Atomic Energy Research Committee

平成29年度活動状況

原子力研究委員会
1.本委員会
(1)委員会開催
原子力研究委員会は傘下の小委員会の研究活動の調整を行うとともに、年2回の委員会開催に際し、講演会と見学会をそれぞれ1回ずつ行ってきた。
本委員会は、原子力構造工学、溶接技術の分野において、研究活動のみならず、技術者の交流、技術情報の交換など多岐にわたった活動を通して、原子力産業界の進歩と発展に努力を重ねてきた。
平成29年6月21日開催の第153回原子力研究委員会では、関西電力(株)原子力事業本部 高経年対策グループ 南 安彦氏より「原子力発電所の長期運転への対策について(高浜1,2号機、美浜3号機の運転期間延長)」と題して特別講演が行われた。
平成29年7月7日には原子力研究委員会設立60周年を記念して、記念シンポジウム並びに60周年記念懇親会を開催した。
平成29年9月29日には、日本原子力研究開発機構 幌延深地層研究センターの見学会及び第154回原子力研究委員会が行われた。

写真:日本原子力研究開発機構 幌延新地層研究センターにて

(2)原子力研究委員会 60周年記念
1.原子力研究委員会60周年記念シンポジウムの開催
第52回原子力国内シンポジウムを60周年記念シンポジウムとして企画、開催した。
・参加者数:102名(関係者、事務局含む)
2.原子力研究委員会60周年記念懇親会の開催・日時:平成29年7月7日(金)18時00分~20時00分・場所:浜松町東京會舘 ゴールドルーム
・出席者数:74名(関係者、事務局含む)
・形式:立食
・表彰状の贈呈:原子力研究委員会の発展にご尽力いただいた方へ「原子力研究委員会功績賞・貢献賞」が授与された。
原子力研究委員会功績賞(2名):小林英男氏、柘植 綾夫氏
原子力研究委員会貢献賞(11名) :朝田誠治氏、伊藤幹郎氏、小川武史氏、
笠原直人氏、川手秀樹氏、関東康祐氏、高橋由紀夫氏、中根一起氏、北条公伸氏、三浦直樹氏、
渡士克己氏(50音順)

写真:60周年記念シンポジウムにて



写真:60周年記念懇親会にて

(3)講 習 会

原子力プラント機器の健全性評価に関する講習会
昭和32年の設立以来、原子力研究委員会では、原子力機器の構造、材料、設計、施工、検査、維持に関連した試験研究を受託し多くの研究成果を挙げてきた。それと並行して、例年これらに関する講習会を開催してきた。
今年度は、強化された設計基準に対応する原子力プラント機器の健全性評価について、2日間の講習会を開催した。
今年度は、「原子力プラント機器の健全性評価に関する講習会」として、2日間講習会を開催した。
初日の講習では、原子力プラント機器の健全性確保の考え方について解説した後、原子力機器の材料、強度設計、プラントの耐震設計について解説した。2日目の講習では、リスク情報の活用のために必要な信頼性工学に基づくアプローチについて紹介し、さらにプラントの長期安全運転のための保全計画と維持について解説した。78名の参加者を得た。

写真:講習会会場にて

2.小委員会
2.1 国際研究連絡小委員会
平成30年4月に台湾で開催される予定の第12回原子力機器健全性に関する国際ワーク ショップ(International Workshop on the Integrity of Nuclear Components)に向け、主催国と共同してその準備を進めるとともに、国内での講演論文の募集、選定を行った。また、第11回国際ワークショップのSelected Paperを国際ジャーナル“International Journal of Pressure Vessels and Piping”の特集号として公刊する作業も引き続き行った。

