と平均応力補正を考慮する順番で設計疲労線図は過度に安全側になる場合があり、これらの考慮の順番を実験により確認する必要があることもわかった
そこで、DFC3小委員会(2019年4月~2021年3月)では疲労線図に与える影響因子である表面仕上げに対し、機械加工による表面仕上げが疲労強度に与える影響について評価手法の精緻化を検討した。また、疲労強度減少係数と平均応力補正の考慮の順番を平滑材に着目して検討した。ここで、炭素鋼STPT370と低合金鋼SQV2A を対象に機械加工表面仕上げ影響試験、並びに疲労強度減少係数及び平均応力補正の影響試験が別途実施され、その試験結果に基づき検討を実施した。
2020年度の成果を含むDFC3小委員会の成果は以下の通りである。
(1)機械加工表面仕上げ影響試験の評価
炭素鋼の断面直径8 mm、低合金鋼の断面直径8 mm及び20 mmの研磨材、Rz = 6.3, 25及び50 μmの表面調査用試験片を対象に、① X線残留応力測定、② 表面粗さ測定、③ 表面プロファイル測定、④ 表面観察、⑤ 断面硬さ分布測定、⑥ 走査型電子顕微鏡(SEM)による断面微細組織観察および⑦ 電子線後方散乱回折(EBSD)による断面分析を実施した。
炭素鋼STPT370について機械加工表面仕上げの影響を調べた結果、目標表面粗さRz = 6.3 μmの試験では疲労強度の明瞭な低下はみられず、これは、Rz = 6.3 μmの加工痕は亀裂発生に対して感度が低く、したがって疲労強度の低下がみられなかったと考えられる。DFC小委員会提案の最適疲労線図に基づき表面仕上げ効果係数Ksfを算出すると、Ksfは疲労寿命依存性を示し、寿命が長くなるにつれて大きくなった。疲労試験は2機関で実施し1本の曲線(回帰式)で研磨材の試験結果を精度よくフィッティングできた。また、表面粗さの影響を受けないと結論したRz = 6.3 μmの試験片を研磨材と同一のひずみ振幅で試験したところ、寿命はほぼ研磨材と一致したことから、回帰式の信頼性は高い。したがって、炭素鋼のKsf算出の基準として回帰式を提案した。
低合金鋼SQV2Aについて機械加工表面仕上げの影響を調べた結果、炭素鋼と同様に、Ksf算出の基準として研磨材に対する回帰式が有効であることを確認した。また、炭素鋼とは異なり、低合金鋼ではKsfの疲労寿命依存性は明確でなかった。
(2)疲労強度減少係数及び平均応力補正の関係性評価
切欠きに平均応力が加わった場合の応力集中部のひずみ挙動を調べるための平板切欠き試験片(低合金鋼SQV2A)を用いた繰返し負荷試験の結果から、弾塑性解析と試験によって確認されたひずみ範囲と荷重の挙動は、比較的よい一致を示し、ひずみ範囲が安定した10サイクル目では試験結果は解析結果の延長上に位置した。
炭素鋼STPT370について、平均応力の影響を調べるために、ひずみ比Rε = 0、0.2および0.6のひずみ制御試験を実施した。すべての試験で、制御ひずみの上限は降伏ひずみ (0.11 %) を超えており、平均応力は試験開始直後から緩和した。Rε = 0および0.2の試験は目標疲労寿命を104~106サイクルの範囲とした比較的高ひずみ振幅で試験を実施したため、平均応力は疲労試験中にほとんど緩和した。このため、疲労寿命はひずみ比依存性を示さず、完全両振り試験 (ひずみ比Rε = −1) とほぼ一致した。一方、Rε =0.6の試験では、平均応力の緩和量もRε = 0および0.2の場合に比べて少なかった。このため、疲労強度はRε= −1のそれよりも低下した。
低合金鋼SQV2Aについて、平均応力の影響を調べるために、ひずみ比Rεをパラメータとした試験が実施された。高ひずみ範囲条件では、ひずみ比Rεによらずシェイクダウンが生じて、ほぼBFCと一致していた。一方、低ひずみ範囲条件では平均応力が残存し、ひずみ比Rεが大きいほど疲労強度が低下する傾向となった。