検査(外観検査/非破壊検査)フォーラム : フェライト量の測定方法について

投稿者 トピック
Fs1019
  • 投稿: 15
フェライト量の測定方法について
オーステナイト系ステンレス(316L)のティグ棒のフェライト量(FN)の測定を要求されています。
フェライト量を測るためだけに突合せ溶接のテストピースを作成するのはもったいないので、プレートか何かに溶着させて測定しようと考えているのですが、母材との希釈で正しい結果が出るか心配です。
フェライト量測定の一般的な方法や測定規格等、ご存知の方がいたらご教示頂けないでしょうか。測定器はフェライトスコープを使用予定です。
宜しくお願い致します。
samiec
  • 投稿: 188
Re: フェライト量の測定方法について
Fs1019さん

なぜ、316Lティグ棒のFN測定が客先から要求されているのか、そこが一番興味のあるところですが、そこはさておき・・・。

正確には「316Lティグ棒の溶着金属のFN測定を要求されている」ということでよろしいですね。
通常は、そういった客先要求に対しては、次の2つの方法で対応します。まずその前に、JIS Z3119 という規格があることをご確認ください。

1. 溶接材料のミルシートにFNを記載する
これは、溶接材料を購入するときに溶材メーカーに依頼することで対応してくれます。ただし、現状では多くの溶材メーカーはティグ棒の線材の化学成分結果を用いて、JIS Z3119に規定されている3つの組織図(シェフラー、ディロング、WRC)の中から選んだ組織図を使ってFNを算出し、その結果をミルシートに記載しています。
つまり、厳密に言えば、溶着金属のFNではないのですが、ティグ棒は溶着金属の成分が元の線材の化学成分やフェライト量も変わらないという前提で、このように運用されていることが多いです。(ただし、この場合は一般的にFNは高めに算出されるようです。)

2. ティグ棒を溶かしてできた溶着金属からFNを測定する
これは、溶材メーカーでもFs1019さんのようなファブリケーターでも、実際にティグ棒を溶かし(溶接するという意味です)てできた溶接金属で測定します。
JIS Z3119にテストピースの規定がありますが、これは手溶接棒を想定したもので、ティグ棒の場合は、ビードオンプレートのものを何層か盛り上げていき、基本的に母材の希釈がないと判断される厚さのところをフェライトスコープで測定します。

Fs1019さんが懸念されているように、母材の希釈がないことを前提にフェライト量を議論しているのですが、さて、それでは「正しい結果」とは何なのでしょうか。

私の最初の疑問の「なぜFN測定が必要か」というのは、そこに係ります。もともと、ステンレス鋼用溶接材料の溶接金属にフェライトが含まれているのは高温割れ防止が目的です。
溶接した結果、PTで検査して割れていなければそれでフェライトを規定した基本的な目的は果たせます。
さらに、客先は何のためにFs1019さんの会社にフェライト量の測定を要求するのでしょうか。製品の溶接金属のフェライト量を気にしているのなら、母材の希釈はあってもいいはずですね。何が「正しい結果」なのか、改めて考えてみてください。

これは、我々溶接エンジニアにとって実は基本的な問題提起なのです。よいご質問をありがとうございました。

ちなみに、現在JIS Z3119は鋭意改定作業中です。
Fs1019
  • 投稿: 15
Re: フェライト量の測定方法について
samiec様

JIS Z3119は確認できていませんでした。ティグ棒の場合の一般的なFN測定方法もご教示頂きありがとうございます。

実際にはFN測定を直接要求されているわけではなく、溶接棒のフェライト量に上限値と下限値が設けられており、使用する溶接棒がそれに適合しているか確認をするように、というような要求です。
低温で使用する機器のため、高温割れの他に低温での靱性の低下も懸念しこのような要求をしてきていると考えています。ただしsamiec様の仰る通り、靱性低下を気にするにしても一番重要なのは製品の溶接金属のフェライト量のはずですので、母材の希釈の影響については考え直してみます。

1つ目の方法の、組織図から得たFNをミルシートに記載してもらうことで解決する話かもしれませんので、先ずは溶材メーカーと客先に相談してみたいと思います。

ありがとうございました。
samiec
  • 投稿: 188
Re: フェライト量の測定方法について
Fs1019さん

ご質問の状況が解りました。

まず、極低温用の用途ということで、フェライトの規定のある溶接材料を選ぶという背景はよくわかります。

先の回答に書いたように、オーステナイト系ステンレス鋼用溶接材料には、高温割れ防止のために出来上がった溶接金属中に数%(例えば3〜10%)のフェライト相が含まれるような成分設計がされています。
しかし、逆にフェライトが多いと低温靭性が下がりますので、極低温用の材料には、例えば2〜8%のようにフェライトを低めに抑えるような成分設計がされているものがあります。つまり、極低温用の銘柄の溶材が実際に製造されています。
したがって、そういった極低温用の銘柄を選べば、適切なフェライト量とシャルピー衝撃試験の結果を示したミルシートで溶材を納入してくれます。
つまり、先の回答の最初の対応策が可能です。

ただし、ティグ棒の場合はもともと靭性が高いので、特にフェライトを制限しなくても-196℃でも高い衝撃値を示します。
フェライト量が客先の要求に合わなくても、シャルピー値が満足していれば、そのティグ棒も使用できるように客先を説得することも可能かと思います。

客先のエンジニアがプロフェッショナルな方であれば、十分に理解していただけるのですが・・・。
Fs1019
  • 投稿: 15
Re: フェライト量の測定方法について
samiec様

フェライト既定の背景及び具体的なアドバイスをありがとうございます。アドバイス頂いたことを踏まえ、溶接材料メーカーと話してみたいと思います。
普段より客先の要求答えることだけを重視してしまい、要求の背景を理解できていないことが多いため、このようなアドバイスは非常に勉強になり助かります。

ありがとうございました。



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