2.2 SPN-Ⅱ小委員会
        「原子力構造機器の経年化とその関連技術に関する調査研究」
平成24年度までは、原子力プラント機器の構造健全性、経年劣化に関連する分野の動向を幅広く把握するために、文献抄訳、講演を通した調査、検討を進めてきた。東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故後、原子力研究委員会内に発足した臨時委員会(東日本大震災後の原子力を考える会、主査:吉村東大教授)からの提言や規制委員会発足等の周辺状況を踏まえ、平成25年度からテーマを転換して、大地震、津波などに代表される過大荷重下での機器やプラント全体の健全性を評価するための手法の整備や適用の動向をメインの対象とした調査活動を行っている。
平成29年度は5回の委員会(時間は原則13:30~17:00)を開催し、昨年度までと同様に、文献抄訳、講演を通じて上記分野の技術動向を調査した。また、弾塑性解析に基づく健全性評価ガイドライン作成に向けた検討を行った。体制を以下に示す。
・主 査 :高橋由紀夫((一財)電力中央研究所)
・委 員 :14機関、18名
活動の概要を以下に示す。
(1)講演及び文献による調査
・「多軸応力度を考慮した低サイクル疲労評価法」、「き裂進展解析に基づく疲労評価」と題した2件の講演、局所ひずみアプローチに基づく新しい疲労評価法に関する文献の調査により、構造物の疲労挙動とその評価法についての理解を深めた。
・「塑性拘束効果を考慮した性能規定型の合理的構造・材料設計に向けて」と題した講演、福島事故後の重大事故に関する米国エネルギー省原子力エネルギー局(DOE-NE)の取組み、破壊靱性に及ぼす試験片形状や拘束の影響、IVR時のRPV構造健全性評価、損傷力学モデルによる延性破壊予測、に関する7件の文献の調査により、破壊挙動とその評価法についての理解を深めた。
・「原子力プラントの耐震設計-BWRを例として-」と題した講演により、原子力施設・構造物の耐震設計についての理解を深めた。
(2)弾塑性解析に基づく健全性評価ガイドラインの検討
各種材料の応力-ひずみ関係式のモデル化について検討を進めるとともに、局所破損クライテリアも含めたガイドラインの内容、今後の進め方について検討した。


2.3 PFM小委員会
       「原子力構造機器信頼性評価への確率論的破壊力学の適用法に関する調査研究」
我が国における確率論的破壊力学に関する研究は、日本溶接協会および日本機械学会の研究委員会等で20年以上にわたり行われている。維持基準導入など、破壊力学の適用は進んではいるが、まだ、確率論的取り扱いが広く議論されるまでにはいたってはいない。一方、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故の発生以来、原子力の安全性への関心が高まっており、発生頻度の極めて低い事象の扱いが必要となることから、確率論的評価法への期待は大きくなって行くと思われる。
このような状況の中、今年度は、確率論的評価法の信頼性を高めること、および適用分野の拡大を目的として、PTS時の原子炉圧力容器の破壊確率評価の標準化、PFM評価のロバスト性指標、PFM解析コード整備、PFMベンチマーク解析、社会インフラ診断への適用などの活動を行なった。また、電子書籍として日本溶接協会のHPで公開しているPFM解説本の英語版を同HPで公開した。


2.4 FQA小委員会
      「Q&A方式による疲労知識の体系化に関する調査研究(その3)」
平成24年度から開始した疲労ナレッジ(FQA、FQA2)小委員会では、疲労に関する小委員会の成果や重要知識の集約、Q&A集の作成を行い、これらを疲労ナレッジプラットフォームに纏めてWEB公開をしてきた。また、疲労に関する知見と経験を知識化して伝承し、若手技術者の育成にも努めてきた。これらの活動は、原子力発電プラントの安全を今後も維持、発展させていく上で重要である。
そこで、FQA2小委員会の活動を継続したFQA3小委員会を2017年度より2年間の計画で実施している。FQA3小委員会では従来から実施してきた「疲労研究小委員会の成果のまとめ」、「疲労に関する重要知識の共有化」、「疲労ナレッジQ&A集の作成」に加え、新たに「疲労に影響を与える表面性状の知見調査」と「疲労モニタリングに関わる研究、活用動向、解析プログラムの調査」の活動を行っている。
H29年度に得られた成果は以下のとおりである。
 (1) 疲労研究小委員会の成果のまとめ、重要知識の共有化とQ&A集の作成
疲労研究小委員会の成果のまとめの対象を「設計疲労線図の策定に係る調査(PhaseⅡ) (DFC2)小委員会-付録-」とし、本年度は、延性消耗則の調査と小型試験片による疲労試験結果について成果を整理し、知識を委員間で共有化した。また、疲労に関する重要知識の共有化として、専門家を招き、国内軽水炉での疲労モニタリングの取組み状況、時間基準保全と状態基準保全の観点から見た今後の維持規格のあり方の検討内容、火力高温部材の疲労モニタリングの3件の講演会を開催した。さらに、新たに3件(累計で【疲労強度および寿命】が31件、【疲労き裂進展】が19件、【規格関連】が7件)のQ&Aシートを完成させ、原子力研究委員会のHPに作成した「疲労ナレッジプラットフォーム」で公開した。
次年度も、引き続き、既小委員会の報告書を調査して取りまとめ、疲労ナレッジQ&Aを蓄積し、疲労に関する重要知識の共有化を図る。また、これらの疲労に関する知識は、次年度の成果と共に、原子力研究委員会HPの疲労ナレッジプラットフォームでWEB公開する予定である。
(2)疲労に影響を与える表面性状の知見調査
「設計疲労線図の策定に係る調査(PhaseⅡ) 小委員会」で、従来の考えよりも表面性状が疲労に及ぼす影響が大きいことが示唆されたため、文献調査を行なうこととする。今年度は調査すべき10件の論文を抽出し、そのうち6件の調査・抄訳を完了した。次年度は残り4件の論文について調査・抄訳を行い、表面性状が疲労に与える影響について調査結果をまとめる。
(3)疲労モニタリングに関わる研究、活用動向、解析プログラムの調査
安全性、経済性向上の観点から、今後、国内でも導入が進むことが予想される疲労に対する状態基準保全の検討に資するため、国内外の疲労モニタリングの適用事例や評価方法等を調査し、知見を収集、整理する。今年度は、規格・基準、全体動向、解析プログラムの3つの観点から16件の調査対象文献を抽出し、規格・基準、全体動向を中心に9件の文献調査、抄訳を実施した。次年度は7件の文献調査を行い、今後、国内の原子力発電所で疲労モニタリングを進めていく上で参考となる知見を整理する

