溶接施工フォーラム : 炭素鋼の熱処理条件について

投稿者 トピック
hask
  • 投稿: 2
炭素鋼の熱処理条件について
初めて投稿させて頂きます。

ご教示願いたいのですが・・

炭素鋼の予熱・直後熱についてですが、板厚が厚くなればなるほど
炭素当量が増える影響で溶接金属が硬化しやすくなると認識しています。

そこで質問なのですが、
予熱・直後熱をこの厚みを超えたら実施しなさい・・というような
板厚の基準などは存在するのでしょうか??

他社さんの施工要領書などを拝見させていただくと、板厚19mm〜
予熱・直後熱が必要であるとか、20mm〜、25mm〜とか様々です。

製作メーカーで決定できるのでしょうか??

以上、ご教示頂ければ幸いです。よろしくお願いします。



samiec
  • 投稿: 188
Re: 炭素鋼の熱処理条件について
haskさん

2つの質問を頂きました。少し長くなりますが回答します。

1.> 板厚の基準などは存在するのでしょうか??
はい、各種CodeやSpec.の中には、予熱温度に対する規定があります。ただし炭素鋼の場合は、たとえば気温が低い場合(0℃以下)は人肌ぬくもり(15℃程度)に予熱しなさいというようなもので、haskさんの懸念する内容とは異なります。ASME VIII のAppendix R に、C量が0.3%を超える場合は、板厚25mmを超えるものは79℃以上の予熱が推奨されています。(厳密な規定ではありません。)
つまり、炭素鋼の予熱温度を規定しているものは存在するが、それほど厳密ではないという風に私は理解しています。

2.> 製作メーカーで決定できるのでしょうか??
これは非常に重要な質問です。答えはYESです。もっと正確に言うなら、各溶接施工における予熱温度(予熱をするしないも含む)はその溶接を行う製作メーカーが、その経験や試験結果に基づき決めなければいけないのです。

多くの仕事の現場では、法規や客先スペックで予熱の規定があるからやる、何も書いてないからやらない、というケースが見受けられます。もっとも、法律で予熱や直後熱の規定があれば、それに従わなければいけないことは言うまでもありません。
ただ、一般的な規格や基準で予熱温度が決まっている場合でも、それぞれの製作メーカーが作る溶接工作物の種類、鋼種、板厚、溶接方法、溶接条件などによって、当然、予熱条件も異なります。

haskさんは、「板厚が厚くなればなるほど炭素当量が増える影響で溶接金属が硬化しやすくなると認識しています」と言われていますが、硬化を予防するためだけに予熱を行うわけではありませんね。
炭素鋼の予熱の第一の目的は低温割れの防止です。したがって、製品と同じ材料、板厚の模型を使って溶接をして、低温割れが起きるか起きないかを確認して予熱温度を決めてもいいのです。
一口に炭素鋼と言っても、焼きなまし材もあればQT鋼やTMCP鋼もあり、その種類によって炭素当量も変わります。
客先スペックの規定まで予熱する必要がない(予熱しないほうがよい)ケースもありますし、客先スペック以上の予熱を行った方がいいケースもあります。直後熱の要否についても、全く同じことが言えます。

それらの見極めは、製作メーカーにいる我々溶接エンジニアが責任を持って決めなくては行けません。世の中の多くのメーカーでは、その責任を規格や客先の規定に転嫁しているだけです。
haskさんのような正しい問題意識を持って仕事をしてくれる技術者が増えることを期待しています。
hask
  • 投稿: 2
Re: 炭素鋼の熱処理条件について
samiec様

ご丁寧な回答ありがとうございます。

非常に勉強になりました。引用:

samiecさんは書きました:
haskさん

2つの質問を頂きました。少し長くなりますが回答します。

1.> 板厚の基準などは存在するのでしょうか??
はい、各種CodeやSpec.の中には、予熱温度に対する規定があります。ただし炭素鋼の場合は、たとえば気温が低い場合(0℃以下)は人肌ぬくもり(15℃程度)に予熱しなさいというようなもので、haskさんの懸念する内容とは異なります。ASME VIII のAppendix R に、C量が0.3%を超える場合は、板厚25mmを超えるものは79℃以上の予熱が推奨されています。(厳密な規定ではありません。)
つまり、炭素鋼の予熱温度を規定しているものは存在するが、それほど厳密ではないという風に私は理解しています。

2.> 製作メーカーで決定できるのでしょうか??
これは非常に重要な質問です。答えはYESです。もっと正確に言うなら、各溶接施工における予熱温度(予熱をするしないも含む)はその溶接を行う製作メーカーが、その経験や試験結果に基づき決めなければいけないのです。

多くの仕事の現場では、法規や客先スペックで予熱の規定があるからやる、何も書いてないからやらない、というケースが見受けられます。もっとも、法律で予熱や直後熱の規定があれば、それに従わなければいけないことは言うまでもありません。
ただ、一般的な規格や基準で予熱温度が決まっている場合でも、それぞれの製作メーカーが作る溶接工作物の種類、鋼種、板厚、溶接方法、溶接条件などによって、当然、予熱条件も異なります。

haskさんは、「板厚が厚くなればなるほど炭素当量が増える影響で溶接金属が硬化しやすくなると認識しています」と言われていますが、硬化を予防するためだけに予熱を行うわけではありませんね。
炭素鋼の予熱の第一の目的は低温割れの防止です。したがって、製品と同じ材料、板厚の模型を使って溶接をして、低温割れが起きるか起きないかを確認して予熱温度を決めてもいいのです。
一口に炭素鋼と言っても、焼きなまし材もあればQT鋼やTMCP鋼もあり、その種類によって炭素当量も変わります。
客先スペックの規定まで予熱する必要がない(予熱しないほうがよい)ケースもありますし、客先スペック以上の予熱を行った方がいいケースもあります。直後熱の要否についても、全く同じことが言えます。

それらの見極めは、製作メーカーにいる我々溶接エンジニアが責任を持って決めなくては行けません。世の中の多くのメーカーでは、その責任を規格や客先の規定に転嫁しているだけです。
haskさんのような正しい問題意識を持って仕事をしてくれる技術者が増えることを期待しています。



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管理人からひとこと..
回答しても、何の反応がなかったらちょっとサミシイと思うのです。
回答で助けてもらったら、お礼の言葉を一言書いていただけると、そこにコミュニケーションが生まれ、このフォーラムも活性化していくと思っています。
皆さん、どうかご協力を。