検査(外観検査/非破壊検査)フォーラム : 初層溶接後のPTについて

投稿者 トピック
tomizawa
  • 投稿: 17
初層溶接後のPTについて
溶接の検査で良く初層PT検査・最終層PT検査が実施されますが、
溶接作業的には、あまりよくないと感じます(熱を掛けて冷まして・・・・)
特に合金鋼などは。
なぜ初層PT検査が必要かご存知の方いらっしゃいましたら、教えて頂きたい。

以下は、私の勝手な解釈ですが、
初層PT検査を実施することにより、溶接施工という特殊工程の
健全性を確認しましたという管理側の考えではなかろうかと
感じています。
kohbay
  • 投稿: 9
Re: 初層溶接後のPTについて
I agree with you.
Kohbay
samiec
  • 投稿: 188
Re: 初層溶接後のPTについて
tomizawaさん

これはとてもよい質問ですので、私でわかる限りお答えしたいと思います。
溶接の世界では、このように間違った常識が独り歩きをしてしまっているケースがよくあります。客先の仕様書などに「初層PT」の要求をよく見かけますよね。

ただし、初層PTが必要なケースもありますので、この際、きちんと整理しておきたいです。

まず、ご指摘の低合金鋼のように、低温割れが懸念されるような材料では、ルートパスが終わってからわざわざ常温にまで冷やしPTを行うのは明らかに間違いです。一般に、フェライト系の材料では低温割れを心配すべきです。特に、初層はビード断面積が小さく、継手の拘束応力や溶接後の残留応力などの影響で、低温割れのリスクが高いです。ご存じのように、低温割れは溶接直後ではなく、溶接部が常温近くまで冷却されてから発生します。したがって、初層ビードが冷える前に2層目を施工し低温割れを防止すべきです。一般に2層目のことをHot Passという呼び方は、この初層が熱いうちに施工するという意味から来ています。
したがって、初層をPTするためにわざわざ常温まで温度が下がるのを待つということは、低温割れの発生を待っているようなものなのです。

一方、オーステナイト系ステンレス鋼やニッケル合金などの、いわゆるオーステナイト系の材料は、低温割れではなく高温割れを心配すべきです。高温割れは、それこそ溶接金属が凝固した時にはすでに発生しているわけですから、この割れを確認するためには、常温まで冷やしてPTを行うことが有効なわけです。低温割れと同様に、高温割れも継手の拘束力が大きいルートパスで発生しやすいです。
ルートパスの割れを知らずに、2層目以降仕上げまで溶接しても、たとえばRT検査でも高温割れを確実に検出することはできません。まして、オーステナイト系の材料は一般にUTはうまく使えません。
もうひとつ、オーステナイト系の材料を溶接するときは、高温割れを防止するためにパス間温度を低めに管理する必要があります。初層後に常温まで冷やしてPTを行うことは、このパス間温度を確実に下げるための最も確実な方法でもあります。

したがって、一口にまとめてしまっては多少弊害があるかもしれませんが、基本的には「初層溶接後にPTを行うのはオーステナイト系材料に限り、フェライト系の材料では、むしろ初層溶接後のPTは行うべきではない」というのが、溶接エンジニア(専門家)の一致した見解として通っています。

これでよろしいでしょうか。
tomizawa
  • 投稿: 17
Re: 初層溶接後のPTについて
大変わかりやすいご説明ありがとうございます。
客先仕様の要求の見直しを!
といったところですね。



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回答しても、何の反応がなかったらちょっとサミシイと思うのです。
回答で助けてもらったら、お礼の言葉を一言書いていただけると、そこにコミュニケーションが生まれ、このフォーラムも活性化していくと思っています。
皆さん、どうかご協力を。