2.5 FDF小委員会
       「繰返し荷重下での低サイクル疲労および延性破壊に対する評価法の整備に関する調査研究」
巨大地震により設計加速度を超えて,機器に弾塑性挙動が発生した場合の健全性評価や破壊の評価方法は確立されていない。また,エルボやティ継手等を有する配管は,引張,曲げ,ねじりが重畳する複合荷重状態となる。このため,複合荷重下の試験データの整備,及び弾塑性挙動を想定した数値解析評価技術の整備が重要である。
本小委員会では,平成29年度から2年間にわたり,繰返し荷重下の低サイクル疲労および延性破壊に対する手法の調査,検証を実施することとした。今年度の成果は以下のとおりである。
(1) 繰返し荷重下の低サイクル疲労,延性破壊に関する追加文献調査
・参照応力法によるJは,試験片レベルでの有限要素法解析結果より5%低い。
・荷重制御繰条件でのΔJは疲労亀裂成長のクライテリアとして適用可能である。
・亀裂開口比を考慮した参照応力法のΔJは,FEAによる有効ΔJとよく一致した。また、開口亀裂のΔJ -ΔCTOD関係はHRR場により表され,亀裂閉口時にもΔJとΔCTODは関連付けられる。
・国内外規格,ハンドブックに対しK,疲労亀裂進展速度,J積分,極限荷重,参照応力,破壊評価線図等に関する調査を実施し、概要をまとめた。

(2) 小規模降伏条件を逸脱したときの破壊力学的手法の調査と数値解析による検証
1TCT試験片のモードI繰返し負荷試験のトレース解析を実施した。その結果,硬化則のパラメータ決定,有限要素モデル生成,亀裂進展手法等に関する知見を得た。主な成果,課題点は以下である。
・Chaboche則および等方硬化則を用いた複合硬化則のパラメータの決定方法を提案した。
・複合硬化則でも,初期サイクルの荷重の絶対値は試験結果より過大に計算される。負荷回数が増加し,亀裂進展量が大きくなると,解析結果の荷重の絶対値は実測値より小さくなる。・試験最大ひずみ18%で構成則パラメータを決定すると,0.5Pmax条件での解析P -δ曲線は,実験値から乖離する。
・初期亀裂長が荷重-変位曲線に影響することから,進展後の正確な亀裂形状,長さを計測してこれを解析モデルに反映することが必要である。
・大規模塑性域をともなう繰返し荷重負荷条件での亀裂進展速度データを,ΔJで整理すると荷重レベルの影響はほぼ消失し,1本の亀裂進展曲線で表現できる。
・両振り荷重を変動荷重としたΔJにより亀裂進展量を予測すると実験結果より過度に保守的となる。片振り荷重に対するJの4倍をΔJとすると試験結果より非保守側だが差は大幅に小さくなる。
・J積分,損傷力学および他の破壊基準においても定性的な破壊傾向を再現した。
平成30年度も引き続きそれぞれの検討を進めるとともに,ガイドライン化も検討する。

