溶接施工フォーラム : Heat Input の管理

投稿者 トピック
Fuka
  • 投稿: 21
Heat Input の管理
お世話になっています。またひとつ初歩的なことを教えてください。
衝撃試験を行う材料のWPSをつくるに際し溶接入熱をどのように管理するのか全然わかりません。
QW-409.1の正しい理解のしかた。また
皆様がどのように管理されているのかアドバイスをいただけないでしょうか。

1)
これから施工法試験で確認する場合、入熱量はあらかじめ規定することができるようなものでしょうか。
2)
機械試験で十分以上の値が得られたら、その規定を少し緩めるなど可能でしょうか。
それともPQRの値を最大とするしかないのでしょうか。
3)
施工用のWPSでの規定のしかたは、「最大値を決めておき、施工時の実測(計算値)が1パスでもそれを超えたら不適合」というようなことでしょうか。

よろしくおねがいします。

samiec
  • 投稿: 188
Re: Heat Input の管理
Fukaさん

よい質問をありがとうございます。この質問は決して初歩的なものではなく、WPS&PQRを作成する上での極めて重要なポイントです。正直なところ、世の中の多くの溶接エンジニアが、Fukaさんのような問題意識を持たず、WPS&PQRを作成しているのが現実です。

質問の3点のうち、1)はPQRを作成するときの問題ですので、別のスレッドで後ほど回答します。まずは、WPSの規定と製品溶接の施工管理の問題から整理します。

>2)機械試験で十分以上の値が得られたら、その規定を少し緩めるなど可能でしょうか。

これは基本的にありえません。特に、衝撃試験の場合は、温度が少し違うだけで衝撃値に急激な変化が現れます。少し緩めるといっても実際にどのくらい緩めていいのか、定量的に判断できませんね。溶接入熱との関連も然りです。

>3)施工用のWPSでの規定のしかたは、「最大値を決めておき、施工時の実測(計算値)が1パスでもそれを超えたら不適合」というようなことでしょうか。

はい、そのように理解してください。ただし、製品溶接の1パス、1パスをすべて入熱計算するわけにはいきませんね。特に手溶接の場合など、適切な溶接電流、電圧を定めておき、最少の溶接速度をPQRの入熱の最大値から求めておけば、基本的には速度管理を目安にして、製品の施工管理を行っているのが現状です。
製品の溶接条件は、否が応でも実際には幅が出ます。そのためにも、PQRで確認した最大入熱以下でWPSを規定しておけば、現実にはPQRの衝撃値そのものが規定値に対して余裕があるので、実際の製品は大丈夫と考えることもできます。

もしも、客先の要求などで製品の入熱を測定するときは、きちんとWPSの範囲内、すなわちPQRの最大入熱以下で管理されていることを証明してください。
samiec
  • 投稿: 188
Re: Heat Input の管理
Fukaさん

前のスレッドの回答が、ちょっと厳しいと感じたかもしれませんが、次に 1)の質問を考えてみます。

>1)これから施工法試験で確認する場合、入熱量はあらかじめ規定することができるようなものでしょうか。

通常、製品溶接に対する入熱制限は客先仕様書や規格などで規定されます。あるいは、施工業者が自らの基準で設定している場合もあります。
ですから、やみくもに施工法試験を行ってその時の最大入熱で製品(WPS)を管理するというほうが現実的ではないと思います。

まったく基準がない場合は、事前に入熱を変えていくつか試験してみて、その結果この程度の入熱なら大丈夫という確信をもって社内基準とすることはあり得ます。つまり、本番のPQRの前に実験を行って適正値を確認しておきます。

要するに、PQRテストを行うときは、基本的に事前にその目安が与えられている場合が圧倒的に多いと思います。
その時、実際に施工法試験の試験材では、WPSで規定しようとする入熱の少し上を狙って、つまりできるだけ高めの入熱で、試験材を作成します。客先要求があるときなども同じです。

その結果、PQRが合格すれば、WPSは規定通りに(つまりPQRより多少低く)上限を設定することができます。もし、PQRの入熱が規定値より低くなってしまえば、WPSの入熱制限もそれに伴って下げなければなりませんね。

衝撃試験が要求されるWPSを作成する場合は、規定値より少し高めの入熱で(余裕を見て)PQRを作成することがポイントです。
Fukaさんは、製品の衝撃性能の余裕度の心配をされていますが、それはWPSではなく、PQRを作成するときに考慮してみてください。

わかりにくいかもしれませんが、これでよろしいでしょうか。
Fuka
  • 投稿: 21
Re: Heat Input の管理
samiec様
さっそく返信をいただきながら日をまたいでしまいました。
おかげさまにて、もやもやが解消しました。

吸収エネルギーの規定しかない場合になりますが
1)
事前テストや経験値などで安全と分かっている値を元に、施工法試験用のWPSでは高めの入熱量を規定する。
2)
その値で衝撃試験が合格であったら、製品用のWPSにおいては、入熱量は若干低めに規定しておくのがベター。
そうすれば日常の施工管理において万一入熱量がオーバーしても製品を廃棄するようなリスクを避けられる可能性が高い。
3)
入熱量の合否基準はPQRの入熱量最大値
4)
PQRから計算で最低の溶接速度を求め、速度を目安に施工管理する。


ありがとうございました。


samiec
  • 投稿: 188
Re: Heat Input の管理
Fukaさん

いつも、私の冗長な説明を端的に整理していただき、読者の皆様には大変わかりやすくなり、感謝します。

4)に関しては、自動溶接などでは各種溶接条件を事前に設定できますので、とくに「溶接速度」だけにこだわらないでください。
一方、手溶接では速度イコール溶着量ですので、例えばSMAWでは棒1本の伸び(ビード長さ)などで管理することもできます。

また、いつもの老婆心で余計なことを書きますが、厚肉多パスのPQRを作る場合、入熱の最も大きなパスからシャルピー試験片を採取するのが理想ですが、規格の要求等で必ずしもそうでないときがあります。
本来入熱規定をするのであればこれはおかしいことですので、シャルピー試験片を採取するときは、規格の要求する位置だけでなく、自主的に一番入熱の高いパスを含むように試験片を採取するような工夫がほしいです。

これは、あくまで溶接エンジニアが自分で決めることですが、ここまで考慮していれば上級クラスのPQRということが言えます。

ご理解いただければ幸いです。



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