JIS Z 3282はんだ-化学成分及び形状 改正について
JIS Z 3282はんだ-化学成分及び形状 改正について
平成15年から社団法人日本溶接協会 はんだ研究委員会及びJIS Z 3282改正原案作成委員会において改正審議されていたJIS Z 3282(はんだ-化学成分及び形状)が平成18年3月に公示されました。今回の改正は、主に鉛フリーはんだの種類を追加することを目的として改正審議された件について、改正までの経緯及び主な改正事項を次に示します。
【改正の経緯】
欧州においてWEEE にかかわるEU 指令で有害物質規制(RoHS)が検討されることになり,電気・電子機器メーカーでは,鉛フリーはんだ化への対応が急速に進んだ。2002年6月にIEC/TC 91から日本のIEC/TC 91国内委員会(社団法人電子情報技術産業協会)に電子機器用鉛フリーはんだの組成規格のNP案作成の依頼があり,社団法人日本溶接協会 はんだ研究委員会において鉛フリーはんだの使用状況を調査し,NP案の作成に着手した。
2003年6月に環境JISの一環として鉛フリーはんだの実用化を促進するため,JIS Z 3198シリーズ“鉛フリーはんだ試験方法”が制定され,その試験方法を活用して鉛フリーはんだの特性値を明確にし,また,この規格に追加すべき鉛フリーはんだの組成の選定を行い日本案として2003年11月にIEC/TC 91/WG 3にNP案を提出した。
これと並行してISO/TC 44/SC 12/WG 8においてISO 9453:1990改正審議が始まり,日本からIECへ提出したNP案と同様の鉛フリーはんだ組成をISO/TC 44/SC 12/WG 8へ提案した。
2004年7月のISO/TC 44/SC 12/WG 8パリ会議で日本提案の19種類の鉛フリーはんだ合金を掲載することが合意され,2005年7月にISO DIS 9453:2005として投票が行われ,2005年11月のベルリン会議にて最終的に21種類の鉛フリーはんだ合金が掲載されることになり,ISO FDIS 9453:2006が作成された。
国内においても,ISO 9453:1990改正審議に合わせて,JIS Z 3282の見直しに着手することになった。2003~2005年にかけて,社団法人日本溶接協会 はんだ研究委員会及びJIS Z 3282改正原案作成委員会において,今回の改正に当たっての国際規格との関連及び技術的な面からの検討を行った。日本での鉛フリーはんだの使用実績を考慮して,ISO FDIS 9453:2005に追加されなかった数種類の鉛フリーはんだ合金をJIS Z 3282に追加することが検討されたが,使用者側より材料調達の観点から,ISO FDIS 9453:2005の鉛フリーはんだ合金と一致させることが要望された。また,特許合金については,ISO FDIS 9453:2005でISOが特許権所有者に確認し,実施許諾に応じた合金だけを追加すべきとの意見もあり,ISO FDIS 9453:2005に規定された鉛フリーはんだの合金を,そのままJIS Z 3282に追加することになった。
【主な改正事項】
○定義:
“鉛含有はんだ:固相線温度が450℃未満の溶加材で,すず,鉛を主成分とするはんだ”と,“鉛フリーはんだ:固相線温度が450℃未満の溶加材で,鉛を含まないすず系はんだの総称。ここでは電気・電子機器,通信機器などの実装に使用するすず-鉛系合金に対応した用途の,すず,亜鉛,アンチモン,インジウム,銀,ビスマス,銅からなる鉛分0.10%以下のはんだ”の2種の定義を規定した。
○合金系及び種類:
鉛フリーはんだは11合金系21種類(Sn-Sb系1種類,Sn-Cu系2種類,Sn-Cu-Ag系3種類,Sn-Ag系4種,Sn-Ag-Cu系4種類,Sn-Ag-Bi-Cu系1種類,Sn-Zn系1種類,Sn-In-Ag-Bi系2種類, Sn-Zn-Bi系1種類,Sn-Bi系1種類,Sn-In系1種類)。鉛含有はんだは19種類の両者合わせて計40種類を規定した。なお、今回,ISOでRAND(Reasonable and Non-Discriminative, 合理的かつ非差別的実施許可)の了解を得られなかった鉛フリーはんだの組成については,この規格に規定することを留保し,次回の見直し・改正の際に再検討することとした。
○記号:
はんだの種類ごとの記号は,従来はISOによる名称(Alloy Designation)を“記号1”とし,JISによるH表示を“記号2”としていた。今回の改正で,鉛含有はんだは,市場での利便性を考慮し,鉛含有はんだの種類により不純物レベルの差に応じて,“記号2”にA又はEを付記することにした。また,鉛フリーはんだの“記号2”は,鉛フリーはんだのすずは残部として表示せず,すず以外の構成元素の表示%の対応値を,その元素の略記号に付して表示する元素略記号方式を,簡略化の観点から新規に規定した。元素の略記号を次に示す。
また,鉛フリーはんだの元素略記号に付する構成元素%の対応値の表示は,その元素%の10倍値を表示し,小数点は省略し,小数点の前の数字が0だけの場合は0も省略して表示する。
ex.
Sn95Cu4Ag1 → C40A10
Sn95.8Ag3.5Cu0.7 → A35C7
Sn96.3Ag3.7 → A37
Sn92In4Ag3.5Bi0.5 → N40A35B5
Sn91Zn9 → Z90
Sn95Sb5 → S50
なお、上記の元素略記号による記号は,日本からIEC,ISOに提案したもので,IEC 61190-1-3(Attachment materials for electronic assembly Part 1-3: Requirements for electronic grade solder alloys and fluxed and non-fluxed solid solder for electronic soldering applications)ではショートネームとして採用する方向で審議が進められているが,ISOでは規格本体で採用していない。この規格ではIEC 61190-1-3を引用規格としていないので,ショートネームの表現をとらず元素略記号の表現を用いている。次のISO見直し時に,再度提案する予定である。
○溶融温度:
参考値としての固相線温度及び液相線温度は,鉛含有はんだの場合は従来の値を記載した。ただし,鉛フリーはんだはJIS Z 3198-1 鉛フリーはんだ試験方法-第1部:溶融温度範囲測定方法による測定値を記載すると共に,溶融温度により合金系を高温系,中高温系,中温系,中低温系,及び低温系に分類,記載した。
○化学成分:
主成分の成分範囲と不純物成分に新たにAu,In及びNiを追加規定し,旧規格のSb,Cu及びBiを除いた不純物の合計表示を廃止して,ISOと整合させた。
なお,旧規格では,その他元素としての,Sb, Cu, Biの許容値が合金によって異なっていたため,できる限り元素毎に一つの値に統一した。