2.6 BDBE小委員会
     「設計基準外事象の評価と対策に関する調査研究小委員会」
 日本溶接協会原子力研究委員会では、2012年度に「東日本大震災後の原子力を考える会」を設置し、その提言や規制委員会等の状況を踏まえ、2013年度からSPN-Ⅱ小委員会におけて、大地震、津波などに代表される過大荷重下での機器やプラント全体の健全性を適切に評価するための手法の整備や適用動向の調査を行ってきた。また、新規制基準および関連する技術に関するシンポジウムを開催しきている。
BDBE小委員会は、これらの活動を発展させ、「異常状態の緩和(第4層)」に対する、構造設計と対策の考え方を整理し、コンセンサスを醸成することにある。次にそれを実現するための新しい技術を調査検討する。最終的には、第4層に対する評価と対策に関するガイドラインを提案することを目指して、平成28年度に発足した。本小委員会は、文部科学省原子力システム事業の外部評価の機能も兼ねており、平成31年度までは文部科学省からの受託研究費で運営される。
今年度の主な活動結果を以下に示す。
(1) 文部科学省原子力システム事業評価
破壊制御技術導入による大規模バウンダリ破壊防止策に関する研究に関する計画と進捗報告を受け、研究の狙いや方向性について意見した。
(2) 海外のBDBEに関する取り組みの調査
米国機械学会(ASME)におけるBDBEに関する取り組みの説明を受け、ASMEの活動は、想定外事象を受けたプラントの再稼働が主目的であるとを理解した。
(3)BDBEに対する構造強度評価の関挙げ方の整理
設計を超える状態(BDBE)に対する構造強度評価と防護対策は、設計状態(DBE)に対する考え方とは大きく異なるものであることから、整理と認識合わせのための議論を行った。

2.7 IET小委員会
     「原子炉圧力容器の中性子照射脆化予測法の妥当性に関する調査研究」
本小委員会では、特に中性子照射脆化メカニズムに精通した専門家を集めて、照射脆化に関する国内外の最新知見を調査し、脆化予測法改定案の導出プロセスや検証プロセスについて、国内外の中性子照射脆化に係る研究動向等を踏まえて、最新知見に基づき予測法としての的確性について議論する。平成29年度は計4回の小委員会を開催し、以下の成果を得た。
(1)照射脆化に関する最新知見の調査
現行の照射脆化管理の枠組みや国内の脆化予測法の考え方について把握すると共に、海外の脆化予測法や国内照射データ(監視試験及び試験炉照射)の統計解析に関する研究内容について調査した。また、照射脆化メカニズムに関する研究動向として、東北大学及び京都大学にて実施された研究内容や国内照射データのアトムプローブ観察結果について調査すると共に、国内の脆化予測法の今後の改善点について議論した。
(2)脆化予測法改定案に対する技術的知見等に基づくレビュー
脆化予測法改定案のうち基本モデル式の改良の方向性及びミクロ組織変化予測式の改定案について調査し、特に照射脆化メカニズムとの整合性の観点から議論を進めた。議論の結果、現状知見がなく改定案に反映できていない点及び今後明らかにすべき課題を明確にすることができた。


2.8 CAF小委員会
「塑性拘束効果を考慮した破壊評価基準の確立検討小委員会」 準備会
本小委員会では,実構造物の健全性評価で重要となるDBTT(延性-脆性遷移温度)領域において,延性亀裂を伴う劈開破壊が生ずる破壊モードに対し,拘束度を考慮した破壊評価手法の整備を検討する。拘束度を考慮した破壊評価手法としては,脆性破壊を対象としたBereminモデルと,延性破壊を対象としたGursonモデル等の損傷力学モデルがあり,国内外でその適用検討が活発に進められている。一方, DBTT域の破壊モードに対しては,モデル構築はもとより,解析手法の整備さえ発展途上である。実用上は実構造物への適用のための評価手法の標準化が待たれている。そこで,本小委員会では,以下の活動を予定している。
(1)拘束度を取り入れた破壊評価手法の調査
(2)拘束度を変えた破壊試験データによる破壊評価の適用性の検討
(3)破壊評価手法の標準化・規格化の検討
(4)国外機関との情報交換・情報収集
活動期間は平成30年4月から平成35年3月までの5年間を予定しており、初年度の平成30年度は,主として国内外の脆性破壊に対するBereminモデル,延性破壊に対する損傷力学モデルの最新研究動向,及び適用事例等を調査し,拘束度を取り入れた新しい破壊力学手法の開発状況を把握する。

平成29年度は,本委員会に先立つ準備会を参加希望メンバにより設置し,以下の協議と情報交換を行った。
・小委員会の体制
主査,副主査,幹事委員を選出した。幹事団により具体的活動計画を早期に策定する。
・塑性拘束効果を考慮した破壊評価のニーズ整理
当手法のニーズは,中性子照射を受けたPWR原子炉圧力容器のPTS事象及びBWR原子炉容器の水圧試験における破壊裕度の適正評価にあることが,参加委員間で共有化された。また,幹事より,PTS事象の概要紹介があった。
・破壊評価法の最新動向紹介
拘束効果を考慮した脆性,延性,及び遷移温度領域での破壊評価法について,主査,副主査,幹事からISO27306, FITNET, BS7910:2013等の規格,及び延性損傷評価モデルの開発等の研究最新動向が紹介された。